町田市で避難生活を送る東日本大震災の被災者をお招きし、教育学部臨床心理学ゼミによる講演会が開催されました。

2019.03.01

12月13日(木)、玉川大学教育学部臨床心理学ゼミ主催の特別講演会「『東日本大震災を経験した方からのメッセージ』 —経験者と支援者 2つの立場を通してー」が開催されました。講演を行ったのは自分も被災者でありながら被災者支援に取り組んでいる木幡四郎さんと武田恒男さんです。

臨床心理学ゼミを主宰する原田眞理教授が木幡さんと出会ったのは2013年のこと。震災直後から被災者支援を行ってきた原田先生ですが、被災者を支援する集まりに個別心理相談者として参加した際に、在京避難者として町田市で暮らしている木幡さんと出会ったそうです。以来、避難者のサロンでの心理相談などを担当すると同時に、ゼミの活動として福島県川内小学校での学習支援なども実施してきました。こうしたつながりから、今回の講演会が実現。原田ゼミだけでなく、近藤洋子教授が主宰する「子どものwell-beingゼミ」の学生と中村香教授が主宰する「生涯学習ゼミ」の学生も参加。さらに木幡さんや武田さんと一緒に避難生活を送る皆さんも来場し、非常に賑やかな会となりました。

最初に登壇したのは木幡さんです。木幡さんはニュースでもよく耳にする福島県双葉郡の浪江町出身。自宅は事故のあった東京電力福島第一原子力発電所から約8キロということもあり、震災以来、自宅を離れての避難生活が続いています。8ヶ所の仮設住宅などを転々として、現在町田市にお住まいとのこと。「避難生活では、町田市のロータリークラブや社会福祉協議会、県人会の方々に非常にお世話になりました。けれどもいつまでも助けられているのではなく、自分たちで何かをしよう、お互いに助け合おうという気持ちが高まっていきました」と木幡さん。そこでまず立ち上げたのが東北の絆サロンFMI会でした。これはF(福島)、M(宮城)、I(岩手)の頭文字を取って名付けられた会で、町田市在住の避難生活者約80名で構成されました。避難当時は学校でのいじめ問題などもありましたが、町田市の子供と一緒に蕎麦打ち体験やハイキングも行い、親睦を深めることでいじめはなくなったそうです。また自分たちで作ったものを市役所内で販売し、その売上を社会福祉協議会へ寄附するといったことも行いました。

「当初は一人では外出もできなかったFMI会のメンバーも、皆が自立し、さまざまなイベントに参加するようになりました。そこでFMI会は解散し、新たにふるさとを想う会を立ち上げたのです」。この会では浪江町のために何ができるかを考えているという木幡さん。浪江町の小中学校は現在休校中であることから校歌が歌われていないため、その校歌を通じてつながりを持とうという活動を行っているそうです。「平成に入ってから震災が各地で起きています。どこで被災した人と話をしても、何も持たずに逃げたと聞きます。皆さんは万が一災害に遭った時のために、何を持って逃げるかを事前に考えてほしいと思っています」というメッセージで木幡さんの講演は終わりました。

次に武田さんが登壇しました。武田さんは岩手県陸前高田市の出身。震災当日から1ヵ月にわたって写真を撮り続けたそうで、その中から震災当日と翌日の写真を見せてくれました。「避難所にも遺体が並べられ、援助物資が届くまで3週間近くかかるなど、想像を絶する状況でした。そうしたこともあり、4月には町田市に移ってきました」と武田さん。震災に遭ったことで思わぬ人から助けられたりしたことも多く、日頃から人には親切にしておくべきと考えるようになったそうです。「学生ボランティアの方たちが本当にたくさん東北にやって来ました。そのときに、『日本は大丈夫』と思いましたよ」。現在は木幡さんと一緒に活動するほか、地元の陸前高田市を舞台にした映画の上映会や、ウォーキングのイベントを開催するなど、精力的に活動しています。

お二人の講演が終了すると、学生からさまざまな質問が寄せられました。「お二人の行動力の源泉は?」、「津波が押し寄せたときの写真を見せていただきましたが、今の静かな海を見てどう感じますか?」といった質問に、お二人は丁寧に答えていました。また講演でも触れられた「もし何か持って逃げるなら、何を選びますか?」という問いに木幡さんは「まずは食べ物を持って逃げるべきですね。私はたまたまマスクなども持っていたので、別の方とカイロと交換しました。ほかにも灯りなどがあるといいですね。」と答えてくれました。武田さんは「持病のある方は自分で飲んでいる薬を証明できるものがないので、お薬手帳を小さくコピーして準備しておくといいですね。」とお話くださいました。

また、この日は最後にグループディスカッションも実施。学生が4、5人のグループになり、「被災者に対して学生に何ができるのか」を話し合いました。学生からは「物資の提供や募金も大切だが、まず忘れないことが重要。教員志望なので子供たちに伝えていきたい(近藤ゼミの学生)」、「募金などのためにイベントを企画したい。震災にフォーカスするだけでなく、楽しさも感じられることが大事だと思う(原田ゼミの学生)」、「教員となった際に、行動力や判断力が大事であることを子供たちに伝えていきたい(中村ゼミの学生)」といった意見が聞かれました。

東日本大震災から間もなく8年になりますが、木幡さんや武田さんのように県外で避難生活を送る被災者の方々は少なくありません。また東日本大震災以降も多くの災害が起こり、同様の避難生活を送っている方々は全国に存在します。この日の講演会は、学生にとって震災やその後の生活についての話を聞自らのこととして考え、今後自分たちの力を発揮していくことを考えるなど、聞くという能動的だけでなく、学生が発信する原動力となる貴重な機会となりました。