9/19(木)NASAボールデン長官による講演会の様子:報告2

2013.10.09

9月19日(木)、米国航空宇宙局(NASA)のチャールズ・ボールデン長官による講演会を玉川学園、米国大使館、米国航空宇宙局が主催して、本学の講堂で開催しました。「宇宙飛行士になる方法」と題し、これまでの4回の宇宙飛行のミッションと2回の船長任務の経験から、宇宙開発の今を語っていただきました。

講演会には、第1回目に本学の小学5年生~中学2年生の約470名が、第2回目には本学の中学3年~高校3年生・大学生と近隣の中高生や、文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている都内・神奈川県内の中高生、あわせて約500名が出席しました。本学園以外の参加校は、筑波大附属駒場中学校・高等学校、東京都立多摩科学技術高等学校、東京都立戸山高等学校、桜美林高等学校、鴎友学園女子中学校・高等学校、東京都市大学付属中学校・高等学校、日本大学櫻丘高等学校、日本大学第三高等学校、法政大学第二高等学校、神奈川県立厚木高等学校及び神奈川総合産業高等学校の合計11校で、生徒約80名が聴講しました。

ボールデン長官の講演の内容は次のとおりです。
NASAはいわゆる軍事目的の研究機関ではなく、文民による研究機関であり、18,000人の職員と40,000人の契約職員が、科学研究を行っています。その中には民間企業も含まれています。大きく分けて4つの研究ユニットと10のセンターを設置し、それぞれがプロジェクトを推進しているところです。

NASAの最も有名なミッションは、国際宇宙ステーション(ISS)における有人探査と運用です。この事業が始められてから13年が経過しています。既に2011年にスペースシャトルは役目を終えましたが、それに代わり、スペースX社やオービタル・サイエンス社の貨物モジュールが、ISSへ物資を運んでいます。これらは遠隔操作システムによって運用されています。

また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士である若田紘一氏は、ISS滞在に向けて必要な訓練を積んでいます。若田氏は、訓練環境の中でも、社交的でスター的な存在です。来年春にはISSにおいて船長として最後の3か月間を過ごし、他の宇宙飛行士との間で指導的な立場となります。

ちなみに、NASAと日本のJAXAは、様々な事業を実施する上で重要なパートナーとなっています。もちろん日本以外の国々も参加し、宇宙空間における90くらいのプログラムのうち、64が国際プロジェクトとなっているのです。JAXAの取り組みの数は3番目に多く、あらゆるミッションの協業を図っています。

その後は、長官自身が搭乗していたスペースシャトルの写真がスライドに映されました。遠心力が重力に勝り無重力状態で浮遊している様子です。
無重力状態では、他から力がかからなければ、何も動かない状況となります。実は1日の半分の12時間は寝ているとのです。そして起きているときは科学研究実験を行います。期間中には400以上の実験を行いました。また、パートナーの飛行士と共に医学的な実験も行います。例えば、日々、血液・唾液・尿といったサンプルを取り、地球に持ち帰り、無重力状態で人間のホルモンバランスがどのように変化するか分析します。

オバマ大統領は、2030年代までに宇宙飛行士を火星の軌道に送り込む目標を掲げています。また、2025年までに小惑星に行ける新しい有人宇宙船を開発したいと考えているのです。火星探査機“キュリオシティ”が、2011年11月に打ち上げられ、8か月かけて火星に着陸しました。探査を通じて、地質学的な歴史を解明しながら、小惑星や火星を調査することにより、太陽系や地球、ひいては私たち自身の起源がわかるのです。全てのミッションを通じて、人類や惑星の起源はどういうものなのか。この宇宙の中に生命体は他にいないのか。といったことを常に考えています。

講演の中で、高度600kmからの地球の写真が映されると、会場の生徒たちはその美しさに息をのんでいました。そしてその生徒たちに、長官は「月から見ると、地球は本当に美しい。水の惑星と言われるように、一つの海洋の質感を感じます。世界では色々なことがありますが、宇宙から見ると平和的に見えます。どうすればこの外面のように内面も平和になるか、皆さん考えられますか?」と問いかけました。

講演後、質疑応答が活発に行われ、本学のIB(国際バカロレア)クラスの生徒たちは、英語で質問しました。「世界平和に向けた宇宙開発事業の役割は何ですか?」との質問に、長官は「私はISSにノーベル平和賞を受賞させたいくらいだと思っています。これまでの歴史の中では、国と国との間で様々な出来事がありました。今では日米はパートナー、ロシアも同様です。65か国の国々がISSの中では仲良く生活しています。宇宙空間では共通のミッションを持って協力できる環境があり、地球の生活の向上に貢献していると思います。」と丁寧に答えてくださいました。

最後に、長官は南アフリカのある男の子の話をしてくれました。その子はエイズにかかり、2001年に12歳で亡くなりました。亡くなる前まで、彼は幼いながらも人々に役立つ、そして感銘を与える話をよくしていたのです。その意味で特別な才能を持っていました。体重が20ポンド程になり、いよいよ亡くなるときに、ある人が「今の状況に文句を言わないし、痛みも訴えない。いつも他人のために何かを言っている。それはなぜなのか?」と問いかけると、彼は「ぼくは、自分がいるところで、自分が持っている時間の中で、できる限りのことをするだけなんだ。」と言ったのです。

「皆さんにもぜひこのことを考えてほしい。みなさんは、恵まれています。だから恩返ししてほしいのです。宇宙から見える地球のように、世界をより良いものにしてください。また、世界中の人々が、人種・宗教を乗り越えて仲良くなり、この世界が平和になるように、持っている時間の中でできる限りのことをしてください。」という生徒たちへの長官からのメッセージで講演会が終了となりました。広大な宇宙と長官の温かい人柄にふれることができた素晴らしい講演会でした。

【講演の概要(報告1)はこちらをご覧ください。】