文学部英語教育学科「World Studies」で、青年海外協力隊の活動経験者を招き「JICAボランティアセミナー」を行いました
7月4日(火)、文学部英語教育学科2年生の「World Studies」(担当:太田美帆・中嶋真美)の授業において、独立行政法人国際協力機構(JICA)のJICAボランティア事業に携わった方を招いたセミナーを行いました。
「World Studies」とは、地理や国際情勢を踏まえ、各国・地域の実情について理解を深めていく科目です。「JICAボランティアセミナー 〜世界に笑顔をひろげるシゴト〜」と題されたセミナーでは、JICAの事業概要や、ボランティア活動をした現地の体験談を聞ける内容となっています。この日、講師として招かれたのは、アフリカのマラウイ共和国に2014年9月から2年間、海外青年協力隊コミュニティ開発隊員として派遣された加藤 碧さんです。大学で経済学を学びながら、国際協力のサークルで活動なども行ってきました。そして在学中には、1年間のオーストラリア留学なども経験しています。大学卒業後、音響施設の貿易事務職を経た後、マラウイへボランティアとして派遣されました。
「マラウイは、アフリカ南東部にある内陸国で、アフリカ大陸で3番目に大きな湖を有する自然豊かな国です。人口は1,600万人で、たばこやコーヒー、茶、主食となるメイズの栽培など農業を主な産業としています。ボランティアの業務区分としては、“コミュニティ開発”を担当。行くまでは何をするのか見当もつきませんでした。現地では、ジェンダという町のヘルスセンターに配属され、乳幼児の定期検診や予防接種のサポートを主に担当しました」。こうした保健衛生の実務もさることながら、その役割は、現地の人の意識を高め、やる気を引き出し、人と人をつなぐコーディネーター的な側面が大きかったといいます。
現地では、野菜や果実などは比較的入手しやすく、食に困ることはないものの、6大栄養素をバランス良く摂取するのはとても難しい環境だったとのこと。そこで加藤さんは、村の人との料理教室を実践してきました。「バナナをおかゆのようにアレンジしたり、ジャガイモやトマト、葉野菜を使った焼きコロッケを作ったりして、栄養に関する啓発を行ってきました。また、井戸の適切な使い方や手洗い、蚊帳の張り方などを教え、それに懸命に取り組んでいる村人を集めた衛生啓発イベントなども行ってきました。啓発映像のドラマづくりでは村の人たちが熱演してくれて、大好評でした」活動期間は2年間でしたが、得たものは計り知れない、と加藤さんは言います。
「ボランティアだからできることがあり、さまざまなことにトライできましたし、アフリカという遠い存在だった人が、現地で暮らすことで身近な存在になり、活動で知り合ったボランティアスタッフや現地の人との交流で人脈が広がりました。2年間の活動を終えて、人と自分を比較しなくなったり、細かなことにとらわれすぎなくなったり、固定観念を持たずに物事を見られるようになったりと、自身の成長も感じています」と、語りました。
この後、サプライズ企画として、ロックバンドUNDER GRAPH(アンダーグラフ)のヴォーカル真戸原 直人さんが、教室に登場しました。真戸原さんは、青年海外協力隊50周年イメージソング『ひとりひとつ』を作詞・作曲した方でもあります。その歌唱印税で、アフリカ・ベナン共和国にリコーダー76本を寄贈し、実際にベナン共和国を訪問。現地の子供たちとのふれあいや合奏を行ってきました。2013年にはマラウイにも足を運び、現地の様子を目の当たりにしてきました。その現地の様子を踏まえ、真戸原さんとボランティアに参加した加藤さんとのトークセッションが行われました。
−−マラウイの印象は?
真戸原 国名を聞いても、どこにあるの?という感じでした。行く前にインターネットで調べたのですが、行ってみたらすべてが逆でした。けっこう寒かったですし、野生動物はいないし……。 加藤 グローバルフェスタというイベントで初めてマラウイを知りました。現地は"Warm heart of Africa"といって人の温かさが特徴ですが、標高が1,600mくらいなので、寒かったです。
−−海外とのつながりは?
真戸原 学生のころは海外に憧れはありましたが、行くことはありませんでした。メジャーデビューした後に、友人と話していて、音楽で国際協力ができるミュージシャンをめざそうと思い立ちました。 加藤 学生時代に休学してオーストラリアに留学しました。そのときのシェアハウスのオーナーにボランティアに興味があると話したところ、ボランティアセンターに連れて行ってもらえました。
−−海外ボランティアや協力隊についてのイメージは?
真戸原 最初は井戸を掘っているイメージでした。話を聞いても、今暮らしている日本に比べ不便な生活となる所に2年間も行くのはなぜなんだろう?と思っていました。実際にボランティアの人たちに会ってみたら、人それぞれに理由があって、でも、みんな求められているうれしさを感じていて、輝いて見えましたね。 加藤 行くまでは、「すごい人たちばかりじゃないか」とか「自分に務まるのだろうか」みたいなことを考えていました。1年目は悩むこともありましたが、慣れてしまえばそうした不安はなくなっていました。
−−これから海外へ飛び出す学生たちにメッセージを
加藤 海外は初めてという人も、そうでないという人もいると思います。大切なのは、現地で経験できることを楽しむことです。それで何かをつかんで帰ってこられればいいのではないでしょうか。 真戸原 英語教育学科では、全員が9か月間も留学に行けるのはすごいことです。行った先々で文化などにふれ、自分の経験にできればいいですし、これを続けていきたいという気持ちで楽しんでほしいと思います。
セミナーの最後に、真戸原さんから青年協力隊50周年イメージソング『ひとりひとつ』とメジャーデビュー曲『ツバサ』の2曲が、学生たちに披露され幕を閉じました。聴講した学生達は、4セメスター(2年次秋)から、アメリカ、イギリス、アイルランドの3か国へ、全員が9か月の海外留学を体験します。それらをひかえた今、留学前の心構えとしても、また異文化への理解を深める上でも、自身の可能性と視野を広げる貴重な機会となりました。
JICAボランティア事業
JICAボランティア事業は日本政府のODA予算により、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する事業です。開発途上国からの要請(ニーズ)に基づき、それに見合った技術・知識・経験を持ち、「開発途上国の人々のために生かしたい」と望む方を募集し、選考、訓練を経て派遣します。 その主な目的は、以下の3つです。
- 開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与
- 異文化社会における相互理解の深化と共生
- ボランティア経験の社会還元
なかでも、青年海外協力隊は事業発足から50年以上という長い歴史を持ち、これまでにのべ4万人を超える方々が参加しています。
応募できるのは20~39歳(青年)、40~69歳(シニア)の方で、日本国籍を持つ方です。募集期間は年2回(春・秋)、活動分野は農林水産、保健衛生、教育文化、スポーツ、計画・行政など多岐にわたります。自分の持っている知識、技術、経験などを生かせるのがJICAボランティアの特徴です。派遣期間は原則2年間ですが、1ヶ月から参加できる短期ボランティア制度もあります。