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舞台を通して社会を知る。パフォーミング・アーツ学科の学生たちが取り組む演劇実習公演の魅力とは?

2019.03.07

玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科では、春学期と秋学期の年2回、全学年の学生が参加して演劇公演を行っています。特に秋学期公演は4年生にとって学生生活最後の舞台であり、集大成ともいえるものです。2018年度の秋学期公演は川村毅作『エフェメラル・エレメンツ』に挑戦。12月21日(金)~25日(火)に、3号館の演劇スタジオで6回の公演が行われました。今回の公演について、指導を担当し演出も行った多和田真太良助教に話を聞きました。

『エフェメラル・エレメンツ』は川村毅氏が2017年に書き下ろし、まだ川村氏の新作プロデュースカンパニー「ティーファクトリー」で初演されたばかりの作品です。「この戯曲は、地震で壊れた原子力発電所の廃炉作業に、AI(人工知能)を搭載したヒューマノイド(ロボット)が活躍する近未来が舞台。そうした世界で、感情を持ち始めるロボットと心を失っていく人間の対立を軸に物語が進んでいきます。震災、原発、AI、ロボット、外国人労働者など、現代社会におけるさまざまな問題にも触れる内容でもあるため、今回取り上げました」と多和田先生。セリフの中に原発やロボットに関する専門用語が数多く出てくるため、学生たちは戯曲をより深く理解するためにリサーチし、発表することからスタート。「パフォーミング・アーツ学科の大きな特徴といえるのが、総合大学の中にある点です。今回であれば、AIや認知科学といった戯曲の重要な要素について深く研究されている方が、同じキャンパス内にいらっしゃるわけです」。そこで工学部教授で人工知能研究がご専門の大森隆司教授にパンフレットへの寄稿をお願いしたり、お話を伺ったり、学術研究所先端知能・ロボット研究センター主任の岡田浩之教授のラボを見学させてもらいました。こうして戯曲が描く世界を理解した上で演者はホン読みや立ち稽古を行い、スタッフは舞台の設計・デザインなどを進めていきます。「玉川の実習公演では演者もスタッフ部署に所属し、全員が一丸となって舞台づくりを行います。舞台装置や衣裳まで、戯曲の世界観と合致するものにするため、意見を交わしていきます」。最近の学生は意見が対立しそうになると、議論をせずに上手くかわそうとする、と語る多和田先生。「けれども議論をせずに異なるイメージを持ったままだと、舞台は成立しません。会議や稽古を重ねるうちに、学生たちも自然と意見を闘わせるようになります」。こうした経験は、舞台を離れても役立つことでしょう。

これらの過程を経て公演日を迎えた今回の秋学期公演ですが、幾つかの偶然が重なり、公演内容をより豊かなものにしてくれました。大学図書館の職員が川村氏の高校時代の後輩で、一緒に舞台に立った経験があるという縁があったり、同時期に日本大学芸術学部の実習公演で川村氏の名作『大市民』を川村氏自身が演出を務めていて「競演」になったこともあり、川村氏が千穐楽(最終日)に駆け付けてくれました。「若者に向けて書いたこの戯曲が若者の手によって上演されることは非常に嬉しい」とメッセージをいただくことができました。「もう一つの偶然は、稽古期間中に、かつて原子力研究開発機構に所属し、原発廃炉ロボットの開発者だった岡潔先生と出会ったことです」と多和田先生。そこで公演後に、岡田先生と岡先生にパネリストとして参加していただき、ポストトークを開催。「今回の戯曲の内容に即したお話をしてくださったので、公演をご覧になった方からはとても好評でした。また学生も全員が岡田先生のラボを見学できたわけではないので、実際のお話を聞くことができて良かったと思います」。

パフォーミング・アーツ学科で行われる演劇の良さについて、「学年を越え、学科として公演に取り組むことができる点」と、「各分野の指導者にプロの演劇人がおり、直接指導を受けられる点」を挙げた多和田先生。多くの人気舞台の舞台美術を手がける二村周作先生をはじめ、現役の演劇人が指導・監修に名を連ねており、学生にとっても彼らと一緒に舞台を作り上げた経験は大きな財産となります。その上で多和田先生は、「大学教育ですから技術だけを身につけるのではなく、その背景にある考え方を学ぶことが重要だと思っています」と語ってくれました。「4年生の中には、卒業後に大手の劇団に所属する学生もいますが、多くの学生は一般企業に勤めることになります。ただ、演劇公演を創り上げるためにそれぞれの立場で経験した『どう話せばどのように相手に伝わるのか』といったスキルは、社会に出ても活かせるはず。演者はもちろん、大人数の中で自分の役割を果たしたスタッフたちも、そのスキルが身についたのではないでしょうか」。学年を越えた100名以上の学生が、意見をぶつけ合いながら一つの作品を作り上げていく実習公演。パフォーミング・アーツ学科での学びの集大成ともいえる舞台公演を終え、学生たちは一回りも二回りも大きく成長したことでしょう。

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