2019年・春 緊張について

授業での発表や、面接の場面などで、「頭が真っ白になってしまう」、「声や手が震えてしまう」など、緊張にまつわるお悩みを抱いている方は、決して少なくありません。
「こんなに緊張するのは自分だけだ」と考えがちですが、ある調査では、なんと日本人の8~9割が「人前で話すのは苦手」、「緊張してあがってしまう」と感じているそうです。
この数字からもわかるように、緊張してあがることは、実は誰にも起こる現象なのです。 しかし、過去に、緊張により失敗してしまった経験があったりすると、「また次もそうなってしまうのでは……」という予期不安が生じやすくなり、苦手意識も強くなります。その結果、緊張する場面を避けるようになり、日常生活に支障がでてくる、という悪循環につながりかねません。
今回は、緊張・あがりについて、対策のヒントをいくつかお伝えしていきます。

なぜ緊張するの?

そもそも「緊張」とは何なのでしょうか。
生き物は、通常とは異なる重大な場面に直面したときに、それに対応できる体の状態を作る仕組みが備わっています。例えば、草原でキリンがおいしく草を食べている時に、遠くにライオンの姿が見えたとします。その際、キリンに何の緊張感も生じず、のんびりと目の前の草のおいしさだけを感じ続けていたら、あっという間に命の危険にさらされてしまいます。しかし現実では、ライオンの気配を察知した途端に、キリンの体中の筋肉がギュッとひきしまり、草のことなど忘れて一目散に逃げるでしょう。 つまり、重大な場面に直面すると、自然に「緊張のスイッチ」がONになるのです。

「緊張のスイッチ」が入ると、ノルアドレナリンという物質が分泌されます。この物質は、体や頭を覚醒し、興奮させる作用をもっています。活動のための交感神経が活性化し、心拍数や体温が上がり、意識もはっきりと冴えてきます。その場に必要な判断をして、速やかに動ける体の状態が出来上がるのです。つまり、緊張感が生じるということは、生き物に備わっている「身を守るための大切な仕組み」なのです。 

大切なのは適切な緊張感

そうはいっても、重大な場面で頭が真っ白になってしまうのは困りますよね。

この図は、緊張感が弱すぎても、強すぎても、力が発揮できないことを示しています。
緊張感が強すぎると、身も心もガチガチになってしまい、思うように行動できません。

一方、緊張感が低すぎるのも、実は困ったものなのです。ダラダラしてやる気がでず、集中力も上がりません。試験の時に眠くなってしまったら、とても困りますよね。
大切なのは、緊張しないことではなく、緊張感を適度なレベルにコントロールしていくことなのです。

緊張対策

それでは、適切なレベルの緊張感を保つためには、どうすればよいのでしょうか。
【考え方】へのアプローチと、【体】へのアプローチの2側面で考えてみます。

【考え方】へのアプローチ・・・柔軟に考えてみましょう!

緊張しすぎてしまうタイプの人は、「緊張したらダメ」、「緊張しないようにしないといけない」と強く思い込んでいることが多いものです。ですが、前述のように、緊張するのは自然な体の仕組みなので、その自然な反応を無理に止めようとしても、上手くいきません。

緊張感が生じるのは、「『今、自分が重大な場面にいる』ということを体が察知している証拠」でもあるのです。無理やり抑えこもうとせずに、「大切な場面で緊張するのはあたりまえ」という具合に、緊張を受け入れる考え方をしてみると、緊張対策は大きく前進します。心臓がドキドキしてきた時にも、「まずい、どうしよう!」と慌てるかわりに、「心臓が、脳と体に栄養を送ろうとしてくれている」などと考えてみると、気持ちは次第に落ちついていきます。

また、知らず知らずのうちに「完璧にやらなくては」と思い過ぎて、自分に大きなプレッシャーをかけてしまっていませんか。完璧な結果を出すことから一旦離れて、「今やれることを、やれる分だけやる」という心持ちで物事に臨んでみると、意外に気持ちが楽になるものです。

【体】へのアプローチ・・・体をほぐしましょう!

体と心はつながっていて、緊張すると、気持ちだけではなく、体もガチガチになっています。筋肉が硬直して思うように動かせなくなると、声も出辛くなり、そのことでまた焦り、さらに緊張が高まってしまう、という事にもなります。まずは、一息入れて、体をほぐしましょう。手軽なリラックス方法を2つご紹介します。

10秒呼吸法

息を吸うことではなく、吐くことに意識をむけるのがポイントです。

  1. まず息を吐き切るところからスタート。
  2. ゆっくり1.2.3.と数えながら鼻から息を吸い、4で軽く止める。
  3. 5~9までかけてゆっくり口から吐き出して、10で吐き切る。
  4. これを1セットとして、気持ちが落ち着くまで自分のペースで繰り返す。

筋弛緩法

一度、思い切り体に力を入れ、その後に脱力することで、体の力を無理なく抜く方法です。

  1. 楽な姿勢で椅子などに腰かけ、腕を下に垂らす。
  2. 両肩を耳に着けるようにぎゅーっと持ち上げて、そのまま5~10秒ほど、肩に力を入れた状態をキープする。
  3. 一気にすとんと脱力する。その時、肩や腕の力が抜けている状態をじっくり味わう。これを何度か繰り返す。

毎日少しずつでもよいので、このような深い呼吸法や、力を抜く練習法を続けてみてください。はじめは上手くいかなかったとしても、続けているうちに効果が現れてきます。

今回は、緊張感が生じるメカニズムが、生き物に備わっている重要な仕組みであることをお伝えしました。緊張を無理やり抑え込むのではなく、うまく付き合いながら、適切な緊張レベルにコントロールしていくことがカギになります。考え方や、身体を柔らかくすることで、行き過ぎた緊張は緩和していきます。ここで紹介したもの以外にも、自分に合いそうなリラクゼーション方法を是非探してみてください。
試してもうまくいかない場合などは、どうぞお気軽に保健センター健康院のカウンセリングルームに相談にいらしてください。