阿久澤先生:特別支援教育のABCVol.1:特別支援教育...難しいですか?

2011.12.05
阿久澤 栄

特別支援教育が制度化されて5年目、教室には指導の難しい子どもたちが年々増加しています。先生たちの「困り感」ばかりが増し、先生たちの悲鳴があちらこちらから聞こえてきます。

この教育の主な対象児である「軽度の発達障害児」の指導は、なぜ難しいのでしょうか。それは、この子どもたちには、先生方が経験を通して培ってきた勘や方法が通用しないからです。先生方がお持ちになっている子どもたちへの指導についての常識が通用しないから、指導が難しいのです。しかし、この子どもたちの障害特性さえわかってしまえば、先生方の「困り感」も、もちろんその子どもの「困り感」もずっと減ってしまいます。このコラムでは、通常の学級を担当する先生方が学級集団の中でも出来るような、この子どもたちへの接し方をまとめてみましょう。

<声かけはどうする?>

授業中に突然席を立つ子どもがいます。多くの先生方のかける言葉は「○○くん、何してるの!!」です。答えは、漫画のようですが「立ってる!」 これでは指導はうまくいきません。先生方がかけた言葉「何してるの!」には、言外の意味があります。この場合だと、「今授業中だから席を立ってはいけません。座っていなさい。」ということです。この子どもたちは、こうした言外の意味は理解しづらいという特性があります。はっきりと「今、授業中だから席を立ってはいけません。」と言ったほうが通じやすいのです。同様に比喩表現やいやみ、皮肉なども通じないことが多いので気をつけましょう。

また、音の選択が悪いことが多く、先生が指示をしても、周りの音に遮断されてしまい、先生の声が聞き取れていない場合があります。さらに、皆に言われたことは、皆に言われたことで自分は関係ないと思い込んでしまっていることも多いのです。指示する場合には、全体に話した後、そばに行き、小声でしかもできるだけ落ち着いた声(低い音)で指示すると通じやすくなります。加えて、一つ一つのことは理解できてもまとめて言われると、今何をしたら良いのかが分からなくなってしまいます。全体にはまとめていっても、この子どもたちには一つひとつ言うか、黒板に簡単に矢印などを使って書き、それを指さしながら指示するとわかりやすくなります。

こんなちょっとしたことで、指示が通じやすくなります。試してみてください。