国際バカロレア教育シンポジウムに参加して

2019.11.05

IB研究コースに入学し3年目となる。勤務校である私立高校にてIB認定の可能性を探りつつ、IBの教育手法から自身の授業実践の改善を図ることを目的とし研究を進めている。今回の国際バカロレア教育シンポジウムでは「IB生のコンピテンシーとキャリアについて」と題して、IBコースで学んだ生徒たちが実際どのような力を身につけ、卒業後のキャリアを歩んでいるか、という非常に興味深い内容であった。特にIB認定校2校の先生方の実践発表では、認定に至るまでのプロセス、コア科目の実践例やIB生自身が実感している学びの成果など、文献等では得られない多くの学びがあった。
沖縄尚学高等学校では「強くて優しい文武両道のグローバル教養人の育成」を掲げ、2015年から日本語DP認定校としてスタートしており、着実にIB生徒数、DP取得率ともに増やしながら今年4期生の受験を控えているという。IB生の入学前のバックグラウンドは付属中出身、公立中出身、インター出身と様々だが、半数近くが海外進学を志望している。IB生自身が得られたコンピテンシーに関するアンケートでも、「批判的思考能力」、「知識を構築する術」、「コミュニケーション力」とIBDPのコア科目(TOK、CAS)での学びの効果がまさに活きている。IB導入校へのアドバイスとして、IB教員の各教科最低2名の確保やIBの教育原理(ATT)に基づいた指導計画の重要性、校内での提出物締切厳守などもとても有益であった。また、IB生の日本の大学入試における要望からは、今後のIB認定数の拡大に向けての課題が窺える。
東京学芸大附属国際中等教育学校では、IB生が(教員共々)プログラムを通じて養った力が「こじつけ力(=結びつける・関連付ける力)」という、非常に印象的な内容であった。「ビジョンと目標を共有する」をキーワードとし、「実際」「実行」を意識し、「何かとこじつける、結びつける」ことを学ぶという。これをIB生の特徴として、「挑戦することを恐れない、そして行動する」、「考えることが好き、議論好き」とともに挙げている。そのような生徒が育つ背景として、授業の中で「失敗」「間違い」「質問」が歓迎されること、「どうして?」と繰り返し問われること、他教科の学びでも、「概念」というレンズを変えて色々な物の見方に慣れること、などがある。さらに卒業生の多くが、起業や社会的貢献への関心が強く、それを実行しているという。
このように、生徒が身につけている力の多くはまさにIB教育ならではもの、と言うべきであろう。しかしながら、高等学校では2022年度から施行される新学習指導要領においても掲げられる新たな学力観のもと、その親和性からIB教育への理解、またその要素を取り入れた教育実践の拡大が期待されている。自らの研究活動がその一助となるよう励みたい。

教育学研究科IB研究コースU.M.