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【ミツバチ科学研究センター 研究成果】単独性ハナバチの燃料確保のしくみを解明

2024.09.05

研究の概要

玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センターの原野健一教授と佐々木哲彦教授は、単独性ハナバチであるトゲアシヒメハナバチが花蜜のない花から花粉を集める際に、どのようにして飛翔のためのエネルギー源を確保しているかを明らかにしました。

この成果は、国際学術誌「Apidologie」に2024年8月26日付けでオンライン掲載されました。

研究の背景

どの動物も活動するためにはエネルギーが必要です。動物のエネルギー源となる物質は「燃料」と呼ばれ、ミツバチなどハナバチの仲間は、花蜜を燃料としています。花からエサを集めるためにもエネルギーが必要で、ハチは集めた花蜜の一部を燃料として消化することで採餌を続けます。しかし、花は常に花蜜を提供しているわけではなく、花蜜を分泌せずに花粉のみを提供している時間帯を持つ花もあります。

図1.トゲアシヒメハナバチのメス

ハナバチにとっては、花粉もタンパク源として重要なエサです。花蜜のない花から花粉を集めるとき、ハチはどのようにして活動エネルギーを得ているのでしょうか? ミツバチなど社会をつくって暮らしているハチは、巣にハチミツを貯め込んでおり、採餌蜂はそれを燃料として使うことができます。しかし、ハナバチのほとんどは、社会を作らずメスが1匹だけで子育てをする単独性のハチです。このようなハチは巣にハチミツを貯めることがありません。

本研究は、玉川大学構内に多く生息するトゲアシヒメハナバチ(図1)を用いて、巣に燃料貯蔵がない単独性ハナバチが花蜜のない花から花粉を採集するときに、どのようにして燃料を確保しているか、という問題に取り組みました。

研究の内容

トゲアシヒメハナバチは、花の花蜜分泌が最も盛んになる時間帯に花蜜を集中的に集めて、その一部を翌日まで体内に保持しておき、花蜜がない早朝の花から花粉を集める際の燃料としていることを明らかにしました。

研究成果のポイント

  • トゲアシヒメハナバチが集めた花粉のDNA分析によって、本種の主要な餌植物がカントウタンポポであることを明らかにしました(図2)。
  • カントウタンポポの花蜜分泌は、早朝にはほとんどなく、昼頃に最大を示しました。
  • トゲアシヒメハナバチは早朝から昼まで採餌を行っており、早朝にはほぼ花粉だけを、昼になると花蜜も採餌していました。
  • トゲアシヒメハナバチの出巣時の燃料保持量は、早朝の採餌飛行、とくに1日の最初の飛行時に多いことが判明しました。本種は、巣内に貯蜜を持たないため、早朝に持ち出される燃料は前日に採餌された花蜜だと考えられます(図3、4)。
  • 実験的に出巣時の保持燃料を減少させたハチは、させなかったハチと比べ、花粉を採集せずに帰巣する率が高くなりました。この結果から、前日に採餌した花蜜を燃料として保持しておくことで、花蜜分泌のない早朝の花からも花粉を集めやすくなることが示されました。

本研究は、玉川大学構内に生息する野生のハナバチを利用して、単独性ハナバチの採餌における燃料確保の問題に世界で初めて取り組んだものです。研究対象が近くにいたために、詳しい観察や実験が可能でした。本学に多様な自然が残されていたからこそ行えた研究です。

図2.カントウタンポポから花粉を集めるトゲアシヒメハナバチ
図3.トゲアシヒメハナバチのメスは地中にトンネル状の巣を作って、単独で子育てをする。内部には数個の部屋があり、母蜂は幼虫の餌として蜜で練った花粉団子を一部屋に一つ作る。
図4.燃料として保持する花蜜量を測定するために、巣口にカップをかぶせて出巣を待つ
図5.カントウタンポポの間を飛ぶトゲアシヒメハナバチ

掲載論文

Fuel provisioning for pollen collection by solitary bee, Andrena taraxaci orienticola
Ken-ichi Harano, and Tetsuhiko Sasaki

謝辞

トゲアシヒメハナバチの同定は、村尾竜起博士に行っていただきました。本研究は、科研費基盤C(20K06078)の助成を受けて行われました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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