夏期集中講義「脳科学と教育」第4日目

2011.08.19

「脳科学と教育」第4日目は、「脳の学習力」を読んでの報告会でした。
私は、今回、「思春期の脳」について学びました。主な内容は以下のとおりです。

  • 思春期以降、自分自身やまわりの人を強く意識するようになる。
  • 思春期におこる行動は、前頭葉と大きな関わりがある。
  • 青年期では、スタートアップ・プログラムがない分、文化によって伝達される技能のモジュール化が大切である。アイススケート、ピアノ演奏などが正当な活動として、食べたり、話したりという自然な技能と同じように重要な活動として捉える必要がある。

私は、高学年(5、6年生)の担任を受け持つことが多いのですが、それまで、考え方が大人になってくるからこそ、問題行動を起こすのだと考えていました。しかし、今回学んだことで、前頭葉の成長が、思春期に停滞しているという事実を知り、今後、子どもへの対応が変わると感じました。脳の機能としては、まだまだ未熟なのです。自意識や自立心が芽生える中で、未熟な部分があるからこそ、そのことがストレスになって、問題行動を起こしてしまうということがわかりました。「文化によって伝達される技能のモジュール化」を意識し、さまざまな社会体験をさせ、自己有用感をもたせる教育を心掛けていきたいと思います。
それぞれの発表を聞いていて、自分が調べたことと、リンクしていて、みんなが全員の報告に関心をもって聞くことができました。

午後は、工学部のロボット工房を訪問しました。
ロボットは、自閉症ですという前置きの後、実際にロボットを動かしてみせてくださいました。玉川大学のチームは、世界大会で優勝したそうです。日本のロボット技術の高さは知っていましたが、その素晴らしさを目の前に見ることができて、貴重な体験でした。
そこのロボットは、人の顔を見て、年齢を判断します。みんな「やりたい、やりたい。」と、大人気でした。どうして、年齢をあてることができるかというと、2,500人の日本人のデータがインプットされているのだそうです。
それにしても、自分が何歳に見られるのかというのは、万民の関心事。どうしてこんなに関心があるのか、脳科学で検証したいところです。先生の話から、脳の活動において、探索活動とは切っても切れない関係にある、探索活動は、何らかの報酬を得るためのものである、自分が何歳に見られるか、という探索活動は、ある意味、ギャンブル性をもち、報酬を得ようとしているのだ、ということを学びました。

大森隆司先生の講義は、今日が最終日でした。
脳科学では、まだまだわからないこともたくさんあるそうです。毎年、一つの都市で何万件もの研究会が行われるそうです。脳に関する本がたくさん世の中にもたくさん出回っていますが、それだけ、たくさんの方が関心をもち、そして、これからもいろいろなことが研究でわかってくると予想されます。
私はこの4日間の先生の講義の中で一番心に残ったのは、脳の活動に報酬を得るための探索活動に関係があるということです。このことは、教育にとっても同じことが言えます。一つのことを教えるのに、まず、教えたいことをこちらで把握し、子どもがどこに到達させたいかを決めます。これが、目標と評価の設定です。子どもの目標が明確になることによって、脳の働きにおける探索活動が有効になるのだと言えます。そして、その時の報酬が、「できる」「わかる」という喜びになります。「ご褒美をあげる」といって、ご褒美をあげるよりも、結果的に目標に到達し、ご褒美をあげた方が、今後の意欲にもつながっていきます。この脳の働きを知って、今まで私が指導してきたことの正当性を確認することができました。
脳科学への関心と興味を広げてくださった大森先生、4日間ありがとうございました。

(現職院生・T.G.)