【量子情報科学研究所】従来の量子受信機ではレーザー光の最適識別が不可能な場合があることを解明

2018.02.15

玉川大学量子情報科学研究所(所長:相馬正宜)の中平健治教授と加藤研太郎教授、愛知県立大学の臼田毅教授が、従来の量子受信機(逐次型受信機)に対する新たな性能解析法を確立し、本受信機ではレーザー光の識別において必ずしも最適性能を達成できないことを明らかにしました。この成果は、2018年2月14日に米国物理学会(APS)の発行するフィジカル・レビュー誌(Physical Review A)にエディター推薦論文(Editor's Suggestion)として掲載されました。エディター推薦は、特に興味深く重要である成果を厳選して与えられる評価です。

掲載論文

雑誌名
Physical Review A (2018年2月14日)

論文タイトル
Optimal discrimination of optical coherent states cannot always be realized by interfering with coherent light, photon counting, and feedback

著者
Kenji Nakahira*, Kentaro Kato, and Tsuyoshi Sasaki Usuda(*責任著者)

今回の成果

レーザー光を用いた光通信・光計測技術は、インターネットや産業・医療を始めとした様々な分野に活用され、私達の生活基盤を支えています。今後、光通信の大容量化や光センサの高感度化をさらに高いレベルで実現することが要求されており、この要求に応えるためには微弱な光をできるだけ精度良く識別できる受信機が必要になります。

微弱光では量子雑音と呼ばれる雑音が支配的になることが知られており、量子雑音を抑制することが可能な受信機として量子受信機が提案されています。これまでに、逐次的に光検出を行うタイプの量子受信機(逐次型受信機/図1参照)について数多くの研究が行われ、古典的な受信機よりも高い識別性能が得られることが原理実験により確認されてきました。しかし、レーザー光の場合に識別性能が最も高い量子受信機(最適量子受信機)を逐次型受信機で実現できるか否かは長年の未解決問題でした。

今回、逐次型受信機の識別性能を解析するための新しい理論を確立することに成功しました。また、本理論を用いてレーザー光に対する解析を行うことで、逐次型受信機では最適量子受信機を実現できない場合があることを解明しました(図2参照)。これにより、限界性能を実現するためには新しいアプローチによる量子受信機が必要であることが明らかになりました。

レーザー光の高感度識別は基礎物理学における重要な研究課題でもあり、本成果は米国物理学会発行の「Physical Review A」にエディター推薦論文(Editor's Suggestion)として掲載されています。

図1:逐次型受信機の一例
図2:3元位相偏移変調信号に対する解析結果

本研究はJSPS科研費JP17H07115,JP16H04367の助成を受けたものです。