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明治期の博物学から当時の教育を考える。明治150年の今年、教育博物館らしい企画展を開催中。

2018.12.06

2018年は、明治元年(1868年)から数えて満150年にあたります。150年前に新たな時代の第一歩を踏み出したことで、現代につながる国家の様相が形成された日本。私たちの毎日の暮らしの中には、明治を端緒とする事象が今も数多く残されています。教育の分野においても「博物学」という学問分野があり、これが現代の自然科学につながっています。玉川大学教育博物館では明治150年にちなみ、10月29日(月)から2019年1月27日(日)まで、「明治の教育と博物学 こどもたちが学び楽しんだ、自然をめぐるモノづくし」と題した企画展を行っています。この企画展の展示内容について、教育博物館主幹学芸員の柿﨑博孝教授に伺いました。

「明治150年ということで、明治期の教育に関する展覧会を企画しようと考えました。教育博物館は当時の絵図や教科書を数多く所蔵しており、また本学教育学術情報図書館は博物学の源流ともいえる本草学の書物を多数所蔵しています。それらを系統立てて展示することで、当時の教育について紹介したいと思ったのです」と、柿﨑教授は語ります。
この企画展のタイトルにもある「博物学」とは自然界に存在する動物、植物、鉱物などを調査し、その種類、性質、分類などを研究するとともに記録する学問です。博物学という名称は西洋の学問分野「Natural History」を訳したものですが、東洋には古くから主に薬となる自然物を探究する「本草学」という同様の学問分野が存在し、日本でも奈良時代の頃から研究が行われてきました。この本草学の研究は、江戸時代初期に中国・明から『本草綱目』を輸入したことで一気に開花。林羅山や貝原益軒といった儒者も本草学にも関わっていきました。本草学の研究の深まりとともに、西洋の博物学を研究する学者もあらわれるなど、江戸時代は本草学の分野を超えて、幅広く自然に関心を寄せた博物学の時代でした。

この企画展では「博物学とは何か?」を理解するため、本草学に関する書物も数多く展示されていました。
「教育学術情報図書館には博物学に関する書物が数多く残されており、驚かされました」と語る柿﨑教授。
また、図鑑のような絵入りの動物や植物について記した博物学の書物は広く普及して、子供たちも読んでいたとされます。私たちが想像する以上に江戸時代の庶民の識字率は高く、また知識欲も強かったのだということが、このことからも分かります。

江戸時代に確立された博物学は、明治の時代を迎え、近代の学校制度の中に組み込まれます。ただ、当時は生徒一人ひとりに教科書を配布することができません。そこで生まれたのが、皆が一度に見ることのできる「掛図」だったのです。この掛図を使い、当時の教員は動物や植物の名前を子供たちに教えていました。そこには日本語だけでなく、英語での名称も記されていました。また教員自身も見たことがないような動植物も描かれていました。
「このような指導内容の豊富さだけでなく、教科自体もとても多かったことから、当時の教員には多くの苦労があったと思われます。そこで教員向けに作られたのが『小学入門教授法』などの教授書でした。これには当時の指導要領だけでなく、どんな質問にどのように答えるのかがFAQのように記されており、まさに当時の教員必携の書物だったようです」。

その後、博物という科目は物理、化学、生理と統合されていきます。そして誕生したのが、理科という科目なのです。この企画展に展示されている、精緻な描写で描かれた動物の石版画などは、まさに現代の図鑑と同じような役割を果たしていたようです。そして、学校教育に加え、博物館や博覧会事業の中で制作された博物画、家庭で学び、楽しまれた錦絵、雑誌などにも博物学は広がっていきました。明治期の博物学を軸に据え、「本草学から博物学へ、そして理科へ」という、日本における自然科学の流れがよく分かる企画展です。

「この企画展を通して見ると、明治期の子供たちが自然というものをどのように学び、楽しんだのかということがよく分かると思います。また2019年にはイギリスの博物学者ジョン・グールドの鳥類図譜に関する特別展を行う予定ですが、その比較対象として日本の博物学を考えるよい機会にもなっていると思います。展示会場の入口には、SNS映えするフォトジェニックスポットもご用意して、皆さんをお待ちしています」と柿﨑教授。展示だけでなく、小学生を対象に和綴じで和装本風ノートを製作する体験講座や、構内で春の七草を巡る観察会なども行います。ぜひ一度、足をお運びください。

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