阿久澤先生:特別支援教育のABCVol.4:ぼく、ホントはさみしいんだ‥!

2012.01.10
阿久澤 栄

<発達障害? いいえ、母子関係が……!>

ある小学校の2年生、男の子。学校からは「発達障害の子がいるので見に来てほしい。そして指導法をアドバイスして。」と頼まれ見に行った子どもです。先生の発問に手を挙げ指してもらえないとすぐにカッとなり、隣の席の子の鉛筆をバキッと折ってしまい、消しゴムを投げてしまいます。同じような場面では奇声も発します。そのうちに一番前の席からハイハイするように後ろのドアから廊下へ出て行ってしまいました。こんなことが毎日続いたら「発達障害」があると思ってしまいますよね。でも、この子どもは廊下に出た後、教室の前の開いていたドアに来て、その桟にぶら下がり、いかにも先生にかまってもらいたいという行動を始めました。先生が無視していると仕方なさそうに教室の前の廊下をうろうろした揚句、教室の後ろのドアから入りハイハイして自席へ。……休み時間になると先生のそばにベターっとくっつくようにしています。
この子どもは「発達障害児」でしょうか?答えは「NO!」です。一言で言ってしまえば、「母子関係の悪い子ども」です。本当は、お母さんに大切にされていると感じたいのにそれが感ぜられずさみしくて……結果として発達障害児と同じような行動をしてしまっているのです。先生をお母さんの代わりとしてかまってほしいし認めてほしいのです。
この2年間で、都内や神奈川県内の小学校や中学校、そして幼稚園から「発達障害の子がいるので見に来てほしい。そして指導法をアドバイスして。」と頼まれ見に言った子どもが200名近くいます。しかし、そのうちの70%以上の子どもたちは「発達障害」ではなく「母子関係の悪い子ども」たちでした。最近は、「親」になりきれない親が増え、いわゆる愛情不足、愛着の薄い子どもたちが増えているのです。
この子どもたちのもつ難しさを根っこから解決するには家族関係の作り直しが必要ですが、教室の中で解決することは可能です。ぼくは、私は先生から大切にされているという感情がもてるような関係を築くことです。そのためには、何よりもスキンシップが大切です。1年生や2年生なら、先生が心をこめて1日2回ほどギュッと抱きしめてあげて下さい。高学年はそういうわけにいきませんから、朝と帰りに心をこめて握手してください。高学年の子どもは、はじめは照れくさくて嫌がり「なんで俺が先生と握手しなきゃいけないいなだよう。」などと悪態をつきますが、3日目くらいになると子どもの方から握手を求めてくるようになります。そうなればしめたもの。10日もすれば見違えるような子どもになっているはずです。
子どもたちは、お母さんや先生から自分は大切にされているという思いがもてて初めて成長できるのです。私はそれを「大切にされ感」と呼んでいますが、そんな関係を是非築いていってほしいなと願っています。