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【量子情報科学研究所】世界初!対象物の状態を能動的に識別する際の量子物理限界を調べるための汎用的かつ効率的な手法を開発~高性能量子レーダーの解析に応用も可能~

2021.05.20

玉川大学量子情報科学研究所(所長:相馬正宜)の中平健治教授と加藤研太郎教授は、量子力学的に許容される最良の方法を用いて対象物の状態を能動的に識別するという問題において、性能限界を調べるための汎用的かつ効率的な手法を世界で初めて確立しました。本成果は、量子技術を用いたセンシングの高感度化や通信の高速化・大容量化への応用が期待され、例えば高性能な量子レーダーを開発するための解析を行う際に活用できます。この成果は、2021年5月18日(日本時間)に米国物理学会(APS)の発行するフィジカル・レビュー・レターズ誌(Physical Review Letters)に掲載されました。

研究の背景

対象物の状態をできる限り正しく識別することは、計測や通信を始めとする様々な分野における基本的な要素として重要です。センシングの高感度化や通信の高速化・大容量化へのニーズに伴い、光や電子などのミクロな物質をより積極的に活用することが必要になってきています。しかし、ミクロな物質を活用するほど量子雑音と呼ばれる雑音が多く含まれるようになり、識別において物理的に避けられない誤りが支配的になることが知られています。そこで、量子雑音の影響を含めた識別性能の物理限界を把握することが求められています。

図1:対象物を能動的に識別する方式の例
  (対象物に光を2回照射する場合)

高い識別性能を得るためには、一般に対象物に光などを照射してその反応を調べるといった能動的な識別が効果的です(能動的な識別の例を図1に示します)。しかしこの方式では、対象物の振る舞いが複雑であるような場合には量子限界性能を求めるために膨大な計算量を必要とするため、限界性能を厳密に求めることは実質的に不可能です。厳密解を求める代わりに限界性能のとり得る範囲を計算するための手法が近年開発されましたが、計算できる問題が限られており精度もあまり高くないという課題がありました。

研究成果

今回、従来とは異なるアプローチに基づいてより汎用的な手法を開発することに成功しました。特に量子雑音の影響を強く受けるような問題では従来法よりも顕著に精度が向上することを、理論解析および数値実験により示しました。図2は従来法との精度を比較した数値実験結果の例です(色が付いた範囲内に限界性能の厳密解が存在し、この範囲が狭いほど精度が高いことを表しています)。提案法は、縺れ合いなどの量子論特有の現象を明示的には利用せず対象物の確率的な振る舞いのみに基づいて計算するため、従来法と比べて直観的に理解しやすいことも特徴的です。

図2:数値実験結果(横軸は対象物に関するパラメータ)

本研究はJSPS科研費JP19K03658の助成を受けたものです。

掲載論文

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