堀田先生:ICT活用授業のABCVol.3:ICT活用で何が変わるの?

2011.11.21
堀田 龍也

第2回のコラムでは、普通教室へのICT環境の整備の仕方が、教員によるICT活用の頻度に大きく影響を与えていることを示しました。特に、毎日ICTを活用しているような教員の多くは、教室に専用のICTが常備され、さらに接続等が不要(つまり接続しっぱなし)の教室で授業をしているということがわかりました。

普通教室へのICTの常設が、ICT活用の頻度を決定しています。
では、ICT活用の頻度が高くなることと、教員の意識との間には、何か関係があるのでしょうか。

このコラムでは、最近のデータを用いて、我が国の現在のICT活用の現状について解説していくことにしています。
第3回は、このグラフです。

(グラフ)実物投影機の活用頻度×教員の意識

これは、私たちの研究チームが、独自に調査し、結果を学会発表したデータです。 ここでフォーカスしているICT機器は実物投影機です。なぜなら実物投影機は、どの先生でも簡単に使えるからです。また、実物投影機の操作スキルのための教員研修には、ほとんど時間がかからないことが知られています。
現状では、実物投影機が、教員にとってもっとも現実的なICT機器です。

小学校の教員に対し、「児童に発表させやすくなった」「情報の提示が効率よく行なえるようになった」「教材準備の手間が省けるようになった」「板書とICTによる情報提示の使い分けを考えるようになった」と思っているかどうかを、1(まったく思わない)、2(あまり思わない)、3(少し思う)、4(とても思う)の4件法で尋ね、それぞれを得点換算し平均を求めたのがこのグラフです。平均が高い方が、そう思う傾向にあることになります。
このグラフを見るとわかるように、それぞれの項目の平均は、実物投影機の活用頻度によって違います。どの質問項目に対しても、実物投影機の活用頻度と、教員の意識の平均の高さが、きれいに相関していることがわかります。

このデータだけでは、実物投影機の活用頻度が高い人がこれらの項目にそう思うようになるのか、逆にそう思っている人が実物投影機の活用頻度が高くなるのかについてはわかりません。しかし、実物投影機の活用頻度と、教員の授業中の教授活動に対する意識が関係あることは間違いありません。

ICTは、授業をよりよくするためのインフラに過ぎません。ICTを整備することも、ICTを活用することも、それ自体は目的ではないのです。教員の意識が変化し、授業がよりよくなるかどうかが大切なのです。

(参考文献)
中尾教子、 野中陽一、 高橋純、 堀田龍也(2011)
「教員のICTの活用頻度及びICT活用に関する意識の分析」
日本教育工学会研究報告集 JSET11-4、 pp.81-88