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【開催報告】木村實教授最終講義&脳科学研究所10周年記念シンポジウム

2017.04.21
最終講義全景

2017年3月10日(金)、大学教育棟2014の612教室において「木村實教授最終講義」および「脳科学研究所10周年記念シンポジウム」を開催いたしました。玉川大学の脳科学の歴史は古く、1976年に工学部の塚田稔先生が脳の理論と実験の研究を始めて以来、多くの教員や大学院生らが自由で学際的な気風のもとで脳の研究を積極的に進めてきました。2007年、本格的な脳研究を推進するために脳科学研究所が設置され、大脳皮質の運動機能で世界的に高名な丹治順先生が初代所長に就任いたしました。そして2010年に、大脳基底核の意志決定の研究を精力的に進めておられた木村實教授が後任の所長として就任し、同年、日本で最初の脳科学に特化した大学院となった脳情報研究科(現脳科学研究科)も設置されました。今では、たくさんの専任・兼担教員、博士研究員、大学院生たちが、多様な脳の仕組みと働きを理解するために、幅広い視点からユニークな研究・教育活動を次々と展開しています。このたび、脳科学研究所は設立10周年を迎え、当研究所・研究科の発展に力を尽くされてきた木村所長も定年退職を迎えられ、この日に最終講義と記念シンポジウムを開催する運びとなりました。

教鞭をとる木村實教授

弟子たちによる記念花束の贈呈

午前中の最終講義では、まず木村先生との共同研究で世界的に注目されてきた鮫島和行教授と、木村先生に師事し先端技術を駆使した研究を進めている南本敬史チームリーダー(放射線医学総合研究所)が、木村先生との思い出話や各々の研究の発展を紹介しました。そして、木村教授の最終講義「大脳基底核の作動原理を追求して」では、東京大学大学院医学研究科(伊藤正男研究室)を修了後、自治医科大学、米国国立衛生研究所(E. エヴァーツ研究室)、生理学研究所、大阪大学、京都府立医科大学を経て本学の脳科学研究所に至るまで、約40年間にわたり一貫して取り組んでこられたシステム神経科学、特に霊長類の大脳基底核の機能に関する重要な研究成果について、共同研究者への深い感謝の念とともに振り返られました。数年前、木村先生は大病を患い闘病生活を余儀なくされました。そのとき病室で得た着想が、現在進行中の、ラットの行動選択に関与する大脳基底核回路をオプトジェネティクスで解明する研究計画です。この計画の実現のために、木村先生は大脳基底核機能研究会を発足させて、高い技術力を持つ国内の研究者との共同研究を開始しました。すでにいくつもの発見や検証のデータが得られており、次から次にスライドに繰り出される驚きの未発表データは正に圧巻でした。ご家族への感謝の言葉とともに、木村先生の研究生活は将来も続くことが示されると、約200名で埋め尽くされた教室は長い間拍手が鳴り止みませんでした。

午後は小原芳明学長の挨拶で10周年記念シンポジウムが開幕しました。日本の脳科学の発展を支えてきた甘利俊一特別顧問(理化学研究所脳科学総合研究センター)が脳科学を俯瞰的に解説し、玉川脳科学の生みの親である塚田稔名誉教授が脳と芸術の興味深い関連を語りました。続いて、脳科学研究所に所属する礒村宜和、坂上雅道、佐々木哲彦、酒井裕、岡田浩之、梶川祥世、松元健二、高岸治人(敬称略)が、それぞれの研究活動について講演し、最後は、視覚や質感の脳科学で成果を挙げてこられた小松英彦教授(生理学研究所)による講演「Neural mechanisms of material perception」で締めくくられました。

甘利俊一特別顧問(理化学研究所BSI)による講演
塚田稔名誉教授による講演
小松英彦教授(当時 生理学研究所教授)
(現 玉川大学脳科学研究所所長)
講演風景(塚田稔名誉教授)

お祝いムードのシンポジウム会場は終始和やかな雰囲気に包まれ、夕刻からの懇親会・ポスターセッションでは次世代を担う若い研究員や大学院生が積極的に交流する姿が印象的でした。

ポスターセッション(活発な意見交換が行われた)
懇親会(研究談議に花が咲き盛会となった)

平成29年度より脳科学研究所は小松英彦教授を新所長に迎えて、新たな歴史への一歩を踏み出しました。これまでの脳科学研究所の発展をご支援くださいました多くの皆様に厚く感謝いたしますとともに、これからの脳科学研究所の研究・教育活動にもご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。

鮫島 和行
礒村 宜和
南本 敬史

当日のプログラム

木村實教授最終講義

 鮫島 和行  木村所長との共同研究:神経生理と計算論の融合研究
 南本 敬史  化学遺伝学イメージングによるサル脳科学の新展開
 木村  實  最終講義「大脳基底核の作動原理を追究して」

脳科学研究所10周年記念シンポジウム

 小原 芳明  ご挨拶
 甘利 俊一  数理脳科学と人工知能
 塚田  稔  玉川脳研究所の過去、現在、未来
 礒村 宜和  ラットの行動発現を担う神経回路を探る
 坂上 雅道  推論と玉川脳科学研究所
 佐々木哲彦  昆虫の社会と脳:ミツバチから学んだこと
 酒井  裕  脳の学習原理の解明を目指して
 岡田 浩之  「AI」と「ロボット」が創る未来
 梶川 祥世  赤ちゃんラボでの言語発達研究
 松元 健二  内発的動機づけの神経基盤
 高岸 治人  向社会的行動の生物学的基盤
 小松 英彦  Neural mechanisms of material perception

(敬称略)

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