田原先生Vol.4:潔癖症(不潔恐怖)の子への対応

2015.07.16

汚いと思うものに触ったり、見たりすると、バイ菌に感染するのではないかという不安に襲われ、「何十回も手を洗う」「何度も掃除をする」といった行動を繰り返してしまう子どもがいます。このような子どもを一般に潔癖症(不潔恐怖症)といいます。
潔癖症の子どもの強迫症状には、以下に示す特徴があります。

  1. 強迫行為を繰り返す際、本人にしか分からない「厳格なルール」がある
  2. 強迫行為を終えるタイミング・程度がわからない
  3. 汚染が次々に広がっていくという感覚を持つようになる
  4. 不潔恐怖の子どもの部屋がきれいとは限らない

対応としましては、「汚れ・汚染をそんなに気にする必要はない」と言いたくなりますが、まずは子どもの話を傾聴し、子どもの辛さに共感するようにしてください。子どもにも自分の強迫観念・強迫行動がバカげたことであることはわかっています。それでも強迫行動をしてしまう子どもの心情を理解するようにしてください。
その上で、児童精神科やスクールカウンセラーに相談するようにご提案ください。一般に潔癖症を含む強迫性障害の対応としては、認知行動療法と薬物療法などが用いられます。認知行動療法のなかでも曝露反応妨害法が有効であるとされています。「曝露」とは、これまで恐れたり避けたりしていた状況に敢えて向き合い、恐れていたような悪いことが起きないと学習することです。たとえば、不潔だと感じている吊革に敢えて触ります。「反応妨害」とは、これまで不安や不快感を減らすために行ってきた強迫行為をできるだけガマンすることにより、不安や苦痛が次第に減っていくことを体験することです。たとえば、不潔だと感じている吊革に敢えて触ったあと、強迫行為としての手洗いをできるだけ行わないようにします。この2つを組み合わせたものが曝露反応妨害法です。
また、薬物療法としましては抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)の中のフルボキサミンが、1994年以降、多くの国で承認されています。強迫行為をしたいという衝動が和らぎますので、認知行動療法と併用すると効果的です。