菅野宏隆先生算数科における問題解決型の授業-「授業のねらい、問題、課題、主発問」に着目して-

2020.02.06

現場の授業や大学院での算数科の模擬授業を観ていると、「授業のねらい、問題、課題、主発問」の提示に混乱があることに気付く。授業の始まりに「ねらい」を書いてからといった形式的な指導に問題があるともいえる。課題を明確にしてから、授業を進めることも無いとはいえないが、算数科では問題解決の過程で課題が明確になり、同種の問題をいくつか解決しながら一般化を図って結論を導く。この段階で課題を把握し、課題解決に結び付くといった算数科の学習の特質を指導者が理解できていない。こういった教科の特質を考えずに、形式的な授業研究をしても本筋からそれたものとなってしまう。残念なことに、一律的な指導を受けている一部の現場の教師は、子どもの問題解決力を育て、問題解決したときの楽しさ・達成感を味わわせているとはいえない。子どもに気付かせ、学ばせたい内容を教師が先回りして話している。問題との出合い(場合によっては問題そのものをつくること)から、課題を見いだし、その解決過程を楽しむ算数科の授業に魅力がある。以下、事例を通して上記の内容を具体的に示すことにする。

事例 第3学年「あまりのあるわり算」

本時のねらい

・余りのとらえ方について理解を深める。
「23÷4=5あまり3」の場面で、余りの3をいかに処理するかを考え、余ったケーキも箱に入れることが分かり、「5+1=6」を導くことができるようにする。

問題

「ケーキが23こあります。1箱に4このケーキを入れていきます。全部のケーキを入れるには、箱は何箱あればよいでしょうか。」

立式と既習事項(レディネス)

23÷4と立式し、商が5、あまりが3を求めることができる。
23÷4=5あまり3

主発問(課題設定)に結び付く児童の反応
  •   C1 
    23÷4=5あまり3 商は5だから答えは5箱
  •   C2 
    23÷4=5あまり3 5+1=6 余りの分も箱が必要だから答えは6箱
課題(児童の中に疑問が沸き起こる)

全部のケーキを入れるには、箱は何箱あればよいのだろう?
児童の中に沸き起こった疑問が本授業の課題となり、教師は主発問で問題解決の混乱を整理し、問題解決すべき内容を明確にする。

主発問

「全部のケーキを入れるには、箱は何箱あればよいか」を考えよう。

  •   C3 
    23÷4=5あまり3 5+1=6 余りの分も箱が必要だから答えは6箱になる。(問題解決)

あてはめ問題と練習題の実施

結論

複数の問題解決から、解決の一般化を図り、結論を導く。→課題解決
「題意から商に+1をして解答をしなければならない問題もある。」