科学するTAMAGAWA 「学びの技」で、「考え、調べ、伝える力」を養うために〜玉川学園「探究型学習」の"今"

2020.01.31

玉川学園では創立以来、その時代に応じた「探究型学習」を実践してきました。その代表的なものの一つが自学自律的な学びを実践する「自由研究」です。その後K-12一貫教育体制の中で、探究型学習をすすめるために必要な「考え、調べ、伝える力」=「学びの技」を身につけるカリキュラムを導入。毎年、その進化&深化を図っています。
令和の時代を迎え、玉川学園の「探究型学習」とそれを支える「学びの技」の“今”について、あらためて担当の先生方にお話をうかがいました。

K-12 思考力育成委員会委員長・玉川学園マルチメディアリソースセンター(MMRC)センター長 伊部敏之教諭

「学びの技」とは、物事を考える方法やわからないことを調べる方法、そして自分の考えをわかりやすく正確に伝える方法などのスキルを指します。

K-12思考力カリキュラムモデル

2008年度より9年生を対象とした「学びの技」という授業がスタートし、現在は幼稚部、低学年、中学年の各ディビジョンにも「学びの技」を学ぶプログラムが展開されています。この学習が低学年での「総合的な学習の時間」、中学年と高学年で取り組む「自由研究」における基礎を培ってきた結果、幼稚部から12年生までつながりのある思考力と表現力の育成をめざしたカリキュラムが、横断的にすべての教科に定着しています。現在、それぞれの教育成果や各ディビジョンの教科連携の検証が始まっています。

2015年には幼稚部、低学年、中学年、高学年の連携をよりスムーズにしていく試みとして、教員が他のディビジョンで教える「出前授業」を実施しました。ふだんとは異なる学齢の子供に教える経験を通して、新たな課題や可能性を見出すことができました。現在の課題としては、より効果的な文章表現の指導と園児・児童・生徒の主体性の養成などがあります。さらにデータサイエンスの活用や新学習指導要領の内容を取り込んだK-12探究型学習の進化を図っていきたいと考えています。

出前授業(2019年度)

幼稚部 大池旬子教諭

幼稚部の「学びの技」は「遊びは学びである」との考えのもと、ふだんの遊びの中で、言葉や数字の感覚、運動、自然観察などを身につけていきます。年少・年中ではできるだけ子どもが自発的に遊ぶ=学ぶ環境づくりを心がけていますが、「『あ』がつくコトバを探してみよう」など、私たち教員が学びのきっかけとなるような“しかけ”をし、考える場面を促すこともあります。

チャレンジプログラム

四季折々の自然豊かな玉川の丘は、園児が発見し、考える題材がたくさんあります。秋に実をつける柿の木や柿の実を狙うカラスも素晴らしい教材になりました。私たち教員が園児の「おもしろい」「知りたい」という気持ちを敏感にキャッチすることが「学びの技」の出発点になると感じています。
年中までの遊び=学びで培われたものは、年長の「チャレンジプログラム」で深められます。このプログラムは年長の9月以降、就学前教育として言語・数量・運動・自然と科学・特別活動の5領域で実践しています。「わからないこと・知りたいこと」をわかるようにしていく手順・方法を身につけていきます。

低学年(1~4年生)野瀬佳浩教諭

玉川学園幼稚部から進学した児童は「やりたがり」で「知りたがり」です。幼稚部での「学びの技」の教育が奏功し、自主的に取り組み、粘り強く探究する素地ができていると感じます。

「学びの技」授業

低学年では1年生より教科を横断して必要となる「考え、調べ、伝える」基本的なスキルを特設授業で身につけていきます。多くの情報を理由や観点を示しながら“分類”すること、集めて分類した情報を順序立てたり、比較したりしながら整理すること、そして整理された情報をもとに“根拠”を示して自分の考えを伝えること……そうした学びの成果は夏休みの自由研究で生かされることになります。また、自主的に物事に取り組むようになった低学年の児童たちは、今以上に学習面だけでなく学校生活の様々な場面においても自分たちで計画し、作りあげていく機会が持てるようになっていかれると思います。

昨年度までは「学びの技」の授業は1~4年生まで年間5時間でしたが、今年度から3~4年生で一気に年間70時間に増やしました。これからその成果がどのように表れてくるか楽しみです。

中学年(5~8年生)遠藤英樹教諭

低学年を引き継ぐ中学年では、9年生での「学びの技」の授業につなげていくため、主に教科学習と自由研究の両輪で、思考スキルと言語スキルの伸長を図っています。
たとえば「国語」の時間にはノートの取り方、レポートの作成、プレゼンテーション、ディべートなどを通して、自分の意見を論理的に、根拠を示してわかりやすく伝える言語スキルを養っていくことを目指します。「数学」では論証の根拠となる統計、データの活用について学んでいきます。

玉川学園展(自由研究)口述発表

そして「考え、調べ、伝える」探究型学習の核となるのは「自由研究」です。中学年では25の講座を開講し、教科学習や芸術、スポーツなどの分野から児童・生徒が自主的にテーマを選び、1年間取り組んでいます。ここで児童・生徒たちは初歩的な「研究」を体験することになります。3月の玉川学園展では研究成果のプレゼンテーションも経験します。
「学びの技」は探究型学習のための「型」を覚えることであり、「自由研究」は一人ひとりの自主性を発揮する機会です。中学部の教員として、これからもこの二つの方向性をバランス良く身につけてもらう工夫を考えていきたいと思っています。

高学年(9~12年生)後藤芳文教諭

高学年の探究型学習は9年生の「学びの技」を出発点として10年生以降の「自由研究」につなげていきます。

マインドマップ(9年生作成)

9年生「学びの技」では8年生までに身につけた思考・言語スキルを発展させ、情報整理のための「マインドマップ」や論理的な論文を書くための「探究マップ」というツールを活用しながら、情報収集・整理から根拠立てた論証のやり方、プレゼンや論文の書き方などを学んでいきます。ここで重要なのは自分の見方だけでなく、反対意見の立場も知ること、すなわち批判的思考を取り入れながら論証を進めていくことです。また、その過程では統計などデータを活用することも学んでいきます。

2019年度ポスターセッション

10年生以降は個人の関心や進路を見すえたテーマで「自由研究」に取り組みます。自由研究は人文科学・社会科学・理学工学・教育・芸術の5カテゴリーのいずれかに所属し、2年半かけ研究を6000字の課題論文にまとめ上げます。
思考・言語スキルという「型」に加えて、主体性や意欲といった「エネルギー」が欠かせません。そしてその両方があってこそ、一人ひとりの「生きる力」が養われる……探究型学習の目的はそこにあります。
高校(10年生)から玉川学園に入学する生徒をどのようにケアしていくかという課題がありますが、私たち教員のケアに加えて、「学びの技」を経験した生徒たちが経験していない仲間を自主的にサポートしてくれています。頼もしい限りです。