澤田先生:理科教育のABCVol.1:小学校の児童は本当に「理科嫌い」なのでしょうか?

2012.04.09
澤田 妙子

「理科嫌い」とか「理科離れ」という言葉が出てきてから久しいですが、本当に小学校の児童は理科が嫌いなのでしょうか。

文部科学省による「小・中教育課程実施状況調査」によると、下図のように他教科と比較した場合、「理科の学習は好き」という割合が74.2%と高く、理科嫌いではなく、むしろ理科の好きな児童が多いといえるのです。しかし、理科の勉強が生活や社会に役立つと考えている児童は57.6%と他教科に比べると低いのです。

また、国立教育政策研究所が小学校5年生を対象に実施した「観察・実験に関する調査」結果では、次の3点が挙げられています。

(1)観察・実験の好きな児童生徒の割合は80%と高い傾向。
(2)提示した事物や事象を把握することはできるが、見通しをもって、自ら観察や実験の方法を考案することに課題。
(3) 観察・実験結果やデーターを読み取ることができるが、観察・実験の結果やデーターを基にして考察し、結論を導き出すことに課題。

教師を対象とした調査では、児童生徒の多様な考えを活かした授業を行っているが79.3%、観察・実験において問題を意識させ、結果の予想を立てさせるなどを重視した授業を行っているが95.4%である。しかし、児童生徒に実験を企画、計画させている授業を行っているかについては40.5%と低い。

これらの調査結果から、児童は理科が好き、観察や実験が好きで喜んで取り組むが、結果を仮説や予想と関連させて考える、すなわち考察することができないという現状が見えてきます。つまり、観察・実験は仮説や予想を検証するためにあるという視点が欠如しているのです。そのため、結果が出たとき「やっぱり思った通りだ」「なるほどそうなのだ」「上手くできているな」等々、実感を伴った理解までいかないのです。

ですから、今、問題を解決することで驚きや感動が生まれるような、実感を伴った理解を図る理科学習が大切であるといわれているのです。また、探求してきた結果と日常生活を結びつけて考える学習が今以上必要といわれています。

<小学校・教科の勉強が好きという割合>
 理科算数国語社会
小5 74.2 61.8 58.5 54.7
小6 64.1 59.2 52.9 56.9
 
<理科の勉強が生活や社会に役立つ割合>
 算数国語社会理科
小5 79.1 75.9 75.9 57.6
小6 79.2 75.5 65.2 50.5