学園創設時から続く、ハチの研究の一端に触れる。保護者の皆さんを対象に「親学講座」を開催

2018.10.16

玉川学園K-12父母会では、学内外の先生方や各界で活躍されている方を招き、子育てや教育に関する保護者の皆様向け勉強会、「親学講座」を毎年企画・開催しています。本年度2回目の親学講座は9月13日(木)に、農学部長の小野正人教授による農学部の紹介、さらに「蜂と私たちの生活とのかかわり」と題した講演が行われました。

小野先生はハチに関する研究の第一人者であり、「ニホンミツバチが天敵スズメバチに対して示す熱殺蜂球による防衛行動」と「オオスズメバチの複数成分系警報フェロモンの発見」は、研究論文として英国の著名な科学雑誌『Nature』誌に掲載され、国際的な話題を呼びました。マスコミからの取材も頻繁に受けており、テレビで見たことがあるという方も多いと思います。

講演の前半では、農学部の紹介が行われました。「私たちが住む地球では、今さまざまな課題が持ち上がっています」と小野先生。「たとえば人口増加による食糧問題。また地球環境の悪化や私たち人類の健康など。21世紀の100年を私たち人類が生き抜くためには、解決しなければいけない課題があります。そしてそれらの多くに応えられるのが『農学』なのです」。


その上で、小野先生は玉川大学農学部の特長を三つ挙げました。一つ目はキャンパス内に農場があること。二つ目は化学、生物学、生態学をボーダレスに学ぶことで生まれる、生物への多角的なアプローチ。三つ目は複数の研究分野で構成される研究室融合型教育による領域制。こうした学修環境の中で、生産農学科、環境農学科、先端食農学科の3学科が各々の特長を生かした教育を行っているのです。この日参加した保護者の皆さんは、熱心にメモをとっていました。

またこの日の講演では、小野先生の専門でもあるハチの生態についての説明もありました。「ミツバチの巣箱をサーモグラフィーで見てみると、中央部分の温度が非常に高いことが分かります。これは幼虫を育てるため、ミツバチ自身が胸の筋肉を振るわせながら発温しているからなのです。これにより巣の中は約34℃に保たれています。昆虫は変温動物に含まれますが、ミツバチは場合によっては熱を出すんですね。なぜかというと、ハチは蝶のように個別に活動するのではなく、集団で暮らす『社会性動物』だからです」と、小野先生はハチの生態について語ります。

たとえば「スズメバチの巣は総ヒノキ造り」といった切り口で保護者の皆さんの笑いを誘った小野先生。実はスズメバチはヒノキなどの針葉樹の樹皮をかじり、それを巣の材料にしています。それらに抗菌作用があることは知られていますが、スズメバチもその性質を上手に活用。ヒノキを使って巣を作ることで、カビやバクテリアから幼虫を守っているのです。「進化の過程で、そうした抗菌作用を自ら生み出すようになれたかもしれませんが、身近にある樹木から得られるのであれば、効率を重視してそれを活用する方向へと進むわけです。生態学は、経済学でもあるんですね」と小野先生。

こうしたハチに対する深い知識は、玉川学園の伝統でもあります。玉川学園においてミツバチの研究が始まったのは学園設立の翌年である1930(昭和5)年のこと。戦時中に研究はいったん中断されますが、1950(昭和25)年に再開されます。当時、日本における昆虫学は害虫駆除のための研究が主でしたが、戦後の食糧不足を補うため、玉川学園では益虫であるミツバチに着目したのです。JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で行うなど最先端の分野に取り組む一方で、K-12でもミツバチの生態を紹介するなど、その活動は多岐にわたっています。この日の親学講座でも、保護者の皆さんはそうした研究の一端に触れることができました。