玉川大学脳科学トレーニングコース2021が開催されました

2021.11.24

2021年6月24日(木)から6月25日(金)の2日間にわたり、脳科学研究所において、「玉川大学脳科学トレーニングコース2021」がオンライン開催されました。このトレーニングコースは、脳科学の発展と普及を目的として、脳科学を志す学部学生、大学院生、若手ポスドクを対象に、学際的な研究手法の基礎と応用を実習で学んでもらうことを目的としています。

第10回目となる今回のトレーニングコースでは、5つの実習コースに全国から計44名の応募があり、書類選考を行いましたが、今回はオンラインコースということもあり人数を制限することなく全員の方に参加通知を出し、42名が受講されました。

実習コース

1.霊長類動物の神経生理・行動計測・数理解析技術(受講9名)

担当:鮫島和行、小口峰樹、坂上雅道

2.げっ歯類を用いた脳科学研究法(受講4名)

担当:田中康裕

3.オンライン社会科学実験(受講3名)

担当:高岸治人、後藤 晶(明治大学)

 

4.赤ちゃんと大人のかかわりを読み解く~マルチスケールな視点で~(受講4名)

担当:岩田恵子・佐藤由紀・佐治量哉・梶川祥世

5.MRI研究法オンライン講義(受講22名)

担当:松田哲也、松元健二、田中大貴(日本学術振興会PD)

受講者の皆さん、2日間の実習お疲れさまでした。今回の脳科学トレーニングコースにより、一人でも多くの受講者が将来の脳科学の担い手となって活躍してくれることを心から期待しています。

  • 主催玉川大学脳科学研究所
  • 共催玉川大学大学院脳科学研究科
    玉川大学大学院工学研究科
    玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター

受講者の声

げっ歯類を用いた脳科学研究法

私は現在、沖縄科学技術大学院大学、記憶研究ユニットで、海馬依存性の空間認知の研究をしています。スライス電気生理学や、Neuropixelsについてはあまり詳しくないので、今回の玉川大学脳科学トレーニングコースを通じて、新しい観点から電気生理学的手法を学びたいと思い、参加させて頂きました。

1日目は、げっ歯類を用いた脳科学の総論と、Neuropixels の実験についての説明がありました。げっ歯類を用いた脳科学の総論では、これまでの脳科学の歴史と最新の技術に関する講義を受けました。講義の中では二光子顕微鏡やNeuropixelsなど、論文でよく見かける最先端技術のメリット・デメリットなどのディスカッションもあり、大変勉強になりました。今回はオンライン受講だったのですが、田中先生が実際に実験をして下さり、オンラインでの受講中にデータも取ることができました。

2日目はパッチクランプ法とNeuropixels の解析について教わりました。パッチクランプ法の基礎知識をまず講義により学び、次にオンラインで、研究員の任先生に実際の実験風景を見せて頂きました。前日にとったデータも使って、実際にNeuropixelsでとったデータがどのように解析されるのかについても学びました。Neuropixelsの解析で使うソフトウェアの使い方の解説等も織り交ぜて頂いたので、これからNeuropixelsを使う機会があれば、使い始めることができそうです。

短い間ではありましたが、脳科学のこれまでと現在、そしてパッチクランプメソッドとNeuropixels の使い方、解析まで幅広く学ぶことができ、大変勉強になりました。最後になりましたが、田中康裕先生・任翔壎先生をはじめ、今回の玉川大学脳科学トレーニングコースの開催にあたり、運営や実際にご協力頂いた皆様に感謝申し上げます。

(沖縄科学技術大学院大学 與世山倫可さん)

オンライン社会科学実験

私は、感情の文化差を生み出す社会生態学的要因に注目して、社会の性質と人の心理との関係についての研究を、国際比較調査を用いて行っています。今後、実験研究を計画しており、コロナ禍であることに加え、自身が国際比較を行っているため、オンラインで実験研究を行えることが重要だと考えたため、本コースに応募しました。

1日目は、まず高岸先生に向社会的行動とその神経科学的基盤についてお話しいただきました。さまざまな経済ゲームを用いた研究の実例として、向社会的行動とオキシトシンや扁桃体との関連についての研究等をご説明いただきました。その後、山田先生から、オンライン調査の概要について、クラウドソーシングサイトを用いた調査の長所や短所など、基本的内容をご教授いただきました。

2日目では、後藤先生に実際にOTreeを用いて経済ゲームを作成するという、実習形式の講義を行っていただきました。実際に、自分たちの手を動かして最後通牒ゲームや公共財ゲームを作成し、最後にはサーバー設立の実際のプロセスを見せていただくといった、非常に実践的な講義となりました。充実した教材の用意もあり、今後オンラインで経済ゲーム実験を行っていくための、非常に有益な時間となりました。

全体を通して、オンラインで2日間のコースという昨年とは異なる形式での実施でしたが、だからこそ遠方の北海道から参加でき、今後の自身の研究を行うための非常に有意義な時間となりました。お忙しところ、企画運営・ご指導いただきました諸先生方ならびに大学院生の皆様に、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

(北海道大学 前田友吾さん)

赤ちゃんと大人のかかわりを読み解く~マルチスケールな視点で~

子どもを対象に、攻撃性に関わる認知バイアスについて研究を行っています。本トレーニングコースを受講したのは、子どもの攻撃行動を扱う上で、既に撮影された自然なインタラクション場面から行動を解析する手法を学ぶことが、今後の自分の研究に活きると考えたためです。

1日目は、まず、岩田先生より、子どもを対象とした観察的研究について、実際のエピソードも交えて講義をしていただきました。続いて、佐藤先生より、映像を用いた動作研究の歴史や、非言語情報の分析方法について講義をしていただきました。具体的には、母子が絵本読みをしているビデオを視聴し、そこから得られる様々な情報(発話・動作・視線など)の区分けや、映像分析に用いるELANというソフトの操作方法について詳しく教えていただきました。実際にELANを用いて分析した結果や考察については、次の日(2日目)までに参加者各自で準備し発表することになりました。

2日目の午前は、佐藤先生より、映像分析についてより詳しい解説をいただいた後、梶川先生より、親子の発話をはじめとする音声の分析や、生理指標(心拍など)を用いた研究についてご紹介いただきました。続いて、岩田先生より、子どもの社会的認知を検討する上での二人称的アプローチの重要性を解説していただきました。休憩を挟み、2日目の午後は、1日目に取り組んだELANによる分析結果と考察を発表し、フィードバックをいただきました。最後に、佐治先生より、乳児を対象とした脳科学研究についてご紹介いただきました。

短い期間ではありましたが、コース名通り、まさに「マルチ」な視点から発達研究の最先端に触れることができた2日間でした。コロナ禍という厳しい状況の中でも、このような濃密な学びの場を設けてくださった脳科学研究所の皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

(京都大学 山本 希さん)

MRI研究法オンライン講義

私は、脳科学実験の知識や経験を持たない文系の学部生として、本トレーニングコースに参加しました。自由や平等に関する(社会科学の)「規範理論」を実証的に研究できる分野であることから、私は脳科学に関心を持っています。今回MRI研究法のコースを選択したのは、fMRIを用いた研究論文を理解したいと常々感じていたためです。

1日目は、コース参加者全員の自己紹介の後、松田先生による「MRIの基礎」「fMRI解析法」の2講義が行われました。「MRIの基礎」ではMRIの構造と原理が紹介され、「fMRI解析法」ではfMRI解析が仮説検定型アプローチであるという前提のもと、その具体的な過程や課題デザイン、さらに安静時fMRIについても学びました。

2日目は、午前は松元先生の「脳の形態」、午後には藤井先生「MRSについて」と田中先生「機能的結合とグラフ理論」が実施されました。「脳の形態について」では、脳科学の歴史を踏まえつつ、ヒト脳の発生や解剖的な知見を学びました。午後の2講では、テーマであるMRSやグラフ理論についての概論と、それらを用いた実際の研究について案内がありました。特にグラフ理論に関しては、解析ツールを用いた分析の細かな解説があり、講義でありながら実習のような趣がありました。

2日間を経て、私のfMRI法に対する解像度は高まりました。論文を読むために必要な基礎を学べたことは幸いでした。実習のないオンラインのプログラムでしたが、私はむしろ受講場所や受講人数の制限が無かったことで、参加の機会を得ることができました。困難の多い状況下で素晴らしい機会を用意してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。

(国際基督教大学 佐野海士さん)