記念シンポジウムQ&A

9月12日に行われた全人教育提唱100周年記念シンポジウムで皆さんから寄せされたご質問に回答させていただきます。

この素晴らしい教育を受けて実際に国際社会でどう立ち回るかがここ40年間のチャレンジとなってます。その辺の対応性へのヒントはありますか?

小原國芳が掲げた国際教育は、決して特定の文化への迎合や模倣ではなく、反対の合一を実現することにあると考えます。外国かぶれのいわゆる出羽守に陥らず、同時に偏狭な国家観にとらわれない中庸を貫く姿勢が、これからの時代には求められるのではないでしょうか。(小原 一仁 氏)
玉川学園は「ラウンド・スクエア運動」等を通して、世界の新学校と国際的な教育運動を展開すべく努力していますが、今後さらに大きく展開していくことが求められていると思っています。(石橋 哲成 氏)
ご質問をありがとうございました。私の報告では、「新しい生命(人生、生活)」がキーワードにさせていただきました。つきなみですが、自らの国や地域で育まれた生活の価値観を尊重しつつ、他の価値観への寛容さを保持した上で、自他の間でコミュニケーションを図るということが肝要と考えます。(山名 淳 氏)

昨今、STEAM(玉川でのESTEAM)教育が提唱されていますが、それと全人教育との共通点と差異をどのように捉えてらっしゃいますか。

STEMは自然科学の代表格である科学、技術、工学、数学で構成されたものですが、そこにArt(リベラルアーツとする場合もありますが、一応今回は芸術の方で話をします)が加わったものがSTEAMです。芸術は感性の教育と思われる人も少なくないかも知れませんが、人が美しいと感じるには科学的根拠があります。それを解明し、学生たちに伝えていくことが、芸術教育の役割と考えます。この基本的姿勢がないと、独りよがりの芸術に陥ってしまいます。さて、全人教育との共通点ですが、学問教育(真)と芸術教育(美)が融合したものがまさにSTEAM教育であり、これは、偏ることのない真理追究の姿勢と、美を探究する姿勢を体現したものだと私は考えます。(小原 一仁 氏)

「子どもの未来を大人が先回りして決めてしまわないことが大切」とのこと。全くその通りだと思いますが、教師や親として具体的にどの様に教育したら良いか。具体的なお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
よろしくお願い致します。

教師や親としての教育のあり方を具体的に示すことは、結局、また別の型を作ることになります。そこで、私から回答できることとしては、例えばどの職業に就く、そのためにはどの大学に入学すべきかといった目標を決めてしまわないで、あくまでも子供が道から外れそうな時、迷っている時、助けを必要とする時に手を差し伸べられる距離に身を置くことになろうかと思います。子供は、親の求める「目標」を自然と自分の「夢」と思い込んで、それを叶えようと自分の道を狭める傾向があります。このことを認識して、親は子供と接する必要があるのではないでしょうか。(小原 一仁 氏)

日本の公立学校における全人教育の実現は可能でしょうか。

発表の最後で、オバマ元大統領が署名したEvery Student Succeeds Actについて触れましたが、公立学校であっても全人教育は実践可能と考えます。小原國芳が掲げた全人教育の理念の核は、真・善・美・聖・健・富という6つの価値がかたよることのないように教育を実践するところにありますが、この6つの価値はいずれも人間の教育としては普遍的なものばかりです。なお、日本国憲法(第20条第3項)や教育基本法(第15条第1項)では、国公立学校における宗教の中立性が謳われていますが、全人教育における聖は、人間としての謙虚さを大切にするためにあるように考えます。なぜ人間は宗教を生み出し、信仰する心を有するのかを考え、異なる文化、慣習を理解する機会は、別の形で設けることが可能ではないでしょうか。(小原 一仁 氏)

「全人教育」というワードが違う意味で一人歩きをしている現状を知りました。色々な意味が含まれたワードだと感じますが、広く認知してもらう為にも、今後は今回のシンポジウム以外で、どういったかたちで広めて行こうと思われているのでしょうか?

学外に広く認知してもらう以前に、まずは、学内において、教職員、保護者、子供たちを巻き込んで話し合う場の創出が肝要と考えています。全人教育の根底にある部分、基本となる部分の認識を改めて共有したうえで、より良い実践を追求していきたいと思います。(小原 一仁 氏)

【感 想】

  • 私が勤める無認可の園は、まずは子どもを観る、という事から始めます。こどものやりたいこと、気持ちに寄り添う、自然が、遊びが、何よりの学びの環境だという考え方です。何だか今日また新たに、私の原点はここから始まっていたのだと、お三方のお話を聞いて嬉しくなりました。自分も育児中です。子どもを信じてブレずに関わって行こうと思います。ありがとうございました。
  • 私は定年まで、静岡県の公立小中学校に勤めました。全人教育を実現したいと願い、自分なりに努力しました。しかし、時に批判されたり、迫害されたりしました。意地で定年までやり通しましたが、公立学校における全人教育の試みの難しさを痛感した次第です。
  • 質問では、ありませんが、久しぶりに先生から小原先生の話を伺うことができて、大変嬉しく思います。また機会があれば、このような講演会で石橋先生からのお話を聞きたいと思います。