佐藤先生Vol.4:研究生活と教員生活を振り返って 第4回

2015.11.13

NHKラジオの「基礎英語」という番組は、私も中学生の時に聞いて勉強していたので、講師をしてほしいというご依頼を本当に嬉しく思いました。その後、数年間のお休みの期間を除いて延べ8年間講師をすることになるとは、その時は思ってもいませんでした。「基礎英語」は、ストーリー、文法解説、練習問題、コミュニケーションのヒントなど、すべて講師が中心となって書くので、時間もかかりなかなか大変な作業です。それにラジオの収録が加わるので、放送を間違えないように、かつ興味を持って聞いていただけるようにと、かなり神経を使いました。しかし、今年もまだ続けていられるのは、やはり楽しかったからです。リベラルアーツ学部の同僚でもあったSteve Lia先生とはこの4年間一緒にストーリーを書いていますが、イギリスの文化、習慣、そして私たちの経験なども織り込みながら、本当に楽しく仕事をしています。学生さんと一緒に研究をしたり、話したりするときと同様に、楽しくて、仕事というよりは、趣味のようなものだと思います。私の研究、教員生活を振り返るとき、本当に楽しい仕事ができて恵まれていたと、心から感謝する気持ちでいっぱいになります。皆さんにも、「楽しい!」という気持ちと、「生徒たちと共に学ぶ!」という気持ちを持ち続けていただければ嬉しいです。
2002年には学長にお声をかけていただき、言語情報研究所を立ち上げ、英語のみならず日本語の言葉の獲得研究を始めました。「赤ちゃんラボ」の誕生です。音声を赤ちゃんはいつ、どのようなヒントを用いて聞き分けるようになるのか、母語の日本語と英語の音の獲得には共通点があるのか、保護者の発話特徴は子供の言語発達と関係があるのか、など、多くの調査、研究がこのラボから誕生しました。保育園や幼稚園で言語調査をさせていただき、子どもたちの気持ちもさらに分かるようになりました。2005年には、町田市の教育委員会より委託を受けて、小学校英語カリキュラム、研修、教材の開発が始まりました。言葉の獲得、発達研究の成果を生かした小学校英語プログラムの開発は、その後の私のライフワークになりました。こうした研究、教育成果に注目していただき、2012年からNHKeテレの「えいごであそぼ」の総合指導を依頼され、現在に至っています。
現在、教職大学院にて院生さんたちと調査、研究ができること、そして彼らが教えに行く小学校で授業を見学し、理論が実証できることは、本当に興味深く楽しいものです。小学校教育は、教育の原点であると最近感じています。教職大学院の皆さんには、是非、生涯勉強、研究を続けて欲しいと思います。また、その途中でいろいろな仕事に出会ったときに、迷わず受けて欲しいと思います。きっと、教育という仕事の幅を広げてくれるものと確信するからです。