坂野先生:ドイツの教育政策のABCVol.2:ドイツの学力向上策

2011.12.12
坂野 慎二

2001年、ドイツでは国際学力調査であるピサ調査の結果が、先進国の平均を下回るという結果が明らかになりました。その結果を分析する中で、学校制度が社会階層の再生産機能を果たしていることが明らかになったことは、前回述べた通りです。
ピサ調査の分析で明らかになった他の課題は、学力の中位層が少なく、低い層が多いということです。成績の分布は、中位層(真ん中位)が多く、上位層と下位層が少ないのが普通です。ドイツでは上位層は一定数いましたが、下位層が他の国よりも多くいたのです。
データを分析した結果、成績が下位層にある生徒の多くは移民の背景を持つ生徒たちでした。つまり外国人の親を持つ生徒、あるいは外国から移住してきた生徒たちです。彼らは必ずしも知的能力が低いのではなく、ドイツ語が十分に身についていないことが問題であることがわかってきました。
そこで、学校の授業以外でドイツ語を習得する支援策を打ち出しました。1つは放課後に学校で生徒たちの勉強や遊びの面倒をみることです。これを指導するのは教員の場合も、教員以外の場合もあります。2つは基礎学校(小学校)に入学する前にドイツ語の診断を行うことです。ドイツ語の習得が不十分と判定された子どもは、就学前にドイツ語の特別指導を受けるのです。
つまり、近年の教育政策は、支援を必要とする子どもへの対応を重視し、その子に合わせた支援を行う機会を増やしているといえます。