100ギガビット毎秒光通信回線の物理暗号化の実証実験に成功

2014.07.07

クラウド・システムの基盤となるデータセンター間の光通信回線を保護する物理暗号の開発競争が日米で熾烈になっている。玉川大学 量子情報科学研究所(所長:広田 修)の二見史生 准教授は、データセンター間通信への応用に向け、100ギガビット毎秒の信号を物理層で暗号化する実験に成功した。暗号方式は量子エニグマ暗号の第一世代であるY-00型光通信量子暗号を採用した。これは1波長当り10ギガビット毎秒の信号を直接暗号化可能で、10波長を多重して100ギガビット毎秒の信号を、光増幅器を経由して120km伝送した。暗号化による各波長間の干渉はなかった。本成果によって、実用化へ向けた1ギガ~10ギガビット毎秒対応装置の性能の安定化・耐久化の開発への環境整備が確立され、事業化への道筋が示された。

【発表論文】
F. Futami, and O. Hirota, “100 Gbit/s (10 x 10 Gbit/s) Y-00 cipher transmission over 120 km for secure optical fiber communication between data centers”, OECC/ACOFT2014.
F. Futami, and O. Hirota, “Progress in Y-00 physical cipher for Giga bit/sec optical data communications”, SPIE 2014, 招待講演

【今回の成果】
光ファイバ通信網が通信網の基盤として国内や世界の通信を支えている。最近のインターネットは次世代型となるクラウド・システムに移行しつつあり、その基幹となるデータセンター間の高速光通信の安全性は、クラウド・システムのビジネス化を推進する上で最重要課題のひとつである。本研究所は、光通信システムの安全性を保証するための物理暗号の開発に長年取り組んできた。これまで、1ギガビット毎秒や2.5ギガビット毎秒対応装置の開発を実施し、暗号学のShannon限界に近い安全性の実現に成功してきた。今回、10ギガビット毎秒対応機を用いて、データセンター間通信への応用を目指し、100ギガビット毎秒(10ギガビット毎秒信号を10波長多重)、120 kmの暗号通信の実験に成功した。
本成果の詳細は、7月6日からメルボルンで開催の「OECC/ACOFT2014(光エレクトロニクス・光通信国際会議/光ファイバ技術オーストラリア会議)」、及び8月18日からサンディエゴで開催される「SPIE(国際光工学会)」にて発表する。

資料

【背景】

インターネットの発展によって、データセンターを基盤とするクラウド・システムを用いたネットワークが急速に普及し始めている。データセンターは世界中の情報を集約し、かつ処理するため規模は極めて大きくなる。いわゆるビッグデータの総元締めとなる。そのため、情報の管理や安全性の要求はこれまでとは比較にならないレベルの保証が求められるようになる。データセンターの保護には主に2つの手法があり、一つはファイヤーウォール技術による保護、他方はデータセンターの情報をバックアップなどのために他のデータセンターに伝送する通信回線の保護である。これまで、データセンター間の超高速光通信回線を守る技術はレイヤ2(データリンク層)での暗号化が主であった。一方、米国DARPA(国防高等研究計画局)の研究プロジェクト(2000年開始)からレイヤ1(物理層)の暗号、いわゆる物理暗号(Y-00型光通信量子暗号)が開発された。レイヤ1に対する物理暗号は光信号をコピーさせないことによって安全性を担保するので、結果的に全てのレイヤの情報を隠すことになる。その波及効果として、レイヤ特有の情報などの改ざんを阻止する事ができる。今日、光通信回線は高速化し100ギガビット毎秒の光通信回線が実用化されている。そのため、超高速化と安全性の両立を実現する必要がある。この状況に応じるため、100ギガビット毎秒の光通信回線を物理的に暗号化可能かどうか実験検証が求められていた。

【実験検証内容】

今回、光ファイバ通信で一般に使用されている光源を用いた波長分割多重光通信システムにおいて、本学が開発した10ギガ対応のY-00光回線保護暗号通信装置を用いて、10波長の光をそれぞれ10ギガビット毎秒で変調し、合計100ギガビット毎秒のデータを暗号化し、伝送実験を行った。本実験で用いた波長分割多重通信回線は全長120 kmで、40 km毎に光増幅器で中継した。120 km伝送後、波長毎に分岐して、対向暗号装置を用いて2値に復号し、伝送特性を評価した。伝送前後の受信波形(図B,C)に示すように,正規受信者は全ての波長の信号レベルを正しく識別できた。また、伝送後の受信波形は、伝送前の受信波形と同様の品質だった。盗聴者が観測する光信号(図A)では、信号レベルを正しく識別できなかった。また、伝送後の光スペクトル(図D)より、各波長の信号が相互に悪影響を与えていないことが分かった。定量的な評価により、100ギガビット毎秒のデータを高品質に伝送できたことが分かった。なお今回の伝送距離は技術的な伝送限界ではない。

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