お客様と共に作るイベントを芸術学部学生と町田東急ツインズが企画。コロナ禍でのイベントのあり方を考えた、新しいカタチの産学連携プロジェクト。

2020.12.01

玉川大学芸術学部では、企業や行政と連携しながらさまざまな創作活動に取り組むことで、「芸術での社会貢献」を実践的に修得しています。こうした中、2020年度は東急百貨店が経営するショッピングセンター「町田東急ツインズ」との産学連携プロジェクトが実現。9月24日(木)から10月18日(日)の25日間、町田東急ツインズ5階のクリスタルブリッジにて、芸術学部の学生による作品展とオンラインワークショップ(期間内4回実施)が開催されました。

「このプロジェクトのお話をいただいたのは、2020年の3月のことでした。町田東急ツインズの担当者と教員による最初の打ち合わせの直後に新型コロナウィルスによる緊急事態宣言があり、町田東急ツインズは休業に。そして大学はオンライン授業が開始となったのです」と当時を振り返るのは、このプロジェクトの指導教員の一人である芸術学部の藤枝由美子教授です。当初は6月頃に学生のアート作品を展示する予定でしたが、店舗の休業、大学も遠隔授業が開始したばかりで、一時はプロジェクト自体の見送りも検討されました。

「参加する4名の学生とオンライン上で話し合っていくうちに、コロナ禍が収束した時点で行える企画を考えてみようという話になりました」。
そうして検討を重ねて完成した企画が、「OUR HOPE」と題したお客様参加型のプロジェクトです。「町田を元気にしたい!」という思いを形にしようと、学生が作成したパネルに、来店されたお客様が描くアート作品を貼っていくというもの。安全に配慮し、お客様が絵を描く際は対面ではなくオンライン上で学生がアドバイスを行うアイデアも出され、徐々に形になっていきました。

「学生たちは青空に向かって高くそびえる町田東急ツインズを背景に、羽ばたく鳥を描いた横の長さ540センチ、高さ180センチの巨大なパネルを制作しました。予め準備した8種類の塗り絵台紙からお客様が好きなものを選び、自由に色を塗ってもらいます。そのアドバイスを学生がオンラインで行うワークショップの実施も決定しました。完成した作品はパネルに貼っていき、最終的にはお客様と一つのアート作品を作り上げる試みです」と藤枝先生。

着々と準備が進んでいった今回のプロジェクトですが、これまで芸術学部で行われてきたプロジェクト型授業とは大きく異なることが一つ。それは、企画の段階からプロジェクトが終了するまで、学生たちは一度も大学に通学して作業を行ったり現地へ赴いたりすることなく、すべてオンライン上で打ち合わせや制作活動を行った点です。ソーシャルディスタンスが叫ばれている中での初めての試みでしたが、20回以上の打ち合わせをすべてオンラインで行い、開催にこぎ着けることができました。藤枝先生も「学生同士の面識がなかったので、立ち上げ時には親睦を深める会なども企画しました。徐々に学生の距離が縮まると同時に、私自身も授業とは違う学生の一面を知ることができました」とプロジェクトの進行に一人ひとりの特性が活かされていったと話します。

写真左上より 千葉さん、藤枝教授、竹見正一氏(協進印刷)
赤山仁准教授、金井さん、熊谷さん
中島千絵教授、野沢さん

会場へのパネルの搬入やワークショップ用のパソコン設置などは印刷会社や藤枝先生たちが行い、産学連携プロジェクト「町田東急ツインズ×玉川大学 OUR HOPE ―町田の空を羽ばたく―」の開催が実現しました。オンラインワークショップ「あなたの鳥はどんな色?」は期間中の4日間で行われ、当初の計画では計32名の予定が、最終的には延べ68名のお客様に参加していただき、90枚近い作品がパネルに貼られました。その中には4日間のワークショップすべてに参加してくれた小学生もいたそうです。

参加した学生たちに話を聞いてみました。

「今回は学生のリーダー役も務めたので、普段のように自分の作品に注力するだけでなくプロジェクト全体の進行や先生と学生の橋渡し役など、多くのことを考えながら作業をする貴重な体験ができました。プロジェクト当初は、このような形で開催するとは想像もしていませんでしたが、思いがけない状況であっても"新しい日常の中で何ができるか"を常に考えることが大事だと実感しました(メディア・デザイン学科4年 金井由紀さん)」。

「多くの方の協力ででき上がったプロジェクトだと思います。パネルに自分たちの描いた鳥の絵が羽ばたいているのを見た時は感動しました。印刷会社の方がいろいろと提案してくださったことで、物事の捉え方が広がったと思います。卒業後は店舗の内装などを手がける会社への就職が内定しているので、今から楽しみです。この経験を活かしていきたいと思います(メディア・デザイン学科4年 千葉響さん)」。

「これから、今後のアート活動のあり方に関する論文をまとめる予定です。今回のプロジェクトを通して、コロナ禍において安全にイベントを行う方法が一つ見つかったので、他にも方法があるかを考察してきたいと思います。僕自身はアナログな手法で作品を制作することが多かったので、フォトショップやイラストレーターといったソフトウェアの活用法を学ぶ良い機会にもなりました(芸術教育学科3年 熊谷凌さん)」。

「グループでの作業をすべてリモートで進めていったので、個人で行う普段の創作活動よりもきちんと予定を立てて進めることを心がけました。ネットを介することによりマスクをせずに、自分の表情で思いを伝えることができます。私は教員志望なのでその大切さを改めて感じました。コロナ禍での生徒とのコミュニケーションの図り方を考える機会にもなりました(芸術教育学科3年 野沢七海さん)」。

2020年は新型コロナウィルスの影響で多くのイベントが中止や延期となり、大学の授業もオンラインが中心となりました。こうした状況下で安全と安心に配慮しながら、イベントをどのように企画し、どのように遂行していくのか、実社会でも模索が続いています。

今回の学生たちによるプロジェクトは、コロナ禍におけるイベントのあり方について一つの方策を示した形となりました。地域貢献だけでなく、買い物を楽しむ空間に付加価値をもたらし、お客様が笑顔で帰ってくださったと、町田東急ツインズからも評価をいただいたそうです。芸術学部では今後も学外との教育連携により、今の時代や社会に貢献できる芸術活動を続けていきます。

完成した作品 2020.10.18