玉川学園の目指す教育の原点と現在を探る「2019年玉川大学教育学部全人教育研究センター&玉川大学TAPセンター主催 講演会・パネルディスカッション」開催

2019.12.23

2019年12月7日(土)、玉川学園 University Concert Hall 2016にて「2019年玉川大学教育学部全人教育研究センター&玉川大学TAPセンター主催 講演会・パネルディスカッション」が、教育学部生のほか、学校教員などの教育関係者を対象に開催されました。
玉川学園創立者が提唱した全人教育と、アドベンチャー教育の哲学・手法による全人教育の新たな展開であるTAP(Tamagawa Adventure Program)。この講演会・パネルディスカッションはその二つを統轄する組織が初めて合同で開催したもので、今、日本の教育で重要課題となっている“探究的な学び”に関する知見に切り込む「探究-人生の開拓者を育む学び」というテーマで興味深い考えが披露され、活発な議論が展開されました。プログラムの午前中はワークショップとパネル展示が、午後には基調講演やパネルディスカッションが行われました。今回は午後の部の内容を中心にご紹介いたします。

午前の部の様子

基調講演

石塚清章(玉川学園理事)

基調講演の講師は玉川学園で玉川学園中学部長や学園教学部長を歴任し、玉川大学TAPセンター(当時:学術研究所心の教育実践センター)設立に携わった石塚清章理事。米国へのアドベンチャー教育の視察や研修の思い出とともにアドベンチャー教育の意義と玉川学園の全人教育における位置づけについて詳しく解説しました。学園創立以来第一の教育信条に掲げている全人教育の6つの価値「真・善・美・聖・健・富」をコスモスの花に例えて説明。カントが訴えた「真」「善」「美」が横に並び、それらの上に人とは有限な存在であることを知るための「聖」があり、上記4つの価値を支える「健」・「富」があると6つの価値の関係性を解説しました。
さらにアドベンチャー教育や玉川学園も参加する国際規模の私立学校連盟「Round Square」の提唱者である教育哲学者クルト・ハーンの事績を紹介しながら、「Round Square」が掲げる教育指針「IDEALS」~INTERNATIONAL PERSPECTIVE(国際的な視野)・DEMOCRACY(民主主義的精神)・ENVIRONMENT(環境意識)・ADVENTURE(冒険心)・LEADERSHIP(統率力)、SERVICE(貢献)~について解説。玉川学園の「12教育信条」と「IDEALS」が近しいものであること、そして今後のTAPを通して “探究的な学び”と「気づき」の多い子供を育てていくことへの期待を述べました。

パネルディスカッション「探究-人生の開拓者を育む学び」

佐久間裕之 玉川大学教育学部全人教育研究センター長・教育学部教授
中西郭弘 玉川学園教育部長(5-8年)
工藤 亘 玉川大学TAPセンター長・教育学部教授
司会:小原一仁 玉川大学教育学部副学部長・教育学部教授

パネリストとして最初に登壇したのは、全人教育研究センター長の教育学部佐久間裕之教授。玉川学園の全人教育を歴史的な視点から概観したスピーチを行いました。
19世紀末の英国で始まった近代教育への批判から生まれた世界的な「新教育運動」の潮流の中に玉川学園創立者小原國芳を位置づけながら、ドイツのペーター・ペーターゼンが創始した異年齢のクラスによる教育「イエナプラン」との対比を通して、「新しい学校と学校生活の創出」が世界的に取り組まれていたことを紹介。その上で小原國芳によって提唱された全人教育が目指す「完全人格」が完璧な人間という意味ではなく、「自分らしさ」を重視した、コスモスの花のように調和ある人格であると解説しました。
さらに探究的な学びとしての「労作」「自由研究」などにおける教師の役割について、小原國芳が若者への期待を込めて「探究心の協働者」という言葉を残していることを紹介しました。

次に登壇した中西郭弘玉川学園教育部長(5-8年)は、玉川学園5〜8年生における「人生の開拓者を育む学び」についてスピーチしました。
人生100年時代、そしてAIが人間の仕事を奪うのではないかと危惧される時代。今後、職業や社会が求める能力の形がますます変化していくことが予想されます。そうした時代を生きる子供たちには「あそぶ」「はみ出す」「体得する」力が必要だと中西教育部長は強調します。そしてそのためには「言語以外のコミュニケーション」「体感・共感力」「心のマネージメント」「リーダーシップ」などを育み、多くの人と関わり、学び続ける姿勢を持つことが必要だと語りました。
「自由研究」や「学びの技」といった探究型の学びを通して、それぞれの夢の実現に向けて人生の開拓者となる力を育むとともに「人間としての深みや丸み」を体得することも玉川学園の教育が目指すところだと話します。
「相手のことを考えられる。社会全体を考えられる粋な立ち居振る舞いができる“玉川しぐさ”を身につけてほしい」と、中西教育部長はスピーチを締めくくりました。

最後に登壇したのは玉川大学TAPセンター長を務める教育学部工藤亘教授でした。
TAPは全人教育の理念の具現化を図るため、クルト・ハーンが提唱したアドベンチャー教育の手法を使い作り上げた玉川独自の体験教育プログラム。全人教育の12の教育信条を開花させ、また新しい学習指導要領にも記載された「生きる力」を育むことがTAPの重要な使命です。
遊び、体験、学びのいずれの要素も包含したTAPは、自ら責任を負いつつ、仲間との協働的な関係性を構築することを学ぶ機会となります。

TAPに取り組む際の主な規範として工藤教授が掲げたのは以下の3つ。

  • Play Safe(心身共に安全であること)
  • Play Hard(一生懸命にやってみること)
  • Play Fair(公正に、ルールを守ること)

TAPでは成功するかどうか不確かなことにあえて挑戦することを”アドベンチャー”と定義し、試行錯誤をしながら自分自身で人生を開拓していく力である自己冒険力を育んでいきます。
工藤教授は、挑戦を繰り返し、自らの成長を目指すTAPの学びも、問題解決に向けた「探究的な学習」であり、教員は主体的に取り組む児童・生徒・学生を「指導」と「支導」のバランスをとることが肝要であると話しました。

ディスカッションでは教育学部副学部長の小原一仁教授が司会を務め、それぞれの探究型学習への思いと取り組み、また探究するプロセスで子供が「失敗」することの重要性などが話し合われました。

質疑応答では教育学部や文学部の教師をめざす学生から、各パネリストのスピーチに関連した質問があり、各パネリストとも時間いっぱいまでていねいに答えていました。

最後に全人教育の姿が描かれている校歌を参加者の皆さんで合唱し、この会が締めくくられました。