夏期集中講義「脳科学と教育」第2日目

2011.08.17

「脳科学と教育」2日目は、脳の発達・発育についての講義です。担当は1日目に引き続き大森隆司先生です。
脳を構成する1,000億あると言われるニューロンは、3ヶ月で全て生まれると言われます。このニューロンは、実際に数えると聞いて驚きました。脳をスライスし、特別な薬品をかけ、その薬に反応したニューロンを電子顕微鏡で数えるそうです。また、成人までずっと増え続けるわけではなく、植物のように、間引きのようなことをしながら、結合を高めていくのだそうです。
実際に、脳の絵を見ながら、それぞれの分野について、詳しく学びました。以下、印象に残ったことを紹介します。

  • 脳で消費される酸素は、体全体の2割である。それだけ、エネルギーを消費する場所である。
  • シナプスは多ければいいというのではなく、結合が適切であることが望ましい。
  • 一定量増えたシナプスは、「刈りこみ」によって適度な数に減らされる。
  • 脳のそれぞれの部分(前頭前野、視角野など)は役割分担し、互いにコミュニケーションをとっている。
  • 手足が動かなくなったときのリハビリは、動かすために脳に無理に働きかける訓練。この時、体に応じて、脳も再結成している。
  • 記憶に関係にあるのは、海馬と呼ばれる部分である。
  • 短期記憶として海馬に記憶されたものは、長期記憶として、大脳皮質にうつっていく。
  • 記憶は、環境に影響される。海の中で記憶した人は海中で、陸上で記憶した人は陸上で、再現成績がよくなる。
  • やる気が出たり失せたりするのに大きく影響するのは、線条体と呼ばれる部分である。ご褒美を与えられるときに、強く活動する。
  • 脳の発達において、臨界期が存在する。
  • 臨界期は、言語、音楽、運動など、それぞれに時期が異なっている。その時期にいい刺激を与えることで、能力向上に効果がある。
  • ゲームを行うことは、ゲーム脳につながるとよく言われるが、問題なのは、ゲームだけをして、他のことをする時間がなくなるのが問題。
  • 読み聞かせは、言語能力を高めることよりも、「喜び」「悲しみ」など、情意面で影響力をもつ。
  • 知識を教え込むことがよくないのは、そうすることで、自分で考えようとしないからである。

この他にも、動物とヒトは、どこまで近いのか、スライドを使ってわかりやすく説明していただきました。
脳科学では、動物とヒトを比較する研究を「比較認知科学」と呼ぶそうです。この科学を含めて、「脳科学」は、研究者が論文を書くための研究であって、実際に教育が必要としていることとは解離していることが、問題の一つだそうです。私たち教育者、および志す者にとって、「脳科学」をどう解釈し、教育にどう生かすか、それぞれが答えを導かなくてはならないということを強く感じました。

(現職院生・T.G.)