小松先生:学校論のABCVol.2:学校を経営するとは

2012.06.11
小松 郁夫

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」をよんだら』(岩崎夏海著)の人気もあって、学校関係者の中でも、マネジメントへの関心が高まっている。昨年は人気タレント集団AKB48の前田敦子が主演した映画も話題になった。
教育界では、これまで校長などの管理職の行為を「学校運営」と称して、「学校経営」という言葉は意識的に使わなかった。法律用語でも「地方教育行政の組織および運営に関する法律」など、「経営」の用語は意識的に使用されていない。しかし、教職大学院では科目名に学校経営の用語を使用し、ストレートマスターにとっても重要な知識であり、必須の専門教養として位置づけている。それはなぜかを考えてみたい。
確かに、「経営」を「経済的に営む」という意味として限定的にとらえれば、校長には人事権や予算編成権などの経営権限はない。この点は、私が比較研究で調べているイギリスの学校とは基本的に異なる公立学校の管理運営システムだ。
しかし、もし「経営」をある組織や活動等を効率的、効果的に運営することだととらえると、学校や学年、学級、教科という組織には、それぞれに組織目的があるのだから、目的をどのように実現するかの機能や行為は、紛れもなく「経営」であり、なにも管理職だけに求められる役割ではない。現に担任する学級をうまく1年間指導することを、「学級経営」と普通に使っている。「経営」は企業のような組織だけに適用されるものではない。ドラッカーも非営利組織の経営に多くの研究関心を寄せ、著作も多い。
英語の「経営する」=manageを調べてみよう。私がよく使用する「コビルド英英辞典」には、以下のような用例がある。

(1) If you manage an organization, business, or system, or the people who work in it, you are responsible for controlling them.
(2) If you manage to do something, especially something difficult, you succeed in doing it.
(3) If you manage, you succeed in coping with a difficult situation.
つまり、責任を持って組織目的の実現を図ること、うまく(効果的に)ヒト、モノ、カネ、情報、時間などを操作することである。めざす学校づくりは「経営」をしっかり勉強しないとうまくいかない。