笠原先生共生社会の実現とは

2019.09.27

今年(令和元年)の夏、「インクルーシブ教育推進フォーラム」(神奈川県教育委員会主催)に参加する機会を得ました。7月末から8月にかけて、南足柄市、厚木市、寒川町の3地域を会場に開催されたフォーラムは、「みんなでつくる、インクルーシブな学校」をテーマに実践報告とフリーディスカッションの2部構成から成っていました。前半の実践報告では、神奈川県教育委員会が推進する県立高校改革実施計画(Ⅰ期)でインクルーシブ教育実践推進校に指定された3校(県立厚木西高等学校、県立茅ケ崎高等学校、県立足柄高校)の3年間に渡る取組みが保護者、教員、生徒の立場から報告されました。

改めて、このインクルーシブ教育実践推進校について県立高校改革基本計画を確認してみると、インクルーシブ教育の一環として障がいのある生徒に高校教育を受ける機会を拡大するために、適切な入学者選抜、教育課程の弾力的な運用、就労や進学等の支援など、充実した校内体制や教育環境の整備に取組むことが学校のミッションとされています。今回の3校からの報告は、まさにこのパイロット校としての役割を担って試行錯誤しながら取り組んできた(取り組んでいる)内容の一端を知る機会となりました。そして生徒、保護者、教員という立場の違いにも関わらず、報告の中で「高校生活を送りたい」「友達と普通に話がしたい」ということが共通に語られていました。その話を聴きながら、私自身が、かつて特別支援学級を初めて担任した時に強く心に感じたことを思い出しました。それは、担任した生徒は、それぞれに支援を必要とする場面があるだけで、これまで担任してきた生徒と同様、どこにでもいる中学生であり、一緒に学び、一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に楽しむ時間を共にすることで成長している存在であるという当たり前の事に気づかされたことでした。 

後半は、前半の報告に関する質疑・意見を含め、日頃感じている疑問や不都合なこと、感想等をコーディネーターと会場とのフリーディスカッション形式で進められていきました。話題は多岐に渡るもので、例えば、 

〇知的障害のある児童・生徒(小・中学校)の指導について
〇支援を必要とする全ての児童・生徒への多様な教育の場の提供の在り方について
〇地域社会と繋がった教育の在り方について
〇発達段階に応じたキャリア教育、進路指導の充実について
〇就学相談の在り方
〇自らの体験談 等々

デスカッションを通して、様々な課題や困難を抱える児童・生徒の個々の教育的ニーズに適応していく支援と相談の充実は、結果として、全ての児童・生徒の個性と能力を大切していくことに帰着すること、そして課題解決にはまだまだ時間と適切な方策が必要であることを、改めて実感しました。とは言え、3会場での参加者の意見から、社会のニーズが多様化する中にあって、多くの市民の方々がこれからの社会のあり方を自らに問うべく、共生社会とはどのような社会なのか、その実現に自ら何ができるのか、できることからのスタートを真剣に求めていることが伝わってきました。その中で大学生が「多様な存在を知り、一緒に行動して理解することが大切」と積極的に発言する姿に未来を感じることができました。

この夏、3回のフォーラムに参加して、改めて、共生社会に対する正解はなく、共に生活する人たちと一緒に作って行くことで実現するのだという思いを強くしました。