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玉川大学独自の「ESTEAM教育」を推進する新しい教育プログラム「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業」スタート!

2019.04.24

2019年度春学期より、玉川大学のカリキュラムに新しく「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(以下、PBL授業)」が開講されました。

2020年春には科学技術と芸術の融合をめざす玉川独自の"ESTEAM※1教育"の拠点となる新校舎「STREAM※2 Hall 2019」が利用開始となります。PBL授業は、その完成に先駈けて、2019年度春学期の9・10限に合計15回の授業を開講。工学部・農学部・芸術学部の学生がそれぞれの専門分野の垣根を越えたチームで協働し、「学部融合によるモノづくり」によって“玉川大学の未来”に関する課題に取り組んでいくというこれまでにないタイプの授業です。

  • 1ESTEAM:ELF,Science,Technology,Engineering, Arts,Mathematics
  • 2Science,Technology, Robotics, Engineering, Arts,Mathematics
STREAM Hall 2019
*2020年3月竣功、同年4月から利用開始

第1回はPBL授業全体のファシリテーターを務める小酒井正和工学部教授が担当し、課題の発表と学生のグループ分けを発表。2回目から12回目までは3学部の教員がそれぞれの専門分野について交代で担当するオムニバス講義(約50〜60分)+課題に向けたワークショップ(約30分/小酒井教授が担当)という形で進行します。そしてグループごとの課題発表に向けたワークショップを13回目と14回目の2回にわたって実施し、最後の15回目では学外の識者も加えた審査員へのプレゼンテーションとその講評を行います。
小酒井教授は「私たち教員にとっても初めての試みなので、緊張感をもって授業に臨んでいます。学生たちには他学部の学生に刺激されながらのモノづくりを楽しんでほしい。学生たちがユニークなアイデアをどんどん出してくれるように、15回の授業をとおして盛り上げ役として声援を送り続けたいと思っています」と授業に向けた抱負を語ってくれました。

今回は、PBL授業のイントロダクションとなった4月3日と10日に行われた2回の授業について紹介します。

4月3日

第1回「デザイン・シンキングができる経営戦略プランナーになろう」

小酒井正和工学部教授

第1回目の授業のために大学教育棟講義室に集まった30人余りの学生は、異分野の学生とともに学ぶ期待と不安の入り交じった表情で授業の開始を待っていました。そこに小酒井教授がさっそうと登壇。経営コンサルタント、エンジニア、クリエーターなど自らの分野横断的な活動を紹介しつつ、「デザイン・シンキングができる経営戦略プランナーになろう」というテーマの講義がスタートしました。

デザイン・シンキングとは、「1.共感」「2.問題定義」「3.発想」「4.プロトタイプ」「5.精査(淘汰)」のサイクルを繰り返すことで、めざすイメージに近づいていくイノベーションを起こすための思考方法、正解が用意されていない問題の解決、まだ見たことがないモノを生み出すための方法論で、今後、学生たちが課題に取り組むにあたってはこの考え方が基本となります。
小酒井教授はこれからの社会で「新しいモノを創り出すことが生き残っていくために必要不可欠。全人教育の考え方に根ざして、玉川大学の新しい価値の創出をめざしていこう」と学生たちを励まします。
そしてPBL授業を通しての課題が発表されました。「玉川大学の新しい価値発信に貢献する『STREAM Hall 2019新食堂』を提案せよ!」。新しくオープンする食堂の企画提案を通して、私学である玉川大学の価値をどのようにアップグレードできるかが学生に問われることになりました。

小酒井教授は、今回の課題に取り組むことで「みなさんにぜひ起業してほしい」と呼びかけます。玉川大学卒業生の起業家を紹介しつつ、「目的・ビジョン どんな世界をつくりたい?〜WHY」→「方法・プロセス どうやって実現する?〜HOW 」→「リソース そのためには何が(誰が)必要?〜WHAT」という経営戦略の基本的なプロセスについてレクチャーしました。
日本が提唱するサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた人間中心の未来社会のコンセプト「Society 5.0」を紹介しつつ、これからの時代に求められるイノベーションについて学生たちに問いかけました。

講義後のワークショップでは、3学部の学生が混合した5〜6人のグループを結成。自己紹介の後、それぞれのグループ名を決めました。今後の授業はこのグループ単位で動くことになります。

4月10日

第2回「アイデア発想法」

橋本順一芸術学部教授

第2回目を担当する橋本教授は玉川大学工学部卒業後、一般企業のシステムエンジニアを経て、現在は芸術学部メディア・デザイン学科でデザイン・シンキングを取り入れた教育に取り組んでいます。
橋本教授は、冒頭に前回小酒井教授も言及した「Society 5.0」の考え方に触れ、「STREAM Hall 2019新食堂」の提案において、「コンセプト・誰のため?・何のため?」の3点を押さえたRe-Design(再定義)の重要性を指摘しました。そしてアイデアを発想するために考えておきたい以下のポイントについて、学生たちに語りかけるように講義を進めました。

「クリエイティビティとは何か?」

「クリエイティブとは単なるヒラメキではなく、模索を繰り返しながら『完成』をめざしていくプロセスのことを指している」と言うWEBデザイナーの言葉や、完成度の高いディズニーアニメの制作会社である米国のPIXARでも、「最初のヒドい状態」から「ヒドくない状態にすることが仕事」とされていることを紹介。「クリエイティブはプロセス」という、これから課題に取り組む原点を確認しました。

「アイデアを発想する」

ではどのようなプロセスを通してアイデアが生まれてくるのでしょう?
鉛筆と消しゴムがどちらも世の中に生まれてから、消しゴム付鉛筆というシンプルな発明が実現されるまで実に88年もかかったというエピソードを紹介。アイデアが「違ったモノの組合せ」「試行錯誤の連続」「シンプル&多視点」「いつも注意を払う。訓練する」といったプロセスから生まれることを紹介しました。

「オリジナリティ」

デザインやアイデアの「パクり」問題が世の中を騒がせています。一方でアイデアやデザインを生み出すために、先人の成果から受ける「インスパイア」が欠かせません。では「パクり」と「インスパイア」の違いはどこにあるのでしょうか? それは創り手の「思い」や「コンセプト」の有無ではないかと学生に問いかけました。

「創造性の阻害要因と高める因子」

人が魚の絵を描くと、ほとんどの人は左側に頭、右側に尾びれを描きます。こうした固定概念や人との同調傾向、権威主義的雰囲気、余裕のなさ、過度に恵まれた環境などが、クリエイティビティの阻害要因。それに対して「常識のタガを外す」「(アイデアの)質より量」「異端を受け入れる意識」「複数人でアイデア交換」「ワイワイ、面白がる」「常に考える」といった姿勢が新しい発想につながります。

「アイデア発想するツール」

アイデアを発想する際の切り口として、また応用力を身につける観点として有用な「オズボーンのチェックリスト」を紹介。このリストは集団が自由に意見を述べることで多彩なアイデアを得る「ブレインストーミング」の考案者として著名なアレックス・F・オズボーン博士による発想技法で「転用/応用/変更/拡大/縮小/代用/置換/逆転/結合」の9項目からアイデアを生み出していきます。アイデア発想の切り口としては有用ですが、一定の型にはまってしまう傾向もあるので、画期的なアイデアのためには「もう一工夫」も必要です。

授業の最後はアイデア発想の実践編でした。各グループに配布された100円ショップの商品(アイロングローブ、孫の手、室内干しハンガーなど)の本来の用途ではない、「本当」の役割を15分間で考え出すという課題が出されます。各グループがユニークなアイデアをプレゼンテーションし、大学職員らの審査員が採点。孫の手を弦楽器として“再定義”したグループが最高得点を獲得しました。

最後に橋本教授は「人を中心に考える」アイデアの重要性を指摘。「ひらめきは天才から生まれるモノではなく」、「良いモノをつくりたい情熱」「多様性を受け入れる寛容性」が素晴らしいアイデアやモノづくりには欠かせないと講義を締めくくりました。

講義後のワークショップでは、ビジネスチャットツール「Slack」を使って、「どんな玉川大学になったら、超人気大学になれるだろう?」というテーマで学生の意見を募集。5分間でファシリテーターの小酒井教授も驚くほどの意見が集まりました。

第3回以降も、3学部の教員がそれぞれの専門分野から「モノづくり」のヒントとなるコレまでとはひと味違った講義を展開していく予定です。

【PBL授業受講生の声】

農学部生産農学科3年
三橋水樹香(ミツハシナナカ)さん

「自分自身で世の中に新しいモノを創り出す力をつけたい」「自分のアイデアを人に伝えるプレゼン能力を磨きたい」。そんな思いを抱いて、この授業に参加しました。小酒井教授の企業の経営戦略に関するお話など、初回の授業からこれまで自分がまったく知らなかった分野について知ることができて、今後の授業に期待がふくらみます。最終的には自分たちで創り出した学生食堂のアイデアをしっかり提案できるよう、頑張りたいと思います。

芸術学部メディア・デザイン学科3年
瀬戸友希乃(セトユキノ)さん

学科で橋本先生からデザイン・シンキングの考え方について教わったことがきっかけでPBL授業に興味を持ちました。他学部の学生と一緒に学ぶことは新鮮な気持ちで楽しく、まだ2回目ですが新しい知識を得る喜びを味わっています。
先生方が新しい授業にかける意気込みもひしひしと感じており、この授業を通して自分がどこまで成長できるかが楽しみです。

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