山口先生Vol.2:断捨離の難しさ

2016.06.28

転居の際に最後まで捨てることのできなかった「物」、それは「ぬいぐるみ」です。今回捨てられなかった「ぬいぐるみ」のなかで最も古いのは、購入してからすでに20年近い年月が経過しています。汚れが目立つばかりか、ところどころ糸がほつれ、中の綿がぐじゃぐじゃになってしまい、もはや「ぬいぐるみ」とは呼べない「物」もいくつか含まれています。部屋に飾るにはとうてい無理のある「物」、人にはけっして見せられないような状態の「物」の方が多いかもしれません。それゆえに、新居にもってきてはみたものの、結局のところ、大半はごみ袋に入れたまま押し入れのすみに置かれている状態です。
地域によって多少違うと思いますが、私の以前住んでいた市では、50㎝未満の「ぬいぐるみ」は燃えるごみ、50㎝以上の「ぬいぐるみ」は粗大ごみに分類されていました。幸い我が家には50㎝以上のぬいぐるみは1つもありませんでしたが、そのことが逆にあだとなりました。「ぬいぐるみ」が、生ごみやティッシュ、紙くずなど他の燃えるごみに分別される「物」と同じように扱われることに、私はとても耐え難い抵抗感を抱いたのです。それは私だけでなく、愚妻も娘も、そして「ぬいぐるみ」とはもっとも縁のない息子でさえも同じ感覚であったようでした。子どもたちは、懸命に「ぬいぐるみ」の引き取り手を探し、捨てようとする行為に不快感を示しました。子どもたちが何気なく口にした一言―「パパはいつも『物を大事にしなさい!』と言っているよね。」―が、強く胸に響きました。