久保田先生レコーディングダイエットと自己調整

2019.10.03

皆さん,「レコーディングダイエット」をご存じですか。先ず,1冊のメモ帳を購入します。そのメモ帳に,朝食,昼食,夕食・・・と食事の内容をその都度書き込んでいきます。それだけで痩せる魔法のダイエットです。「どうして?」「ほんとに?」と思う人も多いでしょう。実はこのダイエットは,自己調整という理論に裏付けられた手法なのです。
 今日の昼食は,ショッピングセンターのフードコートです。どのお店にしようか迷っている時に,食欲をそそるごま油の香り。おいしそうな“天丼”です。今日はこれにしようと,注文の列に並びました。そのときに,ふと思い出します。「あれ,昨日の昼食はなんだかな? “カツ丼”だった!!!」,メモ帳に毎食レコーディングしているので,思い出したのです。「(今日の昼ご飯が)天丼はまずいな。横のそば屋で“盛りそば”にしよう。」と,注文の列を離れたのでした。このような出来事の繰り返しが積み重なって痩せるダイエット法です。難点は,毎回記録するのが面倒なことでしょうか。最近は,スマホアプリがいろいろ出ているので記録が簡単になりました(写真撮影でOKです)。
 さて,自己調整とは,自分を俯瞰し現状を客観的に捉え(モニタリング),その知見をその後の行動に生かす(コントロール)ことです。メタ認知と密接に関連する考え方です。レコーディングダイエットは,メモ帳に記録することで,最近の食事内容をモニタリングすることになります。人間は何もしないと,昨日何を食べたのかも忘れることがよくあります。記録をすることで,正確なモニタリングが可能になります。モニタリングの知見によって,昼食が“天丼”から“盛りそば”に変わりました。これがコントロールです。モニタリングとコントロールによって自己調整が機能します。自己調整はダイエットの話だけではありません。これからの社会を,よりよく生きるためには様々な場面で必要な能力です。ところで,学校教育で振り返りをさせることは一般的になりました。つまり,モニタリングはよく行っているのです。しかし,それはコントロールに繋がっているのでしょうか? 点検が必要です。
 さて,平成31年3月に,中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会から「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」が出されました。この中で,「主体的に学習に取り組む態度」について「① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面と、② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面、という二つの側面を評価することが求められる。」とあります。つまり,粘り強さと自己調整が相互に関わり合いながら立ち現れ,それを評価することが求められています。どのように見取り,評価するのかも検討を進めなければいけません。

参考資料