働き方を変えるワーケーションとは。観光学部香取ゼミの学生がジャルパックの方を招いて講演会を開催しました。
観光学部の学部長でもある香取幸一教授のゼミナールでは、10月11日(木)から三週にわたり、旅行や観光に携わる企業や行政の方をお招きし、大学教育棟 2014のアカデミック・スクエアを会場にして、講演を行っていただきました。講師のアポイントや事前準備などを学生が担当。学生たちは、担当した企業や行政の方の講演内容を基に、自分たちで意見や考えをまとめ、学期末にプレゼンテーションを行うことになっています。
第一週にお招きしたのはJALグループの旅行会社、(株)ジャルパックの竹田和弘さんです。ツアー旅行から個人旅行の時代へ。さらにインバウンドの増加など、旅行業界は大きな変革の時期を迎えています。そうした中で、今回竹田さんがテーマとしたのは「ワーケーション」です。会場には香取ゼミの学生だけでなく、観光学部の1年生もやって来ました。
現在のワークスタイルのトレンドとして、オフィスに社員個別のデスクを置かない「フリーアドレス」や、出社せずに自宅などで作業を行う「テレワーク」といった言葉をよく耳にします。「ワーケーション」も、こうしたこれからのワークスタイルを表すトレンドワードの一つ。ワークとバケーションを組み合わせたこの造語は、仕事をする場所を帰省先や観光地にするというもので、テレワークを一歩推し進めた考え方として、最近取り上げられるようになりました。
「旅行先での仕事」にはネガティブな印象もありますが、家族で出かければ子どもたちはレクリエーションを楽しむことができます。また本人も午前中のみ働いて、午後は余暇を楽しむといったフレックスな時間の使い方も可能です。「オフィス以外で働き、なおかつ余暇も満喫できる」と考えれば、ワーケーションもより身近になるのではないでしょうか。
現在、総務省と関係省庁、東京都、そして関係団体が連携し、働き方改革の国民運動を展開。その中で東京オリンピック開催日にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけていますが、今年はその前後五日間を「テレワーク・デイズ」として、テレワークの一斉実施を呼びかけたそうです。
そこでジャルパックでは和歌山県と共同で、この時期のワーケーションを社員向けに企画。和歌山県は空港から近い場所に海や山があり、ワーケーションには最適な環境が整っています。県側も水族館などに依頼して、ワーケーションで訪れた小学生向けのアクティビティを用意。周知期間が短かったこともあり参加人数はそれほど多くはありませんでしたが、複数の社員が家族でのワーケーションを体験したとのこと。そして参加した社員からは、「地域ともしっかりと連携したことで、充実した内容になっていたと思う」といった意見が聞かれたそうです。
この働き方改革は、現在の日本における重要なテーマでもあります。「柔軟な勤務形態の実施比率」という調査によると、97%でトップのブラジルに対して、日本は20%で主要国の中では最低のランクに位置します(Policom社:「Work Anywhere Global Survey(2017)」より)。こうした中、テレワークの一形態としてのワーケーションにも注目が集まっているのです。
特に東京都内にオフィスのある企業にとっては、喫緊の課題があります。それは、世界中から観光客が押し寄せるであろう2020年の東京オリンピック、パラリンピック期間、どのように社員に働いてもらうのかということ。それまでに、より多様な働き方を定着させることが求められているのです。そして多様な働き方が定着すれば、たとえば出産や育児によって仕事をやむなく離れた主婦が、隙間時間を使って働くといったことにもつながっていきます。少子高齢化社会を迎えた日本にとって、こうした働き方は大きな力になることでしょう。
竹田さんの講演の後には質疑応答の時間がありました。「テレワークなど、外で仕事をきちんとしていることを会社にどう証明すればいいのか?」や「注目を集めている民泊とワーケーションのコラボレーションは可能か?」といった具体的な質問が学生から出され、そうした質問一つひとつに、竹田さんも丁寧に答えていました。
この日の竹田さんの講演を基に、学生たちはワーケーションの在り方を考え、今度は竹田さんに提案することになります。この日の講演の事前準備や当日の運営なども担当し、後日提案を行う学生たちに話を聞いてみました。
「企業の方に講演を依頼するといった経験がなかったので、メールの文面や言葉遣いで失礼のないよう、気を遣いました」。 「開催まで1週間と時間があまりない状況で、竹田さんへのアポイントメントや会場の手配、1年生へのアナウンスなどが大変でした」。
「講演の中で日本は柔軟な勤務形態の比率がとても低かったのですが、文化的な違いや、忙しすぎる職場環境などが背景になるのではないかと感じました」。
「これからいろいろと調査を行ってプレゼンテーションに臨みますが、グループで取り組むのでいい案が出るのではないかと思っています」など、さまざまな感想が聞かれました。
「ワーケーションは、まだまだ独立した旅行商品として販売する時期ではないと思います。現状では普通の旅行商品の中に、働くための場所や環境も整っていることを記載する程度が現状です。」と、質疑応答の中でワーケーションの認知・活用促進が課題であることを語った竹田さん。学生らしい発想で、ワーケーションの可能性が広がるような提案をしてもらいたいと思います。