量子情報科学研究施設の広田教授の研究が、MITの「量子情報処理」誌に掲載されます

2006.08.03

光パルス中の光子数の量子力学的ゆらぎを利用した新しい量子暗号技術である光通信量子暗号の「Y―00」(ワイゼロゼロ)が解読不能なことを数学的に証明した論文が米マサチューセッツ工科大学(MIT)の「量子情報処理」誌に掲載される。玉川大学学術研究所の広田修教授と茨城大学の黒澤馨教授による論文。2000年にY―00が提案されて以来、単一光子による量子暗号陣営との間で絶対安全性の保証がないと論争が繰り返されてきたが、これで決着し、Y―00に対する見方も変わってきそうだ。
  MITの同誌は量子情報処理分野では著名研究者の論文掲載や歴史的に手順を追って論文を掲載することで知られる。この雑誌に掲載されることで、評価が定まったともいえる。
  数学的に解読不可能を証明したのは広田・黒澤ランダム符号化法を用いることによって実現した。
  黒澤教授は現代暗号の研究者だが、光通信量子暗号の問題点を列挙して、広田教授が数学的に証明した。Y―00の発明者であるノースウエスタン大のユーエン教授は「今回の解読不可能の証明は提案以来の快挙」と最大級の賛辞を贈る。
  「これまでもY―00は解読不能と思ってきたが、そこまで必要と思ってこなかった」(広田教授)ことや解読不能性が証明されていない「量子暗号」ととらえられ、それが守勢に立つ最大の弱点だった。それでも現行の光通信ネットワークが使えるなど、既存通信技術との親和性の点で単一光子による量子暗号と一線を画してきた。
  実際に実用化に向けて、日立ハイブリッドネットワークや松下電器産業などが実用装置を開発してきた。しかし解読不能かどうかは光子レベルの制御技術が検出器に求められるため、「安全性と実現技術とはトレードオフの関係になる」(広田教授)という。解読を完全に不可能にするためには、かなり高度な光子の制御技術が欠かせないというわけだ。
  Y―00では「暗号破りに対する耐性がどの程度か、証明可能である点が現代暗号などと異なる」(同)ことから、暗号システムを、要求される安全性の度合いを設計できる点が大きな特徴となる。
  Y―00は日立ハイブリッドネットワークが毎秒2・5ギガビットの製品を開発済み。当初の実用化に向けたビジネスモデルも端末間の量子暗号通信から、「最近では電力ネットワーク系や通信キャリア系ネットワーク、高品質映像配信など、予想もできないようなニーズが検討されてきている」(同)と局面も変わりつつあるようだ。

(2006年7月31日付 日刊工業新聞より)


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