「社会教育実習」の授業で地域の子供たちに「TAMAリンピック」を企画~省察的実践者を育む学びのプロセス~

2017.10.19

「社会教育実習」では、プロジェクト活動を通して問題解決能力の育成を目指すPBL(Project Based Learning)のアクティブ・ラーニングを取り入れており、毎年、学生が主体的に考えた企画を実施しています。

本年度の学生は、児童館の子供たちを対象に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを意識した「TAMAリンピック」を企画・実施しました。約半年にわたる企画では紆余曲折があり、企画を練り上げるために夏休みにも主体的に集まっていました。そのプロセスは、学生の想像を超える大変なものだったようです。しかし、実習を終えてみると、全力で競技に参加する子供たちの様子や笑顔から達成感を得られたようで、「もう一度実習をやりたい!」と言っていました。

現代的・社会的課題から省察的実践者を育む学びのプロセス

社会教育実習では、課題を教員が設定するのではなく、学生の課題意識を醸成することから始め、社会に開かれた対話的・協働的な学び合い、達成感を得る主体的・実践的な取り組みをし、ラウンドテーブルや実践記録で省察をします。実践を通して対話的・協働的に学びあう省察的実践者を育む学びのプロセスの概要は、次の通りです。

1.課題意識の醸成

本学では、春学期の「社会教育課題研究」と秋学期の「社会教育実習」を繋げて、1年間で実践的に学ぶようになっています。「社会教育課題研究」では、なぜ生涯学習社会が目指されるのか、社会と学びの関係から学び始めたところ、学生は自分たちが新聞を読んでいないことや社会的課題に疎いことに気付き、まず新聞の読み方から学びました。そのうえでそれぞれが社会的課題だと思う新聞記事を持ち寄り、報告をし合ったところ、多様な差別、子供の生育環境の変化、地域コミュニティの希薄化など、身近なところに社会的課題が山積していることに気付くとともに、「大学生にできることは無いのだろうか」と考えるようになりました。

2.社会に開かれた対話的・協働的な学び合い

そのような折に児童館の館長先生より、地域全体で子供を育てることの大切さについてのお話をして頂きました。学生は子供と大学生が楽しく学び合えるような、大学生にしかできない企画をしたいと思うようになり、「TAMAリンピック」を考えました。パラリンピックの競技も織り交ぜたスポーツ大会「TAMAリンピック」で、子供と大学生が楽しく遊ぶことをとおして、パラリンピックへの理解も深めたいと考えたのです。
また、学生は企画のねらいのみならず、企画をとおして「失敗してもへこたれないレジリエンスを培う」、「役割分担の大切さや協働の在り方を学ぶ」、「メンバー同士の信頼関係を築く」という自分たちの目標も定めました。

3.達成感を得る主体的・実践的な取り組み

企画のプロセスでは、話し合いが進まない停滞期もありました。講義の空き時間やE-Learning Systemを活用して、諦めずにアイデアを出し合い、企画を詰めていった結果、「TAMAリンピック」を開催することができました。学生の振り返りには「子供たちだけでなくボランティアの皆もとてもキラキラした表情で、全力で楽しんでいた様子を見て、この企画を立ててよかったと心から思う」と書かれていました。その様子は次のとおりです。

「TAMAリンピック」当日の様子

子供たちに道路を歩く際の注意をしてから児童館を出発
大体育館に到着して、開会式
準備運動
人間知恵の輪

大学生と児童の混合チームでメンバーが協力し合えるように、「人間知恵の輪」でアイスブレイク

児童と学生が一緒に考えている
学生とハイタッチをする児童
暗黒ボール(ゴールボール)

視覚障がいの選手が行う対戦型のチームスポーツ「ゴールボール」を子供でも楽しめるようにしました。目隠しをした子がゴールキーパーとなり、大学生が転がす鈴の入ったボールを捕まえます。鈴の音のみでボールの位置を把握するのは容易なことではありませんが、子供たちは真剣に耳を澄ませていました。

ポンピン(卓球)

卓球のラケット以外でも試合をするというハンディをつけた卓球。

パスケ(バスケットボール)

協力をし合わなければならない特別ルールを設けたバスケットボール。

勝つのはドッチ(ドッチボール)

大学生チームと小学生チームの対決。競技の裏では、各競技の得点を集計。

表彰式

順位の他に「MVP賞」、「真剣だったで賞」、「がんばったで賞」、「笑顔がすてき賞」などの表彰状とメダルを授与。

4.多様な視点から学び合うラウンドテーブル

企画を練り上げるために、学生はシミュレーションやその振り返りを何度も重ねていました。
また、企画実施後には、ボランティアとして参加してくれた学生とともに、ラウンドテーブル形式で、ふり返り会を行いました。実習生は企画のプロセスを通して考えたことを、ボランティアは参加して気づいたことを語り、多様な視点からお互いに学びあっていました。

5.実践記録をまとめ共有する

「社会教育課題研究」の段階から、学生は対話的な学びと省察の共有を繰り返しており、「社会教育実習」を終えた時には、1年間の学びを振り返った実践記録をまとめて報告しあうことにより、自らの学びを省察的に意味付けます。

実習を終えた学生は、「本当にたくさんの方々が関わってくださったおかげで、私たちの企画が成功したのだと思うと、私も誰かのために何か行動をしたいと考えるようになった。この気持ちを学校生活だけでなく社会に出てからも大切にしていきたい」、「人と人がいる以上は、十人十色の考え方があり、同じ考えはないと頭ではわかっているが動き出してみると、その違いが面倒くさいと思ってしまうこともあった。実際に企画を行ってみると、その違いこそが良い考え方を多く取り入れることにつながるので、自分の殻の中に籠るのではなく、しっかりと周りとコミュニケーションをとっていくことを意識していきたい」、「今回の企画では、反省点が多々あった。しかし、失敗から社会性が育まれることも学ぶことができた。今回の反省を生かし『自分が困難に直面した時に周りの人に助けを求めることの社会性』『助け合いの精神を持つことの社会性』『トラブルが起きても臨機応変に対応することの社会性』を十分に発揮して次に活かしたい」、「TAMAリンピックを通し、チームワーク力、リーダーシップ力、企画を実施するための力、互いに認め合い、それぞれが違っていて良いということ、多様な他者と協働する力、人との関係性の大切さを学ぶ事が出来た。これらは社会で生きていくなかでどれも大切な事であって、私にとってとても大きな学びであることは間違いない。このことに気づけたのは振り返りをしていたからということも気づき、振り返りがいかに大切か痛感している」などと、実習報告書に記していました。
実習を指導した中村香教授は、「社会的課題が複雑に絡み合い、何が課題なのか課題の枠組みが見えにくく、唯一の正解があるわけではない時代に、様々な困難を乗り越えて自分らしく生きていくためには、多様な人々と省察的に対話し協働できる力が大事です。今後も地域との連携を図り、主体的・対話的で深い学びとなるアクティブ・ラーニングを行い、省察的実践者を育む学びのプロセスを大事にしていきたいです」と語っていました。