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科学するTAMAGAWA 玉川学園創立90周年記念
特別展「ジョン・グールドの鳥類図譜 ―19世紀 描かれた世界の鳥とその時代」がまもなく開催。
その見どころを紹介します

2019.09.25

かつてないスケールの「鳥類図譜」展

来る2019年10月5日 (土)~10月13日(日)、東京・池袋にある東京芸術劇場で玉川学園創立90周年記念特別展「ジョン・グールドの鳥類図譜―19世紀 描かれた世界の鳥とその時代」を開催します。
玉川大学教育博物館は図版総数2,946点に及ぶ大型の図譜40巻と小型図譜1巻という日本最大のグールド・コレクションを有しています(2001年にはデジタル化)。今回は日本で初めてそのコレクションが一挙に展示されるだけでなく、山階鳥類研究所が所蔵する3巻を加え、44巻というかつてない規模での展示となります。グールドの膨大な資料を所有するカンザス大学の協力も得て、図譜の制作過程や関わった人々、時代背景などにも迫る見応えのある展示内容です。

会期中の10月8日(火)には荒俣宏氏(作家・博物学研究者・京都国際マンガミュージアム館長)の講演と専門家を交えたパネルディスカッションを開催します。博覧強記を誇る荒俣氏の講話がグールドによって描かれた鳥類の世界への視野をぐっと広げてくれることでしょう。
また、玉川大学・玉川学園学友会主催「文化・芸術展」も同時開催。本学卒業生の陶芸家や木漆工芸家らの作品展示や各種パフォーマンスも行います。
さらに、10月28日(月)?2020年2月2日(日)には、会場を玉川大学教育博物館に移し、あらためて「ジョン・グールドの鳥類図譜―19世紀 描かれた世界の鳥とその時代」を2期に分けて開催します。

この特別展の見どころを教育博物館主幹学芸員の柿﨑博孝教授が解説します。

玉川大学教育博物館と
ジョン・グールド鳥類図譜

玉川学園創立者の小原國芳(1887-1977)は「全人教育」を実践する上で、「ホンモノの触れる」教育を大切にし、創立以来、教育・学習の参考となる資料を集めてきました。創立者の跡を受け継いだ小原哲郎(1921-2011)は、グールドの美しい鳥類図譜の優れた芸術性・学術性に着目し、教育にとどまらず人類共通の文化遺産として保存・活用したいという思いから、1992年に収集事業を開始しました。そして17年間かけて40巻全巻初版の収集を行いました。玉川大学教育博物館ではグールドの大判鳥類図譜40巻と小型の図譜1巻を所蔵しており、これは国内最大のコレクションとなっています。東京芸術劇場(池袋会場)では山階鳥類研究所のご協力のもと、44巻の展示が実現します。一堂に会した展示は日本初となります。

「ジョン・グールド」ってどんな人?

ジョン・グールド(1875年撮影)

ジョン・グールド(1804?1881)は、ヴィクトリア女王が統治した19世紀の大英帝国で活躍した博物学者。盟友チャールズ・ダーウィンの「進化論」の成立にも大きな役割を果たした彼は、幼い頃から自然を愛し、20歳よりロンドン動物学協会附属博物館の学芸員として働き始めました。
博物館に世界各地から送られてくる珍しい鳥類標本に魅せられ、画才に恵まれた妻の協力のもと、1831年より鳥類図譜の制作に取り組むようになりました。以来、76年もの年月、生涯を捧げて膨大な世界各地の鳥類図譜を制作。剥製をもとに描くだけではなく、グールド自身がアメリカ大陸やオーストラリアまで足を延ばして、現地で鳥たちの生態をつぶさに観察しています。

「ジョン・グールドの鳥類図譜」見どころと魅力

「鳥類図譜」の魅力をあますところなく体感できる

『ハチドリ科鳥類図譜』全6巻

美しく装幀・製本された大型本が一堂に会するほか、露出展示も実施。グールドを魅了したハチドリの図譜を間近でご覧いただけます。羽の光沢に金彩が施されおり、その美しい輝きは必見です。さらに重いものでは7~8㎏もあるという大判の図版の展示もあり、「鳥類図譜」の重厚感と繊細さ、そしてスケール感のすべてを感じることができるでしょう。

「鳥類図譜」の制作過程がわかる

「鳥類図譜」はグールド自身の学術的調査に裏付けられたラフスケッチ・原画をベースに、夫人エリザベスを含む複数の画家や石版画(リトグラフ)の技術者らが、いわば“ジョン・グールド工房”として生み出した共同制作作品です。
展示ではグールドのスケッチが、石版画の印刷と画家のフィニッシュによってどのように完成していったかが、つぶさにわかります。石版画に使われた墨刷の石版石も展示される予定です。

グールド工房の画家たちの作風の違いや技術向上を鑑賞

グールドの工房では複数の画家が絵筆をふるいました。エリザベス夫人のほか、ナンセンス詩人でもあったエドワード・リア(1812-1888)、リアの跡を継いだヘンリー・コンスタンティン・リヒター(1821-1902)、ヨゼフ・ヴォルフ(1820-1899)などの作風の違いを楽しむことができます。また、主に剥製を参考に描いた初期から順番に見ていくと、鳥の生き生きとした生態を描く技術が次第に向上していったことも見て取れます。

グールドの標本「アカボウシヒタキモドキ」
(山階鳥類研究所所蔵)

グールドが図版のモデルとした剥製の実物

今回、山階鳥類研究所からは3巻の図譜とともに、グールドが収集した鳥の剥製(6体)もご提供いただきました。剥製は約200年前のものとは思えないほど鮮やかな羽の色が保存されており、時を超えてグールドたちの感動が伝わってきます。中にはグールドがモデルに使った剥製も含まれています。

グールドの図版を使った「鳥類系統樹マンダラ」展示

進化生物学者の長谷川政美先生らの制作による「鳥類系統樹マンダラ」も展示。これは鳥類がどのように進化していったかをグールドの図版を使って、曼荼羅図のように表現したもの。最大全長2メートルもある迫力あるポスターです。

19世紀のボタニカルアートと出会う

近年、流行のボタニカルアート。そのルーツは古代エジプトや中国などで薬草を見分けるため作られた図譜が始まりと言われています。また大航海時代にヨーロッパ諸国が競って世界各地で未知の植物を求めました。そのようなとてもめずらしい植物が画家と学者のコラボレーションによって正確に描かれ、ボタニカルアートは18?19世紀のイギリスやフランスで発展していきました。ほぼ同時代のグールドの鳥類図譜には、鳥とともに背景の植物や風景も書き込まれており、当時のボタニカルアート流行の片鱗を感じることができます。

ベニカザリフウチョウ
『ニューギニア及びパプア諸島鳥類図譜』第1巻
ウスグロハチドリ
『ハチドリ科鳥類図譜』第2巻
オウギハチドリ
『ハチドリ科鳥類図譜』第2巻

「鳥人ジョン・グールドの世界」そして「鳥たちの楽園」にぜひ足をお運びください。

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