竹田先生Vol.8:入門期の作文指導④―子どもの日記から―

2016.06.28

平仮名の習得と並行しながら初めて文を書き始める小学校1年生から、ひとまとまりの文章が書けるようになる2年生までの時期は、文章表現力の基礎を培う上で極めて重要な時期であるといえます。そのような入門期における作文指導では、いかに書くことを日常化・継続化させることができるかが鍵を握っているように思います。私はそのための指導の柱として、子どもたちに日記を書かせるようにしていました。
入学してから1年あまりが経とうとしていた3月に、ある女の子が次のような日記を書いてきました。

さかをのぼった

小学校1年 HM子

じてんしゃで 大きなさかを のぼりました。おかあさんは、あるきだったので わたしは
「さきに のぼって いるよ。」
といって さきに さかを のぼりました。さかのとちゅうからだったので あんまりはやく のぼれませんでした。でも わたしは
「うんとこしょ どっこいしょ。」
といいながらのぼりました。そして あとちょっとというところで わたしは
「もう だめ。」
といいながら こいでいました。そして わたしは じめんに足をつけようとしたけどなんだかわからないけど 足はじめんにつかないで そのまま こいでいました。じてん車は 右左 右左 右左とゆれながら のぼっていました。そして さいごに
「よいしょ。」
と わたしがいって のぼっていたら いつのまにか さかの上に いました。そして、わたしは かすれたこえで、
「やったあ。」
といって 下をみました。そして おかあさんに
「ねえ のぼったよ。」
と いったら おかあさんは
「すごいね。」
と いってくれました。だから わたしは うれしくなって まだ さかがあったので、わざと さかのあるほうにいって また さかを のぼりました。

お母さんと買い物にでも出かけたときのことでしょうか。何気ない日常生活の一コマを書いていますが、そこには、入学以来1年間がんばってきた子どもの成長の姿が表現されています。
「わたしは うれしくなって … わざとさかのあるほうにいって また さかをのぼりました。」という最後の一文に、この子の気持ちが凝縮されているように思います。坂を自転車で登り切った時、1年間の自身の成長を実感したのかもしれません。
この日記を読んでいると、子どもたちは学びたい、伸びたいという一途な気持ちを持っているということがよくわかります。どんな子どもでも、成長したい、大きくなりたい、ちゃんとした文章が書けるようになりたいと思っているのです。
子どもの日記を読みながら、教師である限り、このような子どもの気持ちを摘み取ることのないように細心の注意を持って子どもたち一人一人の書く力をしっかり豊かに伸ばしていかなければいけない、という思いをより一層強くしたことを今でも覚えています。