西村先生:生徒指導のABCVol.3:いじめの問題等について

2012.01.30
西村 哲雄

学校生活を営む中で、授業や委員会活動、部活動そして塾など、児童生徒が社会的な営みを行う中で、様々な意見の違いや感情の行き違いなどがあるのが当たり前です。誰でもが、より良く人生を生きていくことを望んでいるわけですが、他者とのかかわりなくしては人間らしい充実した生活は望めません。そのために、児童生徒は、学校という集団生活の中で意識しているいないにかかわらず、自分を高める努力をし、挫折や葛藤を繰り返し成長していきます。そのような状況の中で、いじめの問題が起きます。
平成22(2010)年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(岩手県、宮城県、福島県を除く。平成23年8月4日・文部科学省初等中等教育局児童生徒課)による全国のいじめの認知件数は、国・公・私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の合計で、75,295件となっています。過去5年間のいじめの認知件数の推移を見てみると、平成18年度より124,898件、101,127件、84,648件、72,778件、75,295件と減少傾向にあるものの依然として深刻な状況が続いています。

(参考)
いじめの状況については、昭和60年度から調査が行われてきましたが、平成6年度及び平成18年度の調査から、いじめのとらえ方等について見直しが行われ、平成18年度からは、いじめの「発生件数」を「認知件数」に改め、とらえ方も「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。」から「一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」となり、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断が、表面的・形式的に行われるのではなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行われるようになりました。

平成22(2010)年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(岩手県、宮城県、福島県を除く。平成23年8月4日・文部科学省初等中等教育局児童生徒課)における小学校の「いじめの現在の状況」で「解消しているもの」は81.3%、「一定の解消関係が図られたたが、継続支援中」を含めると96.0%となっています。
また、「いじめの発見のきっかけ」で「学校の教職員等が発見」は54.8%、同様に、「いじめられた児童の相談の状況」で「学級担任に相談」が71.3%となっています。
これらの数値を見てみると、教師がいじめの問題について更に深刻にとらえ、自らの学校、学級における児童生徒理解に努め、研鑽を積み、誰もが安心して豊かに過ごせる学級づくりを目指し、児童生徒一人ひとりに目を向けた取組が必要です。児童生徒一人ひとりが居心地のよい、温かい雰囲気の学級づくりに心掛けることによって、いじめの問題が解消されます。