佐藤先生Vol.3:研究生活と教員生活を振り返って 第3回

2015.11.10

大学院の博士課程3年のときに、母校津田塾大学の恩師が、「玉川大学で講師を募集しているので受けてみては?推薦状を書くから。教育理念のしっかりした大学なので、あなたに合うと思う」、と声をかけてくださいました。研究も楽しくはありましたが、教員になりたいという希望が募っている頃だったので、とても嬉しく思いました。数人の候補者がいたようですが、恩師が良い推薦状を書いてくださり、また、玉川大学のカラーに私が合っていると、前総長の小原哲郎先生がご判断してくださったのか、玉川大学に職を得ることができました。玉川とのすばらしい出会いでした。
初年度の授業で、生成文法を教えました。ゼミも大勢集まり、張り切って教え始めたのですが、どうも学生たちが興味を持って授業に臨んでいるようには見えません。率直に意見を聞くと、文法には興味が持てない、それよりもどうしたら会話がうまくなるか、どうしたらリスニングがうまくなるか研究したい、という声が返ってきました。その時から、一方的な講義は学生の興味を引かない、学生の動機が高まるように、興味のあるトピックを共に実践的に研究していくことが大切であると、気づきました。
ゼミでは、例えば、「どのように単語を覚えると、英検やTOEFLなどのテスト・スコアが上がるのか」というような具体的なテーマを見つけ、実験や調査をしてデータを集め、実証する研究を行いました。単語を覚える時に日本人の学生は書いて覚える人が多いのですが、CDなどを聞いて覚える、さらに発音して覚える、など、音声を使って覚えたほうが記憶にも残り、読解にも良い影響が出ました。さらに、リーディングの読み方も研究しました。(1)英語の単語の日本語訳をまずは与え、リーディングの最中には何も見ないで読ませる、(2)最初だけではなく、長文を読んでいる最中にも単語の日本語訳を与える、(3)単語の訳は全く与えない、という3つの条件でグループ分けし、大学生を対象に調査したところ、常に日本語訳を与えられた(2)のグループは、(1)、(3)のグループよりも読解において点数が伸びないことが分かりました。単語の知識だけに頼るので、内容を推測して判断するトップダウンの読み方に欠けるからです。学生は、中学校でデータを取ったり、大学生を対象として調査したり、とても生き生きとして調査に臨むようになりました。
私も、そうした結果を次々学会で発表するようになりました。そんな折、NHKの方がたまたま学会の私の発表を聞かれていて、NHKでも研究についてお話をさせていただく機会を得て、それがご縁でラジオの「基礎英語3」の講師をしてほしいというご依頼を受けることになりました。これも、私の英語教員生活における大きな転機になりました。