坂野先生:ドイツの教育政策のABCVol.1:学校制度と社会階層の再生産

2011.12.05
坂野 慎二

私の専門は日本とドイツの教育政策の比較分析です。
日本とドイツとの教育政策を分析する条件の大きな違いの1つが、学校制度です。
日本は、戦後教育改革の時に、アメリカの学校制度を参考に、単線型学校制度を導入しました。単線型学校制度は、誰もが小学校から大学まで進学していくことが容易です。たとえ高校受験で失敗しても、大学受験でその失敗を取り戻すことも可能です。多くの人に多くの教育機会を提供しているといえるでしょう。

一方、ドイツの学校制度は、第二次世界大戦の後も分岐型学校制度が維持されました。日本でいう小学校4年までが皆に共通です。その後は大学進学向けのギムナジウム(8~9年制)、中級技術者向けの実科学校(6年制)、職人や労働者向けのハウプトシューレ(5~6年制)の3つに分かれます。1つの学校に進むと、後から進路を変更することは容易ではありません。つまり、10歳の時点で将来の進路がある程度定まってしまうことになります。
10歳という早い時期での振り分け・選抜は、家庭環境等の影響が大きく、社会階層の再生産につながると批判されています。2000年以降、3年に1度行われている国際学力調査であるピサ調査では、こうした社会階層の再生産がデータとして実証されたといわれています。

ドイツの学校系統図 (文部科学省HPから)