近藤先生:学校の危機管理Vol.6:生徒が自宅マンションから転落した! 求められる組織行動

2015.12.22

危機管理の要諦

①情報収集と事実把握
③目標設定と戦略
⑤逃げない姿勢と行動

②迅速な組織行動
④判断力と公正性
⑥キーパーソンの存在

 

を視点に、今回は転落事故について考察します。
深夜、保護者から学級担任に、我が子(中2)が自宅マンション6階から転落して病院に搬送されたとの連絡があったと仮定します。どのような事後の対応を読者は予測されるでしょうか。以下、初期段階の要点のみ述べます。
第一に迅速な情報収集と初期対応が求められます。早急に本部を立ち上げて対応しますが、第一報でどれだけ情報を得るかが鍵となります。電話を受けた学級担任の能力と保護者との日頃の関係性が、情報収集や初期対応に大きな影響を与えることになります。「危機管理は全職員の仕事」とした理由もここにあるのです。管理職は担任らがもつ当該生徒に関わる情報を収集整理するとともに、キーパーソンとなり得る職員を病院等に派遣し、情報収集と保護者支援等にあたるほか、発生現場や警察等にも派遣していく必要があります。これらにより生徒の安否や保護者の意向、直前までの会話や友人の動向を把握するほか、事故か、刑事事件か、自殺企図かなどの警察判断を聞く機会が得られことになります。情報収集なしに事後対応は成り立たず、危機管理上の対応目標の設定もできません。
第二に学校のスタンスと見通しを明確にしていく必要があります。継続的な情報収集と事実把握によって、学校の責任範囲を踏まえたスタンスを確定します。その上で見通しをもって対応目標や行動計画を立てて役割を分担し、優先度の高い作業から開始していきます。この対応目標と行動計画は経過の中で逐次集まる情報等によって更新されていく性格を有しています。
第三にこれらの対応を統括する組織が必要ですが、それは本部組織と行動組織に区分できます。本部組織には①判断・指令=校長・副校長、②計画・指導班=集積される情報・事実を整理して本部判断を助けるいわば“参謀”、③記録・広報班=事実・情報の記録や学校対応の経過等を文書化する、④連絡班、⑤庶務班、⑥緊急行動班=不測の事態に備えるいわば“遊軍”などを設ける必要があります。一方の行動組織としては、本部の指令を受けた数チームの「支援・対応班」が関係者支援や関係機関との折衝、情報収集等を担うことになります。こうした組織行動を全職員が一体となって担い、どんな場面でも子どものことを最優先に据えた公正な対応目標と判断に基づいた取組を展開することが、学校の危機管理には求められるのです。(了)