澤田先生:理科教育のABCVol.4:探究活動のスタートとなる教材との出会い

2012.05.01
澤田 妙子

児童が自然の事物・現象とかかわり問題を見いだし、解決したいという思いにあふれ探究する活動は、まぎれもなく主体的な問題解決の活動です。
学習の導入で教材(自然の事物・現象)に出合ったとき、自分が知っている事実とのズレや自分の今までの考え方や見方で解釈すると「おかしいな」と感じるとき、児童は何となく落ち着かず疑問を解決したいという気持ちになってきます。この状況になったとき、児童は調べてみたいと強く思い探究活動に入っていくのです。ですから、授業の最初にどのような教材(自然の事物・現象)に出合うかは、児童が学習を進めていく上でとても重要な意味をもつのです。
ここでは、どのような教材との出会いが児童自ら問題を見いだし、探究活動へと動き出だすのかという視点で、教材としてもつ条件のうち4点について考えてみましょう。
(1)児童のこれまでの経験や見方とズレが生じる教材
今までの自分の知識で解釈できない事実を目の当たりにすると、「おかしいな」「どうしてなのだろう」という思いが強く生じれば生じるほど児童は動き出します。自分が疑問に思った問題を解決したくなるのです。ですから、ズレを生じるような教材の提示が驚きや疑問を生むので問題をとらえやすく、自分から「調べてたい」と主体的な探究活動のスタートになっていくのです。
(2)児童の多様な考を引き出せる教材
教材に出合ったとき、一人一人の児童が多様な見方や考え方ができる教材は、話し合うことによって、多様な友達の見方や考え方を知ることになり、友達と自分との見方や考えとのズレを意識することになります。このズレが問題の所在を明らかにすることになり、自分の予想や仮説を検証するために自分らしく観察・実験の工夫を行い、探究していく原動力となっていくのです。
(3)解決の糸口が見いだせる教材
解決の糸口が見いだせるとは、「これをこうすれば、きっとこうなるのではないか」と、「何を」という目的と「どのように」という方法を児童が考えられるということです。解決の糸口が見いだせる教材とは、児童の先行経験や既習事項で解釈ができそうな事象・現象ということになります。児童が半分は分かるが半分は分からないというような半分かりの状態になるような教材ということもできます。
(4)直接触れることができる対象の教材
児童は具体の世界で生きているので、五感を通して触れることによって、対象がもつ独特の質感をとらえることができます。この質感で感じた驚きや疑問が実感を伴って新たな問題を見いだす手がかりになるのです。