どうすれば若い世代が政治に関心を持つようになるのか。本学卒業生の国会議員が集まり、学生向けのシンポジウムが開催されました。

2019.07.05

6月5日(水)、大学教育棟2014において、「玉川大学 卒業生現役国会議員による主権者教育シンポジウム —2019年 参議院選挙に向けて、どう主権者意識を持つべきか—」と題したシンポジウムが開催されました。
2016年7月の参議院選挙から「18歳選挙権」が導入され、大学はもちろん高等学校でも主権者教育の推進が求められています。文部科学省でも検討チームを立ち上げており、小原芳明学長も主権者教育推進会議の委員として提言を行っています。玉川学園では9-12年で模擬選挙を実施するなど、「市民としての社会的責任」を身につけるための教育を実施。こうした中、玉川大学でも初年次教育の中で主権者意識向上の取り組みを継続的に行ってきました。今回のシンポジウムも7月の参議院選挙を見据え、主権者である18~19歳の学生ならびに、玉川学園11・12年生の生徒を対象に、現役議員から話を伺うことで政治をより身近に感じ、正しい理解を深める機会となることを目指して開催されました。

この日のシンポジウムに登壇したのは、本学を卒業した国会議員の皆さん。小此木八郎氏(自由民主党衆議院議員・1989年卒)、田名部匡代氏(国民民主党参議院議員・1990年卒)、羽田雄一郎氏(国民民主党参議院議員・1992年卒)、丹羽秀樹氏(自由民主党衆議院議員・1995年卒)の4名です。そして政治解説者で文部科学省の主権者教育推進会議の座長も務める篠原文也客員教授が、コーディネーターを務めました。

まず、それぞれに学生時代の思い出を語ってもらいました。小此木議員は「高校、大学と野球漬けの毎日でした。政治家にならなかったらプロ野球選手か、食べることが好きなので料理の道に進みたかったですね。今日も玉川学園の正門を通りましたが、正門横にある玉川のモットーを、辛いときに思い出していました」と語ってくれました。そして田名部議員が「労作で農業体験をしたことを覚えています。だからというわけではないでしょうが、政権与党時代には農林水産大臣政務官を務めさせていただき、現在も農林水産委員会に所属しています」と続き、羽田議員は「保育士になりたくて児童専修課程に。また赤十字奉仕団に所属して活動も行いましたが、政治の道に入って養護施設や老人ホームを訪れる際に、そうした経験が役立ったと思います」と。丹羽議員は「アーチェリー部で主将を務めていました。玉川のアーチェリー部は弓道部から派生した部なので、負けたくないという思いで頑張っていました」と当時を振り返りました。

学生時代を振り返ったところで、議論のテーマはこの日の本題へと移りました。「3年前に18歳選挙権が導入されたわけですが、その年行われた衆議院選挙の18歳投票率は51.28%でした。それが翌年に行われた参議院選挙の際の19歳、つまり前年に18歳で投票した有権者の投票率を調べると、33.25%まで落ち込んだんですね」と篠原先生。そして「私は、これは主権者教育を『選挙に行こう』を入口に行ったことが間違いだったのではないかと思っています。もっと早い時期から公共の精神や社会への関心を高め、選挙はあくまでその結果の『出口』としてあるべきだったのではないかと。現在、主権者教育推進会議を立ち上げ、そのリセットのための議論を行っていますが、皆さんは主権者教育がどのようにあるべきだとお考えでしょうか」と質問しました。

これに対して「もちろん重要ですが、現場の教員はニュースなどでも報道されている通り、とても忙しいんですね。まずは文部科学省のほうで考えることが重要なのでは」と語る丹羽議員。そして羽田議員は「家庭の中にも政治があって、それが社会の、日本のルールになっていきます。だからこそ政治を身近に感じてもらいたいし、私の選挙区である長野県から小学生が国会見学に訪れた際は、案内をするようにしています」と回答。篠原先生も「小学生にとって現場体験はとても重要ですよね。政治に関わることを親子で語り合うといった経験は、将来の投票の『率』だけでなく、『質』も高めてくれると思います」と同調しました。また「何となく、政治の話を皆で語り合うのは憚られるといった風潮がありますよね」と語るのは田名部議員。「もう少し、意見を交わせる場があってもいいのではないでしょうか。また、若い人が『政治は誰がやっても同じ。投票に行っても何も変わらない』と思っているのであれば、それは政治の側にも責任があるのではないかと思っています」。そして小此木議員は「平成の期間、日本では戦争が起こりませんでした。けれども他国に目を向ければ戦渦に巻き込まれた国もあるし、戦争がなかった国も緊張感をもっています。日本もいろいろ考えなければいけないし、皆さんもそれを投票という形で国に伝えることができる。ちなみに約30年前、私が投票権を得た最初の選挙では、投票率が70%以上でした。現在の投票率の低下については、私たちも反省しなくてはいけません」と語ってくれました。

また、7月には参議院選挙が行われますが、「若い有権者に訴えたいことは?」という篠原先生の問いに対して丹羽議員は「自民党の政策集にもいろいろと書いてありますが、憲法など難解な部分から理解する必要はないと思います。ただ、いろいろ調べていくと、たとえば私の世代は3人で高齢者1人を支えるわけですが、皆さんの世代は1人で高齢者1人を支えなければならない、といったことにも気づくと思います。そうした社会保障の問題に限らず、いろいろなことを考えた上で投票してもらいたいですね」と学生に語りかけました。また田名部議員も「若い人が投票に行かないと問題になっていますが、やはり立候補する側も投票してくれる年代向けの政策を語りがちになります。次の時代を担う皆さんがどういう社会を作っていきたいかということも合わせて、政治と向き合ってほしいと思います」とメッセージを送りました。

この後に、参加した学生・生徒からの質問に各議員が答えてくださいました。大学生だけでなく玉川学園(11・12年)の生徒など、約10名がさまざまな視点から議員たちに質問をぶつけました。「ある政策を通そうとしたら、別の政策とぶつかってしまうということがあると思いますが、そういうときはどうするのですか」という質問に「ぶつかることは非常に多いですね」と田名部議員が答えると、篠原先生も「選挙でも、各党がさまざまな政策を打ち出しますが、何を選ぶかはあなた自身が決めることで、違いをしっかりと見極めることが大事」と付け加えました。この他にも高校生から「幼児教育を無償化とした場合、何を財源としますか」といった具体的な質問が出るなど、質疑応答だけで30分以上の時間が割かれました。

大人数を収容できる521教室がほぼ満員となった今回のシンポジウム。参議院選挙を控えたこの時期、新聞社からの取材もあり、注目度の高さが窺えました。 篠原先生のお話にもあるように、若い世代は未来の有権者であり、選挙を「自分ごと」として捉える姿勢が求められています。そのためには選挙のたびに投票を促すのではなく、日頃から政治に関心を持ってもらう、そして関心を持つことが大事なのだと、この日参加したすべての人が感じたのではないでしょうか。そして政治に関心を持つことは、投票の質も高めていくに違いありません。この日参加した若い有権者たちが、7月の参議院選挙でもしっかりとした考えを持ち、一票を投じてくれることを期待します。