玉川学園K-12の施設「スターレックドーム」にて、玉川大学芸術学部メディア・デザイン学科学生によるドーム映像作品の上映会を開催しました

2019.03.13

玉川大学芸術学部メディア・デザイン学科では、映像作家であり本学部非常勤講師を務める飯田将茂氏による、授業「光・空間演出」を2018年度よりスタートさせました。春学期の「光・空間演出Ⅰ」の応用として、秋学期の「光・空間演出Ⅱ」で制作した作品の発表を1月24日に、玉川学園K-12の施設「スターレックドーム」で関係者を招き、開催しました。

キャンパス内サイテックセンターに隣接する「スターレックドーム」は、直径12メートルのドームにプラネタリウムを備えた、学校所有としては国内最大級の施設です。利用者は年間約6千人、2005年のオープン以来の延べ利用者数は5万人を超えるとされています。2015年には2台目となる投映機を導入。これは、単眼では世界初となる8K解像度映像(直径4800ピクセルの円形映像)で、諧調性豊かで高精細な投映を可能とした、当時最新の投映機を導入しています。理科の授業での使用だけでなく、生徒も操作し宇宙を身近に感じる場として活躍しています。また近年は、周囲360度というドームの特殊な空間を活かして、ドームの形状に合わせた映像作品を上映する機会を設けるなど、プラネタリウムの新たな活用方法を模索しています。

飯田将茂非常勤講師による授業は、VR(Virtual Reality:仮想現実)をはじめ映像技術の発達とともに映像表現がさまざまな形で展開を見せる中、没入型の映像体験を可能にしたドーム映像作品の制作に取り組み、本施設を活用しています。通常は星空を眺めるプラネタリウムの新たな一面として、授業で学生たちが制作した、手探りながらも自由な映像表現を、ゲストに株式会社NHKエンタープライズ・澤田隆司氏、株式会社ネイキッド・平原真氏を迎え、小原芳明玉川学園理事長・玉川大学学長をはじめとする学園関係者とともに鑑賞しました。

上映に先だち、司会役の玉川大学芸術学部メディア・デザイン学科の橋本順一教授から上映会の趣旨説明、ゲストや玉川学園関係者の紹介、玉川学園マルチメディアリソースセンター(MMRC)の藤樫大二郎センター長からスターレックドームについて紹介がありました。授業の紹介は飯田非常勤講師が自らドーム映像に登場して解説。鑑賞のためにリクライニングした観客に顔のアップで迫り、ドーム空間ならではの映像の面白さの一端を感じさせてくれる演出でした。

橋本教授
藤樫センター長
飯田非常勤講師による紹介映像

プラネタリウムの新たな可能性を探る、チャレンジングなドーム映像作品の上映

「光・空間演出Ⅱ」を受講する学生は41名で、8グループに分かれてそれぞれのテーマで作品を制作しています。作品上映ごとに、グループの代表者が制作について説明し、飯田非常勤講師が批評しました。

「すする」(3分) 2年生5名による作品

「食べる」行為は、見ている側が「お腹が空いたな」と共感したり、「嫌だな」と思ったり、特別な感覚を与える行為です。その本能的な「すする」という行為に着目しました。観客からは見上げる形になるので、「食べる」行為自体が儀式のような印象を与えるのも面白いと考え作品にしました。(2年 田中さん)

非常に良いところに目をつけています。「食べる」行為を巨大化することで抽象化されつつ、食べているのがカップラーメンというチープさとのギャップも良い具合に働いていると思います。

「TOKYO」(3分) 2年生5名による作品

ドームに何を映したら、一番きれいに見えるかを検討した結果、東京の夜景を映したら、きれいに見えるかと考えました。夜景を映して主観で見てもらうだけでは面白くないので、都会に憧れる主人公が、何らかのきっかけで都会に迷い込むストーリーにし、その様子を主人公と同じ視点で一緒に味わってもらえるよう制作しました。音楽は自分たちで曲を作り、アップテンポな箇所では映像を早送りにするなど、迷い込んだ不思議な感覚を出せるよう工夫しました。(2年 千葉さん)

東京に迷い込んだ不思議な感覚というのを、手振れのシーンなどを使って表していますが、とても良い具合に働いて、幻想的な作品になったと思います。

「うごめく」(4分) 2年生5名による作品

魚介類や爬虫類の餌になる「ジャイアントミルワーム」を大量に購入し、それらが蠢いている様子を撮影しました。ドームの空間を利用して、昆虫の自然な生態を見ることができると考えて制作しました。蠢いている際に発生する音も強調したかったので、音だけ録音しています。見てくださった皆さんが、気持ち悪く感じたとしたならば、たいへん申し訳ないです…(2年 和泉さん)

大量の芋虫が登場するため、上映に際して、「苦手な方は心の準備を」と注意喚起しましたが、かなり刺激的な作品でした。しかし、普段見ることのできないミクロの世界をドームにデカデカと映すことで、気持ちの悪さの中にも、「神聖さ」「神々しさ」も見て取れるのではないかと思います。

「El fondo del mar(エル・フォンド・デル・マー)」(4分)
4年生4名、2年生2名による作品

タイトルはスペイン語で、日本語訳では「海の底」。水面を見上げた構図をイメージした切り絵作品の制作過程を、最初から最後まで撮影した作品です。切り絵作品の実物は、一辺が20センチ大の小さなものです。制作する過程の細かいところまで巨大なドーム空間に映して、観客の皆さんと共有できるように制作しました。編集でこだわった点は、切る作業も観てもらえるよう回転に加えたところです。(4年 岡村さん、2年 浅賀さん)

実物の切り絵作品も用意していただいたので、その精緻さをご覧いただけたと思います。水面を見上げた時に入ってくる光は卓上照明だということですが、神秘的な太陽の光のように感じました。ミクロの視点がマクロになる、というところから感じられるドーム映像の魅力がふんだんに詰まった作品です。

「宇宙の旅」(4分) 3年生2名、2年生3名による作品

ラジコンにカメラを取り付け、操作した映像作品です。教室を暗くして、サイリウムなどのペンライトを並べたり、椅子の脚などに取り付け、宇宙空間をイメージしています。ラジコン操作は思ったよりも難しく、いろいろな所にぶつかってしまったのは、想定外でした。廊下で撮影したシーンは、宇宙船をイメージして色味を反転させ、宇宙空間の中に取り込みました。屋外のシーンは惑星を走っているイメージで、同様に色を反転さています。(3年 井上さん)

ラジコン操作のたどたどしさ、壁にぶつかりまくっているのも、宇宙生活での困難さを感じさせるものだと思います。

「アルミホイルによる習作1」(5分) 4年生5名による作品

アルミホイルの素材と、アルミホイルから生じる音といった、テクスチャーにこだわった作品です。3Dのような模様に見えますが、アルミホイルとライトのみで描き出された模様です。アルミホイルにライトが反射し、模様が幾重にも重なってきれいに見えるという、ドーム映像を意識して制作しました。BGMは敢えてつけず、素材の音、パリパリした音にこだわり、改めて録音しました。きれいに見える絵面を意識して制作しています。(4年 木本さん)

ずっと見ていると、アルミホイルが有機的な生物、あるいは我々がある生き物の内側に入り込んだような錯覚させる面白さがあります。シンプルながら力強い作品でした。

「カモンベイベーオリンピック」(2分) 4年生5名による作品

作品の冒頭に、ゴルフしているおじいちゃんやサーフィンの様子が出てきますが、オリンピックに採用されている種目を表しています。途中に東日本大震災のシーンを入れました。東京オリンピックの開催で国民が盛り上がっていると、メディアが報道しています。表舞台の一方で、被災地での現状など未解決の問題はいまだに継続してあるにも関わらず、メディアは3月11日の震災当日だけ大々的に取り上げています。「これは、いったい何なのだろう」という思いを表現したくて制作した作品です。(4年 目黒さん)

一見、お祭りのようなイメージの作品ですが、とても重いメッセージが込められています。ドーム空間という没入感を利用して、通常の映像とは異なる伝え方、力が可能になると考えています。

「死神」(3分) 4年生5名による作品

古典落語の「死神」からインスピレーションを得て制作しました。私が初めて「死神」を聞いた時、噺家さんの滑稽なオチにも関わらず、自分の命が目の前で消えるのは怖い、と感じました。その時の印象を映像にした作品です。こだわったのは音で、後から録音しています。ドームの空間を活かせるように、外まで世界が広がっていると感じられるように、ウェット気味に音をつけています。学生時代の最後の作品で、とても思い入れがあります。(4年 山下さん)

独特の緊張感がある作品です。ろうそくのゆらめき、最後の一灯がなかなか消えず、足音が聞こえてくるところの演出など、かなり凝っています。

学生が制作した8作品の上映後に、飯田非常勤講師は次のようにコメントしました。
「粗い部分はありますが、実験的でチャレンジングな作品が多々あったと思います。通常星を見るというプラネタリウムで、学生たちはここで何ができるのかと、悪戦苦闘し、試行錯誤を繰り返して作品を作りました。ドームの可能性を、学生たちの作品から感じ取っていただけたらいいなと思います」

粗削りでも自由な発想の学生の作品群に、高い評価をいただく

さて、次は講師作品として、飯田非常勤講師の先生の作品、「巨人と体操」(13分)です。ドーム映像に巨人となった飯田氏が登場し、観客と一緒にラジオ体操をします。リズムは非常にゆっくりで、観客自身も巨人に、あるいは小人になったかのような、身体の拡張を感じられる作品です。

最後に特別上映として、ドーム映像作家である馬場ふさこ氏の作品「Hidden Garden」を上映しました。馬場氏は、北海道を拠点に活動しており、国外のドーム映像のフェスティバルで作品を発表し、受賞歴多数の気鋭の作家です。飯田非常勤講師は、「馬場さんの作品は、神秘的な世界観がドーム空間とマッチし、日常を超えて精神的な世界を鮮やかに描き出しています。この上映会の最後にふさわしい作品です」と紹介しました。蓮華や美しい模様のすばらしい映像世界に、まさに「没入」し、宇宙空間を浮遊しているような感覚を抱きました。

上映後に、飯田非常勤講師は次のように挨拶しました。
「この授業では、ドーム映像の作品を、全く経験のない学生たちと創るために、手探りで始めました。学生たちも戸惑っていましたが、ドーム空間の特性を捉えて、実験的な作品が出来上がったと思っています。また、ドーム映像は馬場さんの作品もそうでしたが、CGを使った表現が主流です。CGは技術が必要であるため、授業では学生たちはアナログな手法で向き合いました。それは逆に、アイデア次第で面白い表現ができると考え、授業の中で繰り返し議論しながらチャレンジングな試みをしたと思っています。今回の上映会は、『Vol.1』と付けていますので、今後もぜひとも上映会を続けたいと思っています。ぜひお運びください。本日は、ありがとうございました」

橋本教授は、「悩みながら創った、というのが良くわかる作品で、とても面白かったと思います。ドーム映像の面白さは、自分の縮尺が小人になったり巨人になったりするのが面白く、平面のスクリーンでは表せない、ドームならではの映像表現ができたのはないでしょうか」と、評しました。

  • また、ゲストのお二人からも作品に対する講評をいただきました。

  • 株式会社ネイキッド・平原氏

    「非常に面白く、良かったと思う点は、映像という枠組みに収まらずに、このドーム空間や音響装置を含めたいろいろなものを、さまざまな角度で見ているのが、作品から感じられたことです。わが社はメディアアートという分野でも仕事をしており、2012年の東京駅駅舎のプロジェクションマッピングを手がけ、革命的な試みだと注目されました。プロジェクションマッピングは、もはや新しい物ではなくなり、私たちは『イマーシブ』を次のキーワードにして、模索しています。『イマーシブ』とは何なのかが、学生さんたちの作品に表れていたと思います。それにしても、学校にドーム空間があるというのは、恵まれていて、うらやましいです。次の作品を楽しみにしています」

    株式会社NHKエンタープライズ・澤田氏

    「我々はテレビという枠の中で作品を制作していますが、学生さんたちは自由に創っていますね。私たちの中では、ありえないような構図がいくつか見られました。たとえば、横テロップは通常右から左へ流れるのですが、学生さんの作品では左から右へ流れており、こういったやり方もあるのだと思いました。テレビ作品は1つの枠の中で構図を創りますが、ドーム映像では目線をどこに持っていくか、非常に重要なのだと気づかされました。今回は実験的な映像でしたが、短編のドラマを創ることもできるでしょう。報道でもいいですね。ストーリーのある3分、5分のドラマに、ぜひチャレンジしてほしいと思います。同時に、現代の社会には、映像表現をする場がたくさんあります。社会人として、そういった分野にぜひ進んでほしいと願っています」

最後に、小原学長からの挨拶がありました。

「人間にとって開拓すべき分野は二つあり、一つは脳、もう一つは宇宙です。本学には脳科学研究所があり、また中学校舎を設計する際に、宇宙に関わる施設は何か建てられないかと、たまたまミノルタのデジタル機器を作ったというニュースが入り、学校でもぜひ持とうと、このプラネタリウム施設を作りました。今から13年前、デジタルプラネタリウムとして世界最大規模でした。ここで宇宙への関心を持ってもらうためにいろいろと実践していますが、今回の上映会で、もう一つ開拓する研究分野があったのだと思いました。また、ドーム映像を鑑賞して気づいたのが、通常、私たちは見ているものは天地左右が決まっていて、視覚から入る情報を受ける脳も、天地左右が定まっているものの中で処理しています。ドーム映像は、リクライニングして見ることで、天地左右の意識が薄れ、通常とは異なる感覚をもちました。これから学生諸君のやることは、自分たちが計画したものが出来上がって良かった、で終わるのではなく、自分が意図したことを見る側はどう解釈してくれるだろうか、という所まで調べて評価につなげてほしいと考えています。極めるのであれば、天地左右の意識が薄れている観客が、どう感じているか、そこまで調べてほしい。それによって何をすべきか、という課題が抽出され、フルドーム映像の改善へとつながっていくと思います。これからも研究、学修を積極的に続けてほしいと思っています。」

玉川の丘が、「ドーム映像」という新たな文化の発信基地に

上映会の閉幕後、作品制作に関わった学生2人と飯田非常勤講師に話を聞きました。

「すする」田中大賀さん

「面白い授業はないかと探していた時に、ドーム映像の授業を選択し、見事にはまりました。非常に面白く、映像の知識がなくても、発想次第で、可能性は未知数の領域だと思いました。『すする』は、アナログ的な部分に面白さを見出しました。ドーム映像という芸術分野なので、グロテスクで生々しい感じを表現しつつも、そこに美しさを追究したいと思いました。ゲストの方から『次回作はドラマを』とアドバイスをいただいたので、もう少し踏み込んで作品を創ってみたいと思いました」

「El fondo del mar」岡村風香さん

「大きい空間に自分の作品を映す機会がなかったので、不思議な感じでしたが、とてもうれしかったです。実物はとても小さいのですが、ドーム映像を意識すると、広い空間を作るような感覚になり、作り出したらとても面白く創作できました。映像も編集も経験がなく、自分にできることは切り絵だけでしたが、このようなすばらしい映像にしてくれたメンバーに感謝しています」

飯田非常勤講師

「ドーム映像では、試写用のモニター画面は小さいので、実際の空間でどのように映るか、創造力との闘いの連続です。いかにドームの空間を意識するか、その点はドーム映像専門家でも苦労しますが、専門家ではないからこそ、学生は斬新にこの空間に向き合えることができたのではないかと思います。ドーム映像そのものが新しいジャンルで、映画とは異なる新たな文化を作ることができればと考えています。大学というアカデミックな場所で先端的な活動ができるのは、玉川大学ならではの特殊性だと思いますし、ここを拠点としてドーム映像を盛り上げて、新しい文化を作ることができればと考えています」

学生作品によるドーム映像の上映会は、実験的でしたが、プラネタリウム活用の可能性を大きく開いたイベントになりました。学生たちの新しい分野への意欲の高まりもひしひしと感じられ、飯田非常勤講師の話すように、玉川の丘が新たな文化発信基地になる日が近いと思えるひとときでした。次回、「「TAMAGAWA FULLDOME NIGHT Vol.2」の開催に期待が寄せられます。