田原先生Vol.3:家庭内暴力をする子どもへの対応(3)

2015.07.13

子どもの家庭内暴力が精神疾患や発達障害に起因していないと判断される場合は、「対応の基本」に基づき対処します。対応の基本は「暴力の拒否」です。専門家の中には子どもの暴力を受けるように指示することがあります。暴力をふるうことで自責・他責の怒りの気持ちが収まるとする考え方ですが、暴力によりさらに怒りの気持ちが誘発され、事故・事件に発展してしまいかねません。また、「対決」するように指導する専門家もいます。対決とは、「子どもの暴力には暴力で押さえ込む」というものです。しかし、「対決」も子どもの暴力を助長します。保護者の中には、子どもの暴力に耐えられず、病院・施設に入所をさせることもあります。しかし、これらの施設への入所が効果的であるのは、本人が入所に同意したときです。強制的に入所させましても、強制されたという恨み心から、入所中は「良い子」であっても、退所後にさらに暴力をふるうことが多くあります。
それでは対応の基本である「暴力の拒否」として、具体的にはどのような対応をすればいいのでしょうか。家庭内暴力は「重症度」により対応の方法が異なってきます。重症度は、暴力の種類・程度ではなく、暴力の続いている期間、すなわち比較的初期の家庭内暴力であるのか、あるいは何年にもわたっている慢性的家庭内暴力であるかということです。比較的初期の場合には、本人の話を傾聴することが大切です。本人は暴力をふるうことに対してあまり罪悪感がなく、むしろ自分は被害者だと思っている傾向があります。そのような場合、過去に受けた恨みつらみなど本人の辛い過去に耳を傾け、共感するようにしてください。その際、子どもの話が間違っていても傾聴します。ただし、傾聴と「言いなり」は違います。傾聴はしても、子どもの言いなりになることは避けるようにご指示ください。
長期にわたっている場合には、「他者の介入」と「暴力の回避」をします。他者の介入とは、暴力が始まったら、家族以外の第三者を家庭に入れることです。代表的第三者は警察です。警察など第三者が介入することで、ほとんどの暴力は収まります。警察はよほどのことがない限り補導・逮捕しませんので、通報をためらわないようにご指示ください。暴力の回避とは、暴力が始まったら自宅から避難することです。非難のタイミングは暴力が始まってからです。事前の避難は避けるようにしてください。「見捨てられた」と認識し、暴力がますます激しくなってしまうことがあります。子どもが落ち着いた頃を見計らって自宅に戻るようにします。戻っても暴力をふるうようであれば、再度、自宅を出ます。子どもが家から出させないようにすることがありますが、振り払ってでも出ます。暴力が収まらず、自宅に戻ることが困難であれば、ホテルや親戚、知人などの家に泊まるようにします。長期に及ぶ場合には、アパートを検討する必要も出てきます。いずれにしても帰宅した際は、「あなたのことが心配だけど、暴力があるので家に戻れなかった」という意思を伝え、帰宅後は何事もなかったかのようにふるまいます。これら一連の行為を繰り返しても暴力が収まらず、どうしても一緒に暮らせないと判断しましたら、別居を検討してください。