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国際バカロレア機構と初の共催!「国際バカロレア教育フォーラム2018」

2018.12.07

11月17日(土)に国際バカロレア(IB)機構と玉川大学学術研究所が初めて共催した「国際バカロレア教育フォーラム2018」が玉川学園を会場に開かれました。これまで玉川大学主催で10回開かれてきましたが、今回は初の共催とあり約300人が参加し熱気あるフォーラムとなりました。

日本に広がってきたIB教育の輪と理解

2018年はIB誕生からちょうど50周年の記念の年。50年に渡り21世紀に活躍できる3〜19歳の若者を育てる教育プログラムを開発、提供してきたIBですが、近年は日本での理解や興味もさらに高まってきています。今回のフォーラムは、日本の教育関係者とIBの探究学習、協働学習、概念を中心とした学習の優良実践を共有し、互いに学ぶ場として開催されました。

IB機構の日本担当地域開発マネージャーを務める本学大学院の教育学研究科の星野あゆみ教授が中心となり、日本の教育の特色も生かしたIB教育について様々な視点から一緒に参加者が考えられるようにと準備してきました。
「今回は、初めての共催ということもあり、基調講演やIB教育を実施している学校の先生方の発表に加えて模擬授業や生徒のプレゼンテーションなど実践により触れていただけるような機会を提供しました。これまではすでにIB教育を実施している学校の参加が多かったのですが、ここ数年で新たにIBに興味を持っている学校が多く参加してくれるようになり、今年も導入に関心をもつ小学校や幼稚園の先生方もいらっしゃっています。



日本語でのIBの情報提供が少ないこと、またインターの先生方には日本の学習指導要領について知っていただく機会にもなりますので、日英の同時通訳をつけたバイリンガルでの開催です。このフォーラムでの“対話的で深い学び”はまさにIBの考え方と合ったものになっています」と今回の意気込みを話してくれました。

最初に挨拶に立ったIB機構アジア太平洋地域開発担当のステファニー・レオングさんは、
「IB教育がより良い世界を生み出せることを知っている人々が集い、とても嬉しいです。人生を通して学ぶというIB教育の人物像を、まさに体現し、良い学びの機会となるでしょう」とメッセージを送りました。
また、玉川大学学術研究所の大森隆司所長は、
「当初IBとは何かからスタートした日々を思い出しますが、玉川でもMYP、DPコースを作り取り組むに従いさらにこれこそ本来あるべき教育の姿ではないかという思いを強くしています。今では興味を持つ学校も増え、今後のIB教育者の人材育成も課題になっています。玉川の12の信条の一つである“自学自律”は、IBの精神とも共通します。生涯に渡って教育するとは何かを考える機会になることを願っています」と話しました。
そして、文部科学省の大臣官房国際課国際協力企画室の原田大地室長が壇上に上がり、なぜ日本政府がIBを政策として推進しているのかという理由を解説しました。
「人間の暮らしが利便性の高いSociety5.0*へと進む中で、人間がどんな価値を創造できるのかがAI、ビックデータに使われるのではなく、それらを使いこなせるかに関わってきます。IBは日本の教育に多様性と活性化をもたらすと期待しています。今後、国内で200校以上の普及を目指して取り組んでいきます」と、語りました。

  • サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
    <内閣府ホームページより抜粋>

新学習指導要領とIBが目指す教育の共通点

フォーラムはまず2つの基調講演から始まりました。
最初は、文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室の白井俊室長が、「2030年の社会で価値のある競争力とカリキュラム」というテーマで、これまでの世界における日本の教育の位置付けやこれから導入される新学習指導要領の方向性について話しました。
OECD(経済協力開発機構)に出向していた経験も持つ白井室長は、OECDの2030 “Learning framework”の中で掲げられている「知識、スキル、学習の価値や姿勢」といったものが能力として必要になり、知識をきちんと使いこなす能力が求められていることに触れました。これから導入される新学習指導要領のメーンとなる考え方がまさにそれと重なる部分が多く、1)知識と技能、2)思考力や判断力、3)人間性や学習する動機を大事に育てて行くカリキュラムになっていることを強調しました。また、アクティブ・ラーニングは、教師側の教育経験や生徒を理解するための専門知識が重要であると語りました。これは、IBとも共通した「能動的学習者」であることですが、それは生徒側も教師側もその姿勢が重要であると話しました。

続いて、東洋大学の後藤顕一教授が「IBが日本の化学教育にもたらすもの」について、IBと日本の新学習指導要領の教育の共通点を、化学の科目を例に挙げて発表しました。
IBの教育のキーワードは“一貫と一体”であると後藤教授は指摘し、それは学習が世界や地域、自分の身の回りのことなどと繋がって構成されていることや、「社会に開かれた教育課程である」こととし、これは新学習指導要領が目指すところでもあるそうです。そして、他にも、学習者の望ましい人物像や全人教育の必要性は、ともに重視されていると共通点をあげました。
新学習指導要領では、小学校では「思考の核、思考の要素を明確にする」、中学校では「探究の核、探究の要素を学ぶ」、高校ではさらにそれらを使いこなすことを学習で学ぶことの核であり、そこに至るまでも各学年、各教科ごとにどんな力を養っていきたいかということが具体的に設定された上でカリキュラムが組まれていることを明らかにしました。特に化学では、「『なぜ?』に答える構成」と「日常との繋がり」を重視して組まれたそうです。実際にIBの研修も受けた経験のある後藤教授は、「IBには各学問の本質や哲学が含まれており、学びをデザインする要素を明確にしている卓越した教育カリキュラムであることに驚かされます」と話しました。AIやデータが膨大になっていくこれからの社会でも、AIに使われず、AIをいかに道具として使いこなすかは、「飽くなき挑戦、探究と改善、究極の場面での判断力、感覚や直感」といった人間にしかできないことを大事にしていくことであると語りました。

模擬授業や学生プレゼンなど、より実践的なIBの学びへ

昼食休憩を挟み、午後からは分科会となり、IBを実践する国内の様々な学校の先生の発表や模擬授業などが行われました。日本の一条校では札幌、仙台、横浜、東京、高知など各所から実践例が集まり、探究学習、協働学習、概念理解学習など分野に分かれての実践の共有が行われました。また、国内のインターナショナルスクールの先生方からも実践例がバイリンガルで発表されました。
玉川大学からは大学院のIB教員養成コースの院生による発表やMYPの生徒のパーソナル・プロジェクト発表、DP生による学校生活の発表がありました。他にもステファニー・レオングさんや星野教授によるIB認定までの説明のブースなどもあり、これから導入を検討している学校などが訪れて熱心に話を聞きました。
フォーラム中も終了後も、情報交換をしたりお互いに学び合う参加者の姿が見られた、活気あるフォーラムとなり、さらなるIBの広がりを期待させてくれました。

「概念理解学習へのマインドセットの転換」発表
「岡山理科大学でのIB教員養成コースを履修する学生の意識調査」発表
「MYP音楽における探究の指導と学習」
発表
「MYPの教室内における概念理解につながる要素・きっかけについての考察」
発表
「公立学校におけるDPとMYPの導入―カナダ、アルバータの例から学ぶ」
発表
「玉川学園MYPパーソナル・プロジェクト」発表

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