作間先生:謎解き読みのABCVol.2:作品には謎がある。

2012.01.23
作間 慎一

『お手紙』は、手紙を一度ももらえないと悲しむがま君にかえる君が手紙を書いてあげるという話です。ただ、かたつむり君に配達を頼んだので届くまで4日もかかるのですが、その間二人で幸せに待ち、手紙をもらってがま君はとても喜びます。

『お手紙』をこのように要約すると、これは友だちを思う気持ちや優しさについて書かれた話としか読めません。

ところが、この作品には、子どもたちが「おかしいよ」と言うところがあります。かえるが急いで手紙を書いて家を飛び出したのに、かたつむりに手紙の配達を頼んだことや、かえるががまに手紙を出したことも書いたことも教えてしまったことです。子どもたちは、「教えちゃだめだよ」とか「それじゃ手紙じゃないよ」と言います。

作品を読んでいるとき、このようなおかしなことが書いてあると思ったら、立ち止まって考えますか。それとも、物語はそういうものだから気にしないで読み流しますか。

国語の授業で、子どもたちからこうした疑問が出たら、先生はどうしているのでしょうか。先生自身が読み流しているなら、気にしないでいいよと言いたいでしょう。でも、書かれていることは大事に読まなければとも考えているでしょうから、無視もできません。こういう悩ましい場面は多いのではないでしょうか。

ところで、『お手紙』には、他にも不思議なことがあります。がまは手紙が配達される時間になると悲しくなることです(でも、その時間が過ぎるとお昼寝です)。「親友でうれしい」という手紙の中身を聞いたら、「ありがとう、僕もそうだよ」と答えてよいのに、「とても、いい手紙だ」と答えています。

作品の中に、おかしいとか変だなと違和感を覚えるようなことが書いてあったら、それが謎です。それらは、読者にもう少し時間をかけて読んで考えてみて欲しいと、作品から読者に投げかけられた謎なのです。謎解きしてみたくなりませんか。