谷先生:教えて褒めることを通して自己肯定感のあがる授業をVol.2:マイナス発言が続出するクラスでの授業(その2)
なぜ子ども達は熱中したのでしょうか

2015.06.04

前回の続きです。
私は、子ども達のブイーングに全く構わずに、札を配布しました。たたみかけるように札を並べる指示をします。
さらに「全員起立」と指示しました。数名が立ちません。そこで、にこやかに言いました。
「“全員起立”と言いましたが、お隣の人で立っていない人はいませんか?」
起立するだけのような簡単な指示には、必ず従わせなければいけないのです。それも「叱る」のではなく、ゆとり感のある中で、しかし毅然と言うのです。
「座ってやりたいのに・・・」等々と、ブツブツ言っていた子たちに、若干の緊張が走ったようです。
バラバラと全員が立ちました。立つか立たないかのうちに、また言いました。口調は一貫しておだやかです。
「札を並べ終わったら、座ってやりたい人は座りなさい。」
全員が並べ終わる前に、最初の札を読み始めました。
「えー、もう始まったの〜」と言う子もいますが、かまわず詠みます。
2枚ほど詠んだら「はい、練習終わり、取った札を戻しなさい。」と言いました。ちょうどその頃、すべてのグループが並べ終わったからです。取っていた子たちは「練習だったのかーーー」と言いながら緊張が緩んだようなムードになりました。
結局、五色百人一首をやらせたこの場面は、どうなったでしょうか。
みんな、最後まで一生懸命に百人一首をしたのです。その後は「短歌」の授業をしましたが、それも盛り上がりました。教室の多くの子が熱中した授業になりました。マイナス発言をそのまま受け入れてスタートしましたが、最後はプラスに転化したということです。
なぜ子ども達は熱中したのでしょうか。様々な要因があるかもしれませんが、次のようなことのいくつがが関係しているのではないかと考えています。

  • 第一に子どもたちのネガティブな発言を、決して頭ごなしに否定しなかった点です。無視もしていません。むしろそれを教師が楽しむかのようにゆとりをもって対応しました。
  • 第二に一度発した指示は必ずやらせました。もちろん、ごく簡単な指示です。それも、叱るのではなく、にこやかに確認しながら、淡々とやらせていきました。
  • 第三に、かなり速いテンポで、次々に指示を出していきました。指示を発する判断は瞬時のものです。一つ一つ考えていたらその場では対応できません。
  • 第四に「ほめる」ことです。ちょっとしたことでも褒め続けました。子ども達の感想には「子ども目線な先生だった」「褒めて伸ばすみたいな性格の人だった」と書いていた子もいました。
  • 第五に指示の仕方と発問の質です。明確な指示をし、確認することで全体を巻き込み動かしていくのです。