堀田先生:ICT活用授業のABCVol.2:ICTの整備と活用には関係あるの?

2011.11.15
堀田 龍也

第1回のコラムでは、平成23年度の文部科学省発表のデータを用いて、我が国の普通教室へのICT環境の整備状況、とりわけ多くの普通教室に大型提示装置がかなりの割合で導入されていることを示しました。また、まだ課題は残るとはいえ、コンピュータ、実物投影機、デジタルカメラなど、教材を映すためのICTの導入が急がれることを示しました。
では、普通教室に導入されたこれらのICT環境は、どの程度活用されているのかについて見ていきましょう。

このコラムでは、最近のデータを用いて、我が国の現在のICT活用の現状について解説していくことにしています。
第2回は、このグラフです。

(グラフ)普通教室へのICTの設置形態×ICTの活用頻度

これは、平成22年度に文部科学省が発表したデータです。
普通教室にICTを整備する際、その教室の専用物として常備しているところもあれば、まだ整備途上であるためにICTを学年等で共有しているところもあります。
このような設置形態の違いが、ICTの活用頻度にどのような影響を及ぼしているかを示しているのがこのグラフです。
「ほぼ毎日」ICTを活用していると回答している教員は、その8割以上が、教室に専用のICTが常備され、さらに接続等が不要(つまり接続しっぱなし)であることがわかります。
また、接続しっぱなしの教室で授業をしている教員は、「週1回以上」にも2割弱いますが、「月1回以上」「活用しない」にはほとんどいません。
これらのことから、教室に専用のICTが常備され、さらに接続等が不要であるというICT環境が、ICT活用を大きく促進していると言えるでしょう。
これに対し、学年等で共有しているICTを教室に運んで使っている学校の教員は、「週1回以上」に5割ほどいますが、「月1回以上」「活用しない」に多く分布しています。現在でも多くの学校が「必要な時に使えばいいのだから、学年に1台程度で…」という整備の仕方をしていますが、実はこれではICTの活用頻度は十分には上がりません。なぜなら、教員にとっては、ICT活用時のICTの操作よりも、ICT活用をするためにICTを運んだり、接続したり、ピントを合わせたり、授業後には片付けをしたりするということが手間なのですから。

黒板がない普通教室はありません。黒板は必要な時にいつでも活用できるものとして、普通教室の授業のインフラになっています。
ICTも同じです。普通教室のICT環境は、黒板と同じように、すべての教室に「常設」されてこそ、その活用が促進されるのです。
これまで、ICT活用が促進されないのは、教員のICTスキルの問題だとされてきました。しかしこのデータは、むしろ整備不十分であったことの方が問題であることを示しているのです。

普通教室へのICTの常設。これは教育委員会の役割です。